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武道館の舞台裏

――とはいえ、そういう〈失敗〉をたくさん歌ってきて、一般的に考えると武道館でワンマンやれるというのは、成功のひとつと言っていいのかなと思うんですけど。

「いや、いま俺が20代だったら成功だと思います。俺、40代でやってるもん(笑)。これはね、やってる側としては考えさせられますよ。そこで俺は結局また後悔にすぐ至ってしまうので。そういう自虐だったり挫折だったりをずっと繰り返してきてますね」

――MCでも〈時間がかかった〉とは仰ってますね。

「それはもう自分が生み出した結果だし、タイミングだから仕方がないです。まあ、決してメジャーでやってきたわけじゃない人間がそこまで辿り着いたっていうのはあるけど、そこが全部じゃないから。だから武道館の後に小っちゃいライヴハウス回ったりもして。別に目の前に10人いようと1000人いようとやることは変わんないじゃないですか。包み隠さず言えば、武道館の前にやったツアーでも〈マジで?〉っていうぐらい人が入らない場所もあったし。そういうのを直前に喰らったら普通の奴なら心折れるっすよ。でも俺はもう折れるとかじゃなくて、それすらもうギャグじゃないですか。上手くいったことがないし、いつでも絶対にトラブルがあったからあんまり怖いものがないんですよね(笑)」

――じゃあ、武道館は当日まで集中できなかったというか。

「マジで全然、ですよ。直前まで集中できるタイミングがなかった(笑)」

――パフォーマンスに影響はなかったですか?

「コンディショニングだけは作ってたというか、フィジカルの面は作れてたし、ある程度の計算はできてたんで、そこは大丈夫でした。集中できないのは仕方ないんで、そのなかで集中する時間を1秒でも見つけるっていう。トレーニングやってても、レストが1分の時あったら、最後の3秒でどうにかして肺に酸素を入れるみたいな感じでやるんで。たぶん俺はめちゃくちゃ特殊なんだと思うんですけど。結局、完璧なものっていうのがないんで、だったら自分でどうにかするしかない、やるしかないっていう」

――心が乱れても集中する瞬間を見つけられるのは、キャリアの賜物でしょうか。

「それは妄走族で修行させられたからですね。そこの部分では根性論と〈耐える〉っていう姿勢を俺は見つけたつもりです。あいつらがいなかったらいまの自分は絶対にないんですよ。どんなトラブルがあっても俺は曲を作り続けてきたし、あの時代を経験してたら別にやれないことないですよ、それは」

――そんな状況でステージに立ってみての感慨はいかがでしたか?

「やっぱりライヴの最中はどこかで麻痺するところもあるんだけど、早かったっすね。でもわりかし冷静にやってました。とにかく時間を気にしてましたね。みんなそうだと思うんですけど、ああいう会場って時間気にしなきゃいけないんで(笑)。うん、やれて良かったです。〈やっと終わったな~〉って」

――客演の入る4曲を前半の1か所に固めて、3時間ぐらいの長丁場をほぼ一人でやりきるセットリストも印象的でした。

「そこは何回も何回も考えましたね。40曲ぐらいかな、声が出なくなることもなく歌いきれたんで良かったっすね。それはずっとやってきたトレーニングだったり、フィジカルの面が活きたんじゃないかなって思います」