令和時代のニュー・スタイル・アイドル、好き好きロンちゃんは、BRAHMAN/OAUのドラマーであるRONZIのソロ・ユニット。デビュー作『好き好きロンちゃん』に収められているのは下ネタ満載の笑える楽曲ばかりだが、実はそこには彼の真摯な思いが込められている。そんなロンちゃんの歩みを訊いた。

好き好きロンちゃん 『好き好きロンちゃん』 幡ヶ谷ラーメンセンター(2021)

 「もともと“好き好きロンちゃん”って曲は、20年くらい前に宅録で作ってたんですよ。河合奈保子の“ラブレター”がすごく好きで、ちょっと物悲しくてキュンときちゃう感じを僕なりのエッセンスで作ったんです。その後、〈NEW ACOUSTIC CAMP〉でたまたま弾き語りする機会があって、ひと晩で20回以上歌ったんだけど、笑いが取れて手応えを感じたんです。そこからライヴの機会が増えて、曲もちょっとずつ増えていって。女装は『風とロック』のイヴェントに出たときからで、昔のアイドルのイメージからこうなったんです」。

 そんな彼が下ネタを歌うことには理由があるそうだ。

 「僕のなかでは、そんなに下ネタじゃないと思ってるんです。〈品は保つ〉ってポリシーがあるし、でも、下ネタってくだらなさを表現するのにちょうどいいし、堅い話でも取っつきやすくなるんですよね」。

 サウンド面では、7thコード、dimコードを多用した爽やかなメロディーが印象に残る。

 「〈ギター・ポップみたい〉って言われたことがありますが、それはたまたまですね。僕、真心ブラザーズが大好きで、高校の頃から弾き語りをやってたんです。なので、初期の真心みたいなエッセンスはたしかにあると思います」。

 下ネタ満載、グッド・メロディー満載の好き好きロンちゃん。そもそもの話に戻ると、BRAHMANのパワフルなビートを叩き出すRONZIが、シンガー・ソングライター的な動きをしていること自体に驚く人も少なくないだろう。

 「僕は歌うのが大好きで、ひとりカラオケで5時間とか余裕なタイプなんです。ただ、ソロを出そうとかは考えてなかったですね。ロンちゃんは、東日本大震災があった後で東北の皆さんに楽しんでもらおうというイメージでずっとやってたんです。今回はコロナ禍で、でも音楽を届けたいってところからアルバムを出そうってことになったんです」。

 楽曲のことに触れていくと……タイトル曲の“好き好きロンちゃん”は、昭和ライクなサックスと軽快なサウンドが絶妙な自己紹介ソング。

 「この曲は昔のデモの時からバンド・アレンジだったんですよ。今回サックスをなりくん、コーラスをとしくんとみーちゃんがやってくれて豪華な感じになりました」。

 “勃起ドリーム”は、素敵な女の子への剥き出しの欲望と社会的な姿勢を落とし込んだ爽快チューンだ。

 「これは、寝てたらハッとタイトルが降りてきたんです。これには意味があって、〈勃起〉と〈ドリーム〉はどちらも膨らむし、大きいほうがいい。政治的なことも歌ってるけど、いろんな考え方があるなかでオレはこう思うってことが“勃起ドリーム”とその次の“戦後レジーム”で見事に韻が重なるんです。この2曲が並んでるところに意味があるなって。より良い世の中になっていけばいいなって思いが込められた曲ですね」。

 自身のルーツ、好きなものや考えを昇華したRONZIのひとつの理想形、つまりは偶像。好き好きロンちゃんは間違いなくアイドルだ。ギスギスした時代の中和剤として、好き好きロンちゃんはここから前進していく。

 「ライバルは、でんぱ組.incの古川未鈴ちゃんとNiziUですね。今後の目標は全米No.1になってマジソン・スクエア・ガーデンでワンマン・ライヴをすることです。みんなの笑顔が見たいので、みんなに気持ちよく笑われるようにがんばっていきます!」。

 


好き好きロンちゃん
幡ヶ谷のラーメンアイドル。東京・港区は白金出身の100万46歳。血液型はクワガタ。某バンドにドラマーとして所属する傍ら、河合奈保子や高井麻巳子に憧れて2000年頃から密かに活動を開始する。2011年からライヴ現場でのパフォーマンスを始め、〈RISING SUN ROCK FESTIVAL〉や〈風とロック芋煮会〉〈New Acoustic Camp〉などに出現して徐々に噂を広げていく。2020年11月11日(麺の日)にYouTubeチャンネルを開設してデビューを発表。2021年1月6日にデビュー・ミニ・アルバム『好き好きロンちゃん』(幡ヶ谷ラーメンセンター)をリリースする。1月6日から全国8店舗のタワレコを巡るインストア・ツアー〈2つのいちごはハートに見えて、太ったいちごは玉袋ツアー〉を開催する予定。