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インタビュー

the LOW-ATUS『旅鳥小唄 -Songbirds of Passage-』細美武士とTOSHI-LOWによる、余興から本気の創作へ

the LOW-ATUS『旅鳥小唄 -Songbirds of Passage-』細美武士とTOSHI-LOWによる、余興から本気の創作へ

細美武士とTOSHI-LOWによるバンド、the LOW-ATUSのアルバム『旅鳥小唄 -Songbirds of Passage-』のリリースを記念して、タワーレコードではフリーマガジン〈TOWER PLUS+〉の臨時増刊号〈別冊TOWER PLUS+〉を発行! ここでは中面に掲載されているインタビューを掲載いたします。別冊TOWER PLUS+は、タワーレコード全店にて6月9日(水)より配布中です!
※タワーレコードオンラインは除きます。※別冊TOWER PLUS+は無くなり次第終了となります。※天候や交通事情により配布が遅れる場合がございます。※現在、一部店舗が臨時休業及び営業時間短縮中でございます。詳細はこちらをご確認ください。https://tower.jp/store/

the LOW-ATUS 『旅鳥小唄 -Songbirds of Passage-』 IMPLODE(2021)


震災から10年が経った2021年。突如、11編のオリジナル曲とともに、その名も『旅鳥小唄 -Songbirds of Passage-』が届けられた。ともに〈ロック〉というフィールドを主戦場とし、大きな足跡を残してきた細美武士とTOSHI-LOWの2人。このアルバムを通して声を上げたいこととは何なのか。アルバムにパッケージされた真意を2人のコメントと共に紐解いてみよう。

the LOW-ATUS。これまでフェスやイベント、また被災地での復興ライブを中心に、全国を行脚してきた細美武士とTOSHI-LOWによるバンドである。

毎度アルコール片手のアコースティック弾き語り。レパートリーはもっぱらカヴァー曲。気持ちよさげに河島英五の“酒と泪と男と女”を歌い上げ、続いては流暢な英語でC.C.R.の“雨を見たかい”(Have You Ever Seen The Rain)を熱唱。歌うのと同じくらい時間をかけて互いの爆笑エピソードやキナ臭い世の中の動きを語った後は、歴史から学び直すようにTHE BLUE HEARTSの“青空”を唱和する。綺麗に言えば昭和スナック文化と70年代プロテストソングの継承者といった趣があり、まぁ平たく言えば好きな曲を好き放題歌ってはトークするおっさんずラブみたいなものであるが、豪快な人柄と巧みな話術はお墨付き、これまで全国どこへ行っても大盛況のライブを収めてきた。

二人とも主軸のバンドは別にあるから、the HIATUSとBRAHMAN、またはELLEGARDENとOAU(OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND)が揃うフェスなどで偶然見ることのできる豪華なオマケという認識が当たり前だった。しかしこのたび2人が新レーベルを設立、the LOW-ATUSとしてオリジナル11曲を揃えたアルバムを完成させたと聞けば、俄然テンションは変わってくる。オマケだと思っていたものがメインディッシュに。当人たちにとっては余興から本気の創作になったわけだ。

細美武士「最初はお互い2~3曲ずつ持ち寄って、あと半分は定番のカヴァーソングを入れるつもりだった。でも俺が一気に20曲くらい作ったら、TOSHI-LOWが全部録ろう、全部オリジナルにしようって言い出して」

TOSHI-LOW「それだけ作って、音もリズムも全部丁寧に煮詰めていく様子を隣で見てて、音楽家としてすごいなって尊敬が今回生まれた。楽曲の幅も増えていくと、ほんと、声が二つとギター二本しかないのによくこの厚みが出るなって自分でも思ったし」

意欲に火がつき、相棒の実力を知り、改めて自分たちの魅力にも気がついた。いいことづくめの創作活動の中で完成したのがアルバム『旅鳥小唄/Songbirds of Passage』である。ゲストは一切入れず2人だけの歌が紡がれるが、静かだとはまったく思わない。温かい主旋律と伸びやかに動くハーモニーの豊かさ、またどんな曲でも相手を求め強く惹きつけ合う二人のマンパワーのようなものが、強さ、熱さ、たくましいタフネスや泥臭い汗の匂いまでをも呼び込んでくる。アコースティックの弾き語りが十分に〈熱いバンド〉たり得ることを、この作品は教えてくれるのだ。

泥臭いと書いたが、the LOW-ATUSのオリジナル曲がかなり土着的、さほど洋楽の匂いがしないことは、細美武士のキャリアを思えば驚くべき結果だろう。アコギに生の歌を乗せるときに壮大なロック的スケールは生まれづらいし、二人旅の記憶を辿ればメロディーは自然とノスタルジックなものになる。リスナーとの距離を思えば英語の響きよりも身近な日本語が選ばれるし、そもそもTOSHI-LOWと裸一貫の付き合いを続けていれば、歌への向き合い方も変わっていくのかもしれない。

細美武士「ガキの頃から洋楽しか聴かなかったし、自分でバンドやる時も日本語で歌うことに違和感しかなくて、俺は最初から英語で曲を書いてたけど。でもthe LOW-ATUSでやる時、今回は英語一文字も入れない、最初から全部日本語で作ろうと思ってた。初めてその作業をやってみた結果、まぁいい相棒とやれたおかげもあるんだけど、もし次の人生でもミュージシャンやるんだったら全部日本語で書くのも悪くないなと思いましたね。それはすごく大きな発見」

細美の手による“みかん”は何重ものオマージュが失笑と爆笑を呼ぶ昭和歌謡だし、TOSHI-LOWが書いた“ロウエイタスのテーマ”は泥酔する自分たちを笑い飛ばしながら世の中に疑問を投げかけるメッセージソング。半分は遊び、でも何事も本気でやったほうが楽しめる。そんな2人の姿勢が明快だから、どんな言葉が飛び出してきても重たさはない。むしろスカッとした快感が先行し、余韻には優しい愛情が残る。

TOSHI-LOW「単純に楽しいもん。俺はthe LOW-ATUS 2人でいるってそもそもすごく居心地いいわけ。極端にいえば飲み会だけが活動でも、震災ボランティア活動だけでも十分なんだけど、結局、歌というものに行き着いたのは自分たちっぽくていいよなと思う」

結局、この2人だから、この2人がこういう人間で、互いに必要としあっているから、という結論が導かれる。これはもう、ラブソングと呼んで差し支えあるまい。

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