夏×音楽=青春
[緊急ワイド] サマームード2014、または未来の思い出

 短パンの季節が到来! というわけで、われらが短パン王子、カジヒデキもサーフボードの替わりにニュー・アルバムを携えて颯爽と登場。新作『ICE CREAM MAN』は、野宮真貴小島麻由美坂本美雨ユリナ住所不定無職)など、多彩な女性ゲスト陣を迎えた最強のサマー・アルバムに仕上がった。

  「夏のアルバムを作るんだったら、女性ゲストに歌ってもらうのがイメージに合ってる気がしたんです。それでいっしょにやりたい人に声をかけたら、幸運にも全員とやれることになったんですよね」。

カジヒデキ ICE CREAM MAN BLUE BOYS CLUB/AWDR/LR2(2014)

 今作のオープニングを飾る“灼熱少女”には坂本美雨が参加。ファンカラティーナ風のホーンが炸裂するトロピカルなサウンドに合わせて、〈陽射しがサンシャイン〉〈内緒のホットサマー〉などキラキラ☆ワードを散りばめた歌詞を手掛けたのはかせきさいだぁだ。

  「最近、かせき君といっしょに仕事をする機会が多いんですけど、発想のユニークさとか松本隆さんに影響を受けてる感じとかおもしろいな、と思いますね。でも、この曲の歌詞を初めて見たときは、使われている言葉があまりにも大胆で〈大丈夫かな?〉って。最初はもじもじして歌ってたんですけど、何度も歌ううちにだんだん快感になってきた(笑)」。

 〈灼熱少女=坂本美雨〉と〈微熱少年=カジヒデキ〉との恋の駆け引きは夏のムズムズ感満載だ。松本隆といえば、“アイスクリーム・マン”には去年惜しくも亡くなった大滝詠一へのオマージュを感じさせたりも。

 「この曲は大滝さんを意識しました。“君は天然色”みたいな三連のリズムとか。60年代ガールズ・ポップに影響を受けた大滝さんの曲みたいなものを作りたいと思ったんです。中学1年のときにリリースされた大滝さんの『A LONG VACATION』を聴いて、すごく衝撃を受けたんですよ。いまも自分のなかで大滝さんの存在は大きいですね」。

 そのほか、甘酸っぱいエレポップ“サマーキャンプ”、野宮真貴とデュエットしたジャジーな“雨降り都市”など、曲ごとにアルバムはカラフルな表情を見せるが、時折90年代にまつわるキーワードが挿み込まれているのが印象的だ。そんななか、小島麻由美がヴォーカルで、かせきさいだぁがラップで参加した “僕らのスタンドバイミー”は、最高にポップな90sグラフィティーに仕上がっている。

  「今回、気が付いたら90年代のことを歌っていたんですよね。野宮さんとか小島さんとか、90年代からがんばっている人たちにリスペクトが高まっていることがあったからかもしれないけど。でも、ノスタルジーに浸ることはしたくなかった。夏のワクワク感とか気怠さとか、そういうものが世代を越えて共有できるアルバムにしたかったんです」。

 そう、この曲の最後のフレーズ、〈ああ永遠の サマーデイズ!〉こそ本作のテーマなのだ。では最後に、カジヒデキお気に入りのアイスのフレイヴァーを訊いておこう。

  「バニラです。バニラはほかと比べてごまかしが効かないというか、安いミルクを使ったり、作る過程で手を抜いたら絶対美味しくならない。作り手の努力がはっきりわかるアイスなんですよね」。

 その点、このアルバムは腕利きのアイスクリーム・マンが心を込めて作り上げた極上のバニラ・ミュージックと言える。ひと口舐めればIt's So Cool! きっと鮮やかに〈あの夏の感じ〉が甦ってくるはずだ。

 

▼『ICE CREAM MAN』に参加したヴォーカリストの作品を一部紹介

左から、野宮真貴の2012年作『30 ~Greatest Self Covers & More!!!~』(ソニー)、小島麻由美のニュー・ミニ・アルバム『渚にて』(AWDR/LR2)、坂本美雨の2014年作『Waving Flags』(YAMAHA)、住所不定無職の2013年作『GOLD FUTURE BASIC』(DECKREC)

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▼文中に登場したアーティストの作品

左から、かせきさいだぁの2013年のカヴァー集『かせきさいだぁのアニソング!!バケイション!』(AWDR/LR2)、大滝詠一の81年作『A LONG VACATION』(ナイアガラ/ソニー)

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