カーディガンズの2ndアルバム『Life』は1995年3月22日にスウェーデンで発表され、その直後3月25日に日本でリリースされた。米国でのリリースは1996年になってからなので、タイムラグほぼゼロの日本での受容は当時の期待や人気の高さを窺わせる(実際、オリコンチャートで最高13位を獲得した)。そんな『Life』の30周年を記念して、カジヒデキに特別寄稿してもらった。 *Mikiki編集部

★連載〈名盤アニバーサリー〉の記事一覧はこちら

THE CARDIGANS 『Life』 Stockholm(1995)

 

僕にとって1st『Emmerdale』の衝撃も巨大だった

2025年3月22日、カーディガンズの歴史的な名盤『Life』がこの世にリリースされて丸30年の月日が経ったなんてちょっと信じ難い。1曲目を飾る特大ヒットナンバー“Carnival”は今でもDJをする時によくかけるけど、どこの会場でもイントロが流れた瞬間にウワッと大盛り上がりになるし、僕自身いつ聴いても「カッコイイー!」と絶叫したくなるほどフレッシュでエバーグリーンな名曲中の名曲だと思います。

一般的に言えば日本中で大ブームを巻き起こした超名盤であるこの2ndアルバム『Life』は大きな衝撃であったと思うけど、僕にとっては1994年2月にリリースされた1stアルバム『Emmerdale』の衝撃も本当に巨大なものがありました。その輸入盤CDが一番最初に入荷したのは当時渋谷にあったレコードショップ〈WAVE〉だったと思うけど、そこにはいわゆる〈渋谷系〉という音楽やカルチャーを嗜好する人達が一瞬にして好きになる要素がこれでもかというほど詰まっていました。

ネットの無い時代に「カーディガンズを買ったか? 聴いたか?」というワードが口コミであっという間に広がり、本当に渋谷中が騒然となったんです! ホントに! みんなが血眼になってカーディガンズのデビューアルバムを探し回ったのは1994年春の象徴的な出来事でした。

当時僕は〈ブリッジ〉というバンドで活動しながら渋谷のレコードショップ〈ZEST〉でバイトをしていました。もちろん直ぐにスウェーデンかイギリスの卸業者にオーダーをかけて100枚単位で入荷したような記憶がありますが、それも瞬殺で完売しバックオーダーをするという感じでした。

渋谷を中心に東京や大都市圏で、カーディガンズは1stの時点で凄く盛り上がっていたと思います。

当時メンバーはみんな20歳くらいで、ネオアコ系のヘアスタイルやファッションがとても可愛くオシャレでした。それもキメキメのハイファッションとかではなくて、北欧らしいほっこりとしたナチュラル系で、ちょっと田舎っぽい感じも好感が持てて良かったんだと思います。

サウンドも1曲目の“Sick & Tired”はフランス・ギャルの“夢見るシャンソン人形”をジャズ風味のネオアコ/ギターポップなアレンジで仕上げたような楽曲で、渋谷系好きの人なら「正にこれを待っていたんだよ!」と一気にハートを撃ち抜かれるようなど真ん中の楽曲でした! アルバムを通してもボーカルのニーナのキュートでいて芯の強さを感じさせる歌声が超魅力的で、プロデューサーであるトーレ・ヨハンソン氏の絶妙なアレンジとヴィンテージなアナログサウンドが、正に時代の最先端に躍り出るような革新性と魅力で溢れていました!