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コラム

ぼくとわたしのベルセバ(Belle And Sebastian):アーティストやライター8名が想いを綴る

2枚組のライブ・ベスト『What To Look For In Summer』リリース記念アンケート

Photo by Marisa P Murdoch
 

ベル・アンド・セバスチャンが2枚組のライブ盤『What To Look For In Summer』をリリースした。2020年の彼らは、コロナ禍により予定していたライブのみならずレコーディングも中止せざるをえなかったという。だが、その空いた時間を使って、2019年のワールド・ツアーの録音からベスト・テイクを選出。今回のアルバムは、初期の人気曲から近作の楽曲までを網羅した、ある種のベルセバ・オールタイム・ベストと言うべき一枚に仕上がっている。

90年代中頃、謎の多い存在だったデビュー期の彼らからは想像ができなかったことだが、現在のベルセバは最高のライブ・バンドでもある。そのパフォーマンスはチアフルでウォーム。なかでも定番となっている、公演の終盤にファンをステージへと上げてからの大団円は、幸福感に溢れたものだ。オーディエンスの歓声なども入ったこの2枚組からは、彼らの陽性な魅力のみならずファンへ向けた眼差しの優しさも伝わってくる。

今回は彼らのファンを公言している日本人ミュージシャンやライターに、ベルセバとの出会いや『What To Look For In Summer』を聴いた感想をアンケート形式で尋ねた。答えていただいたのは、奥浜レイラ、カジヒデキ、夏目知幸、リサ(元バニラビーンズ)、荒野政寿、妹沢奈美、村尾泰郎、山崎まどかの8人。彼らの思い入れたっぷりな回答を通じて、一度虜になると抜け出せないベルセバの魅力に触れてほしい。 *Mikiki編集部

BELLE AND SEBASTIAN 『What To Look For In Summer』 Matador/BEAT(2020)

 

荒野政寿
72年生まれ。96年、シンコー・ミュージックに入社。「WOOFIN’」「THE DIG」編集部を経て、2012年〜2013年に「CROSSBEAT」編集長。近年はムック「ベル・アンド・セバスチャンとスコティッシュ・ポップ」や「Jazz The New Chapter」シリーズ、書籍「ジェフ・トゥイーディー自伝」などの編集を担当。Twitterはこちら
 

あなたとベルセバとの出会いは?

たまたま渋谷の輸入盤店で流れていた“The Fox In The Snow”のメロディーが頭から離れなくなり、リリースされて間もなかった『If You're Feeling Sinister』(96年)を購入したのが最初です。しかしメディアで聖人のように扱われていたことに抵抗を感じ、余計な先入観を解いてファンになるまでに少し時間がかかりました。彼らがジープスターにいた時期は、どちらかというとジェントル・ウェイヴス※※の方を熱心に聴いていた記憶があります。

※グラスゴーのバンドを精力的にリリースしていたロンドンのレーベル。ベルセバは96~2002年に在籍
※※ベルセバに当時在籍していたイザベル・キャンベルのソロ・プロジェクト
 

お気に入りのベルセバの曲やアルバムは?

シングルでは、ポップ性がより顕著になった“Jonathan David”(2001年)に収められている3曲がどれも忘れ難いです。あの路線でアルバムを残してくれたら……と思いましたが、その後の彼らは想像を遥かに超えた冒険を続けていきました。

“Jonathan David”
 

以前スティーヴィー・ジャクソンに取材した際、彼が言った〈長く活動すればするほど、エゴよりも居心地の良さや自信の方が大きくなっていく。そして音楽も、自意識過剰じゃなくなっていくんだよ〉という言葉が印象に残っています。実際、その言葉通りに作風も変化を重ねてきたし、スタジオ・アルバムでは初期の作品よりも、現時点での最新作であるサウンドトラック盤『Days Of The Bagnold Summer』(2019年)の滋味が、今は心にフィットします。いつもその時の彼らのレコード棚がどんな風か作品から透けて見え、新作への興味を駆り立ててきました。

 

ベルセバのライブの魅力や『What To Look For In Summer』を聴いた感想は?

何度かライブを観たなかでは2010年の〈フジロック・フェスティヴァル〉が、彼らの親密さやオーディエンスの温かい反応とセットになって今も強く記憶に焼き付いています。ステージ上でのアクティヴな表現を体験したかどうかで、彼らの印象はかなり変わるでしょう。

COVID−19の影響で予定が変わってしまったことによって生まれたというライブ・アルバム『What To Look For In Summer』は、生でライブを観ることが難しくなってしまった今、かつて〈ライブ・アルバム名盤〉が担っていた役割を思い出させてくれます。

異なる日の演奏から選りすぐったアルバムでありながら、選曲と構成の妙でそれをまったく気にさせない。実は本作のアイディアの源が、イエスの『Yessongs』(73年)やシン・リジィの『Live And Dangerous』(78年)だった、というエピソードも頷けます。単にセットリスト通りに並べた実況録音盤とは違う、キャリアを見渡した名曲大全的な佇まい。それと同時にライブを観ることができないファンの枯渇感も癒してくれる。聴き手が欲しいものを考え抜いた跡が窺える、バランスのよいアルバム……と言ったら褒めすぎでしょうか。

『What To Look For In Summer』収録曲“My Wandering Days Are Over”

 

奥浜レイラ

84年生まれ。神奈川県出身。音楽と映画まわりのMC。2006年よりテレビレポーターとして活動をスタート。以降、テレビ・ラジオの音楽番組や〈SUMMER SONIC〉のステージMCを担当。現在、月刊誌「GINZA」で新譜レビューを毎月寄稿中。Twitterはこちら
 

あなたとベルセバとの出会いは?

最初に聴いた曲が何だったかは忘れてしまったのですが、初めてライブを体験したのは2010年の〈フジロック〉でした。ホワイト・ステージの薄い霧のなかで多幸感に包まれて、そこからはもう夢中。繊細な音の重なりも、メロディーラインも人間の感情と地続きというか優しさや愛情みたいなものがまるで呼吸をするような雰囲気でナチュラルに音像化されている。どこかで聴いたような表現になりますが自分の心の柔らかい場所に届く親密さに惹かれるのだと思います。掛け合ったり重なったり、人肌の感覚があるコーラスワークもたまらないです。

 

お気に入りのベルセバの曲やアルバムは?

特に好きなのはリリースのタイミングでリアルタイムに出会った楽曲になるのですが、今ライブ盤に収録されているもので選ぶと『Write About Love』(2010年)の“I Didn’t See It Coming”。サラの跳ねるような歌いまわしと歌詞、サラからスチュワートにバトンを手渡すようなヴォーカルで表現しているストーリーテリングな雰囲気が好きです。それから本作には収録されていませんが、日常のあれこれから開放してくれる“The Party Line”(2015年作『Girls In Peacetime Want To Dance』収録)もよく聴きます。入れてほしかった!

『What To Look For In Summer』収録曲“I Didn’t See It Coming”
 

ベルセバのライブの魅力や『What To Look For In Summer』を聴いた感想は?

2010年以降、何度かベルセバのライブに出かけていますが、本作はサウンドの生っぽさ、ナイーヴさ、温かさ、結びつきの強さ、彼らが変わらずそこにいてくれるという安心感がステージを観ている時そのまま。遠く離れていても息遣いを近くに感じられる作品で、次に会う時までこちらも自分のペースで元気にやっていようと心が緩みました。ところどころに少しずつだけれどスチュワートのMCが入っているのも微笑ましかったです。