ここ日本でも10年代のUSインディーシーンを代表するSSWの一人となったJulien Bakerの最新作は、彼女のキャリアにおいて、最も毅然として壮大な一枚となっている。サウンド面での特徴としてはほぼ全ての楽器を自身が演奏するなど新境地への開拓が伺え、前作よりもポップな印象を感じるだろう。だがそれとは対照的に彼女の絶えず湧き上がる悩み、依存症への更生や過去のトラウマを赤裸々に歌っている。その〈傷痕〉は今後も刻まれたままであるが、それでも彼女は歌い続ける。過去の憂いを嘆くのではなく、享受し共存してゆく道を選んだ彼女の強さに胸を打たれるばかりである。

 


きっとそうだろうとは予測していたけど、メンフィス出身の才女による4年ぶりの3作目は、彼女が着実に進歩を遂げた事実を雄弁に語ってくれる。ほぼすべての楽器をみずから演奏したことも注目点だが、物悲しさと穏やかさがないまぜになったメロディーの持ち味はそのままにポップなエッセンスを巧みに織り交ぜている部分に加え、格別な昂揚感を湛えた“Faithhealer”などで一段と表情豊かな歌声が現れるところも聴き逃せない。