コラム

ボーイジーニアス(boygenius)=ジュリアン・ベイカー+フィービー・ブリジャーズ+ルーシー・ダカスの新時代を象徴するデビューアルバム『the record』を合評

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新しい時代を象徴する3人のシンガー・ソングライターたち……ジュリアン・ベイカーとフィービー・ブリジャーズ、ルーシー・ダカスによるボーイジーニアスがいよいよアルバム・デビュー! その創造的なセンスとモダンな感性は時代を超えて響く!

BOYGENIUS 『the record』 Interscope(2023)

 

3人が均等に注いだ熱量

 ジュリアン・ベイカー、フィービー・ブリジャーズ、ルーシー・ダカスという、現行シーンを代表すると同時に新しい時代を象徴する3人の女性シンガー・ソングライターから成るUSインディのスーパーグループがセルフ・タイトルのEPから4年半。ついにリリースしたファースト・アルバム。全英1位をはじめとする各国チャートの好アクションからは、世界中のロック・ファンが待ち望んでいたことが窺える。3人がハーモニーを重ねる1曲目のアカペラ曲“Without You Without Them”は、本作における3人のアティテュードに関する宣言のようなものだ。全12曲のうち共作4曲も含むが、ポール・サイモンやレナード・コーエンにオマージュを捧げつつ、それぞれに持ち寄った曲を3人がどの曲においても同じ熱量で完成させていったことは、3人が必ず歌声を重ねる各曲のサビからも明らかだろう。アウトロのシャウトにシビれるガレージ・ロックの“$20”、バンジョーが鳴る正調フォークの“Cool About It”、ウィーザー風のパワー・ポップがサイケに展開する“Satanist”、音響効果も含め聴かせるピアノ・バラードの“Letter To An Old Poet”など、盟友と言えるミュージシャンたちと奏でた演奏は思いのほか、振り幅が広い。 *山口智男

 


2023年を代表する傑作のひとつ

 ジュリアン・ベイカー、フィービー・ブリジャーズ、ルーシー・ダカスといういまの米インディー・ロック界を代表するアーティストが結成したスーパーグループ。それがボーイジーニアスだ。そんな彼女たちがファースト・アルバム『the record』を発表した。結論から言うと、本作は2023年を代表する傑作の一枚に値する作品だ。互いの創造性をリスペクトし合う深い関係性が滲む親密感、その親密感から生まれる感情の機微を鮮やかに描いた歌詞、そしてロックからフォークまで多くの要素と共に滋味なメロディーを紡ぐモダンな感性。さまざまな側面から聴いても、素晴らしいと唸るしかない。

 お気に入りの曲を挙げるなら、〈十分に強くない〉という意味合いの言葉をタイトルに掲げた“Not Strong Enough”だ。開放的なリヴァーブの響きとカントリーの要素を纏った率直な歌詞には、数々のトラウマというダークなものが仲を深めるきっかけのひとつになった彼女たちの複雑な想いが表れているようにも聞こえ、胸がぎゅっと締めつけられた。同時に、いまだに男尊女卑がまかり通っている現在に向けた風刺的な言葉遊びが見られるなど、反骨心も窺える名曲だ。 *近藤真弥