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2000年代のレコード屋さんのムードが僕らの原風景

――デス・セットを中心に2000年代のインディーを意識した曲は“Magic”あたりですか?

太一「そうですね。たとえば前作だと“Citrus”とか“Baby”とか、アルバムにめちゃくちゃシンプルな曲を入れたくなるんですよ。ただワーッとやる曲を毎回1曲は作りたいんです。抜きの部分というか。“Magic”なんかはそういう曲。デス・セットとか初期のウェーヴスを聴き直してみるとやっぱりかっこいいし、いまああいうバーッと突き抜けていくような8ビートがやっぱり好きだから、じゃあリアルタイムで聴いていた僕らがやりたいなって」

――太一さんと寛さんはRiddim Saunterのときにデス・セットと対バンしていましたよね。

太一「デス・セットとYour Song Is GoodとCLUB QUATTROを周るツアーをやったんですよね。そのあと〈SXSW〉でも彼らと一緒に遊んで。彼らのストリート感がかっこよかったですよね。マッド・ディーセントっぽいサウンドとヒップホップとパンクが混ざっていて。グチャグチャなんだけど突き抜けた感じがあった」

デス・セットの2008年作『Worldwide』収録曲“Negative Thinking”
 

――“Never Been Better”のポスト・パンク的なサウンドは、2000年代前半のDFAやアウトプットから出ていたレコードを想起しました。

太一「早回ししたLCD(サウンドシステム)というか(笑)、DFAの12インチを45回転でかけたような音。僕はニューレイヴ以前のエレクトロクラッシュが好きなんですよ。僕らが若いときにリアルタイムでくらった音楽――あの頃のラプチャーとかチックス・オン・スピードとか――をいまやるとしたらこうなるのかなと」

――人力トラップからブラジリアン・ハウスに変わっていく“Eisbahn”もおもしろいです。このアルバムのいろいろなジャンルが並立している感じは、それこそ2000年代前半のレコード屋さんの面陳を見ているみたいだなと感じました。

太一「僕らはZESTとかESCALATORの世代ですからね。レコード屋さんにすべてがあった時代というか。そういうのを懐かしがる年にもなってきたのか(笑)」

――“Eisbahn”しかり、寛さんのギターはよくサイケな音を出すじゃないですか。あれは、どこからきたものなんですか? 

太一「元ネタはメトロノミーなんですよ。Riddim Saunter時代に衝撃を受けて、ああいう音を出そうとなったことからはじまっているんです。そこから進化して寛オリジナルになってきましたよね。前作の“Parallel World”とかもその感じで作ったな」

――ディスコ・パンクという文脈でいえば、ゾンガミンが2006年にエド・バンガ―からリリースしたフレンチ・エレクトロ・クラシック“Bongo Song”を今回カヴァーしていて。

太一前作でフランキー・ナックルズの“Whistle Song”をやったので、その続編というか(笑)。僕らが“Whistle Song”をやりだしたきっかけは、フランキー・ナックルズが亡くなったときに、追悼の意を込めて2人でハウスを演奏したいと思ったんです。全国100か所を回るツアー〈旅するコンコス〉の最初の頃で、ドラマーの紺野清志が加入する前ですね。当時のライブでは、僕がキックを踏みながらシンセを弾いていました。

だから、その続きとしての“Bongo Song”。昔、ゾンガミンを代官山のUNITで観たときの衝撃はいまだに忘れられない。そのライブもめちゃくちゃかっこよかったし、やっぱり僕ら世代のアンセムだから。アルバムにこれが入っていたら、世代感が分かりやすいし、そういうの結構重要かなって(笑)」

「ライブでやっていても若い子に〈あれなんですか?〉って訊かれるしね。で、ゾンガミンといっても……」

太一「〈うん? なんですか?〉って(笑)」

――ハハハ(笑)。“Bongo Song”も中盤以降はKONCOS流のアレンジが加わっています。

太一「90年代のハウス・クラシックみたいな感じにしたくてピアノを入れたんです。オリジナルの“Bongo Song”はバンドがやったハウスというか、そういう突然変異な感じがあるじゃないですか。僕らのヴァージョンもそういう位置になったらいいなと思っています」