
ここ数年活況を呈している英サウス・ロンドンのロック・シーンから、とびきり個性的なバンドが現れた。その名もドライ・クリーニング。あのイギー・ポップが注目する4人組だ。歌というよりも語りに近いフローレンス・ショウのアンニュイなヴォーカルと、USオルタナティヴ・ロックからの影響を感じさせるサウンドは、同地のシーンで異彩を放っている。
そんな彼女たちが、名門4ADからデビュー・アルバム『New Long Leg』を2021年4月2日(金)にリリース。これを機に、メンバーが選曲したプレイリストも参照しながら、彼女たちの魅力に音楽評論家の小野島大が迫った。
なおドライ・クリーニングは、タワーレコードでヴァーチャル・インストア・ライブを開催する。こちらも観逃さないでほしい。 *Mikiki編集部

〈ドライ・クリーニング〉とソニック・ユースの〈洗濯機〉
クールでスタイリッシュ、ダークでノイジーでミニマルなサウンドは、ソニック・ユースやジョイ・ディヴィジョンのようなオルタナティヴ〜ポスト・パンクに通じる。どこまでも平熱のフラットなトーンで淡々と呟くように歌う女性ヴォーカルが強烈に耳に残るが、対照的にギター・サウンドはメロディアスで饒舌だ。オープニング曲“Scratchcard Lanyard”は、そんな彼らの音楽の特徴を過不足なく提示している。過去のさまざまなアーティストの影がよぎるが、単純にこれはアレね、と片付けられない個性がある。ニュー・ブリティッシュ・サウンドの震源地:サウス・ロンドンから現れた話題の4人組ドライ・クリーニングだ。
まずはドライ・クリーニング、というバンド名が謎である。一体どんな意味がそこに込められているのか。ソニック・ユースが95年に発表した9枚目のアルバムは『Washing Machine』というタイトルだった。洗濯機→ドライ・クリーニングとくれば何らかの関連がありそうではある。あるいは、ソニック・ユースがやってきたことを自分たちなりに受け継ぎ発展させているという意思の表れなのかもしれない。しかしなにかのメタファーや、隠されたニュアンスや文学的含みがあるというより、文字通りの意味のままであって(つまり深い意味などなくて)、聴き手に特定のイメージも、何の先入観も与えないことに主眼があるような気もする。バンド名の段階であれこれ考えを巡らせてしまうだけで、既にこのバンドの仕掛けた巧妙な罠にハマっているということなのかもしれない。
非ミュージシャン、フローレンスのアンニュイな歌が起こす化学反応
2018年に結成され、自主制作で発表した2枚のEPが評判となり名門4ADと契約、この4月にファースト・アルバム『New Long Leg』を発表する。ポスト・パンク〜オルタナティヴの大型新人として本国では既に大きな話題を呼んでいる。しかしアーティスト写真を見ると、おそらくメンバーの年齢は30代から40代ぐらい。それなりのキャリアの持ち主であることがうかがえる。
それもそのはず、メンバーのうちルイス・メイナード(ベース)と、ニック・バクストン(ドラムス)の2人はラ・シャーク(La Shark)というバンドで活動していた。ラ・シャークは2010年ぐらいから活動を始め、2枚のアルバムを発表している。音楽はちょっとヒネくれたインディー・ロックという感じで、ドライ・クリーニングに比べずいぶんポップでねじれたユーモア感覚も感じられるが、これという突き抜けた魅力は感じられない。
おそらくラ・シャークでの活動に行き詰まってしまった2人は2017年に行われたパーティーでトム・ダウズ(ギター)と会ったことをきっかけに、彼と共にドライ・クリーニングを結成。当初はインスト・バンドだったが、半年後にフローレンス・ショウ(ヴォーカル)が加入し、現在のドライ・クリーニングの基本形ができあがった。当時は大学で絵画の講師をやっていたフローレンスの登場が、バンドの方向性を決定づけたのは間違いないだろう。
フローレンスはドライ・クリーニング以前の音楽キャリアは皆無だという。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのニコとか、ヤング・マーブル・ジャイアンツのアリソン・スタットンとか、フライング・リザーズのデボラ・エヴァンス=スティックランドとか、ステレオラブのレティシア・サディエールとか、ソニック・ユースのキム・ゴードンとか、そんな感じのぶっきらぼうなオルタナ系女性ヴォーカルをさらにフラットに、無表情に、抑揚を抑えてクールにしたような歌唱は、歌というよりはポエトリー・リーディングに近い。始めからそういうスタイルを狙ったというよりも、音楽の初心者ゆえそうするしかなかったのだろう。
だがそれが3人の作るバンド・サウンドと出会った時に化学反応が起きた。フローレンス加入前のトリオ時代の彼らの音楽性がどんなものだったかは不明だが、現在のドライ・クリーニングの曲作りは、完全にフローレンスのヴォーカルを中心に据えたもので、彼女のアンニュイな声が際立つようにアレンジや構成を錬っていることがわかる。最低限の楽器数、ダビングも最小限に抑えたミニマルなギター・バンド・サウンドだ。
アンナ・ドミノ、YMO、ナンシー・シナトラ……プレイリストの選曲に見る音楽性
Spotifyのニック・バクストンのアカウントでは、ドライ・クリーニングが勧めるさまざまな楽曲を集めたプレイリスト〈music 4 u〉が公開されている。3月26日現在で91曲もリストアップされており、彼らのリスナーとしてのキャリアと幅広さをうかがわせるような、実にヴァラエティーに富んだラインナップになっていて興味深い。
今様のエレクトロニックR&B、マイナーなエレクトロやソウル・ミュージック、80年代ニューウェイヴ、クラウト・ロック、オルタナ、ヒップホップ、インディー・ポップ、スピリチュアル・ジャズ、60年代ポップ、ゲーム音楽、オルタナ・カントリー、テクノ・ポップ、ハードコア、ボサ・ノヴァ、ファンク、ギター・ポップ、クラシック・ロックやロックンロール等々、呆れるほど幅広い。前述のステレオラブ、ニコ、そしてソニック・ユースの『Washing Machine』からの曲も収められている。クラシック・ロック/ポップやインディー・ロック系ではかなりマニアックな選曲も多い。こうしたリスナーとしての経験値の豊かさがドライ・クリーニングの音楽性の背景を形作っているのだろう。
なかでも東京生まれ、NY拠点の女性シンガーで、ベルギーのクレプスキュール・レコードで活躍したアンナ・ドミノのファースト・アルバム『East And West』(84年)からの“Everyday, I Don’t”が収められているのが興味深い。アンナ自身はもう少しカラフルで幅の広いアート・ポップを得意とするが、この曲に於ける音数を削ぎ落としたミニマルなサウンドとメロディアスなギターの対比は本作の“Leafy”との共通点を感じる。またYMOの“灰色の段階”なんて曲も収められているが、リズム・マシーンを使ったビートは“Scratchcard Lanyard”のイントロのリズムにヒントを与えたと思われる。ナンシー・シナトラとリー・ヘイズルウッドのサイケ・ポップの名曲“Some Velvet Morning”は、そのドラッギーで多義的で幻惑的な歌詞の面でドライ・クリーニングに影響を及ぼしている可能性がある。
アート・スクール系の末裔? 得がたい個性の目が離せないバンド
とはいえドライ・クリーニングの音楽性やサウンドの幅自体はそれほど広くない。超個性的でチャーミングではあるが決して起伏や表情に富んでいるわけではないフローレンスのヴォーカルを活かすために、できる限り音数を絞りシンプルにして、空間を残すことで余白を感じ取れるようなアレンジになっている。いわば聴き手の想像力に委ねるような曲作りになっているのだ。ぶっきらぼうなヴォーカルは歌いすぎることもないし過剰にエモーショナルになることもない。そのぶん聴き手が介入する余地がある。歌詞もまた観念的で抽象的で、受け手の解釈の余地が大きい内容だ。
サウンド面で一番近いと感じるのはソニック・ユースだが、80年代のファクトリーやラフ・トレード、4ADあたりにいそうなニューウェイヴ・バンド風味も濃厚に感じられる。元々はアート畑の人間だったフローレンスのセンスが加わることで成立したドライ・クリーニングの音楽は、ニューウェイヴ期に多かったアート・スクール系バンド(ワイヤー、バウハウス、トーキング・ヘッズなど)の系譜の末裔のようでもある。
ライブ映像をみると、いかにもステージ慣れしていないフローレンスの素人臭くぎこちないパフォーマンスも手伝って、まだまだ客を巻き込むようなパワーやダイナミズムには欠ける。バンドが一番飛躍するタイミングでのコロナ禍の襲来で、ライブが思うようにできなかったという事情も大きいだろう。だがそれは時間と経験が解決する問題である。既にドライ・クリーニングの音楽には、他では得がたい個性がある。今後も注目していきたいバンドだ。
INFORMATION

リリース日:2021年4月2日(金)

■国内盤CD
品番:4AD0254CDJP
価格:2,420円(税込)
ボーナス・トラック追加収録/解説書・歌詞対訳封入
https://tower.jp/item/5160030/New-Long-Leg
■輸入盤CD
品番:4AD0254CD
価格:2,519円(税込)
https://tower.jp/item/5160013/New-Long-Leg
■限定盤LP(イエロー・ヴァイナル)
品番:4AD0254LPE
価格:2,849円(税込)
https://tower.jp/item/5160018/New-Long-Leg<Yellow-Vinyl-限定盤>
■輸入盤LP
品番:4AD0254LP
価格:2,849円(税込)
https://tower.jp/item/5160016/New-Long-Leg
■カセットテープ
品番:4AD0254MC
価格:2,519円(税込)
https://tower.jp/item/5160020/New-Long-Leg
TRACKLIST
1. Scratchcard Lanyard
2. Unsmart Lady
3. Strong Feelings
4. Leafy
5. Her Hippo
6. New Long Leg
7. John Wick
8. More Big Birds
9. A.L.C
10. Every Day Carry
11. Tony Speaks! *Bonus Track for Japan
12. Bug Eggs *Bonus Track for Japan
■特典

・非売品7インチ
対象店舗:タワーレコード札幌ピヴォ/仙台/渋谷/新宿/秋葉原/町田/名古屋パルコ/梅田大阪丸ビル/難波/梅田NU茶屋町/神戸/京都/福岡

・イベント視聴コード&ステッカー・シート
対象店舗:タワーレコード オンライン/タワーレコード札幌ピヴォ店/仙台パルコ店/新潟店/郡山店/渋谷店/新宿店/池袋店/秋葉原店/吉祥寺店/町田店/横浜ビブレ店/川崎店/津田沼店/浦和店/静岡店/金沢フォーラス店/名古屋パルコ店/名古屋近鉄パッセ店/京都店/梅田大阪マルビル店/梅田NU茶屋町店/難波店/あべのHOOP店/神戸店/広島店/福岡パルコ店/アミュプラザ博多店/久留米店/佐賀店/那覇店
DRY CLEANING × TOWER RECORDS ヴァーチャル・インストア・ライブ
2021年4月2日(金)12:00~2021年4月18日(日)23:59
※本イベントの配信はパソコン、スマホ、タブレットにて閲覧可能です。下記推奨環境をご確認ください
https://tower.jp/article/feature_item/2021/03/18/0101
■視聴方法
下記の配布期間内にタワーレコード オンライン、タワーレコードの対象店舗にて対象商品をご購入頂いた方に、先着で〈視聴用シリアル・コード〉をお渡しいたします。そちらに記載された方法にて従ってご視聴ください。
※すでにご予約されている方、新たにご予約の方も〈視聴用シリアル・コード〉は商品ご購入時のお渡しとなります。タワーレコード オンラインでご注文頂いた方には商品と同梱で発送させて頂きます
※対象商品のご予約はお電話とタワーレコード オンラインの店舗予約サービスでも承っております
※視聴時は電子チケット・サービス〈teket(テケト)〉への登録が必要になります
■対象商品
■対象店舗
タワーレコード オンライン/タワーレコード札幌ピヴォ店/仙台パルコ店/新潟店/郡山店/渋谷店/新宿店/池袋店/秋葉原店/吉祥寺店/町田店/横浜ビブレ店/川崎店/津田沼店/浦和店/静岡店/金沢フォーラス店/名古屋パルコ店/名古屋近鉄パッセ店/京都店/梅田大阪マルビル店/梅田NU茶屋町店/難波店/あべのHOOP店/神戸店/広島店/福岡パルコ店/アミュプラザ博多店/久留米店/佐賀店/那覇店
■視聴用シリアルコード配布期間
・タワーレコード オンライン
2021年4月12日(月)23:59受注分まで
・タワーレコード店舗
2021年4月2日(金)商品入荷時~2021年4月17日(土)閉店時まで
※対象商品ご購入1枚につき〈視聴用シリアルコード〉を1枚をお渡しします。ご購入後の変更・キャンセルおよび受取拒否は出来ません
※期間内でもシリアル・コードがなくなり次第、配布終了となります
※タワーレコード オリジナル特典のステッカー・シートも先着でお付けいたします。こちらも規定数に達し次第、終了となります
■タワーレコード オンラインでのご予約・ご購入の場合
※ほかの商品を同時に購入された場合、お届けが応募期間後になる可能性がございますので、当イベント対象商品のみご購入いただくことをおすすめいたします
※クレジット・カードの決済がエラーとなった場合は、ご注文をキャンセルさせていただきますのでご了承ください
※コンビニ受取はお届けに時間を要するため、ご注文については宅配をおすすめします
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■配信時注意事項
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■動画視聴における推奨環境
スマートフォン/タブレット
・iOS 11.0以降(Safari最新バージョン)
・Android OS 5.0以降(Google Chrome最新バージョン)
パソコン
・Windows 10以上/MacOS 10.9以上(最新バージョンのGoogle Chrome、Safari、MS Edge、Firefox)のいずれかを視聴の際に必ずご用意ください。
※視聴環境は、ご利用いただくインターネット回線の状況に大変影響を受けます。出来る限りご利用回線の負荷を少なくした状態でご視聴ください
※動画視聴には高速で安定したインターネット回線が必要です
※圏外や電波が弱い場所ではないか、パケット残容量はあるかを必ず事前に確認してください
■チケットに関するお問い合わせ
よくあるご質問はこちら
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teketお客様サポート
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