Japanese Breakfast “Posing In Bondage”

天野「3曲目は、ジャパニーズ・ブレックファストの“Posing In Bondage”。 韓国のソウルで生まれ、フィラデルフィアを拠点に活動しているミシェル・ザウナー(Michelle Zauner)のソロ・プロジェクトで、これまでに2作のアルバムを発表しています。3月にリリースした新曲“Be Sweet”が最高だったんですよね。すごく洗練されたエレクトロニックかつダンサブルなインディー・ポップ・ナンバーで、驚きました。〈PSN〉で紹介しそこねたことを悔やんでいます」

田中「この“Posing In Bondage”は、“Be Sweet”に比べてポップさでは劣りますが、今回もプロダクションやソングライティングが本当に素晴らしいですね。とにかく音がリッチで、品がいい。ゆったりとしたバラードですが、曲が進むにつれて次第に高揚感を増していきます。ホーリーなコーラスやノイズを巧みに取り入れた音作りにも舌を巻きました。完成度、高すぎ!」

天野「孤独を歌った歌詞も素晴らしい。ザウナーが撮ったミュージック・ビデオにガールプール(Girlpool)のハーモニー・ティヴィダード(Harmony Tividad)が出演している点にも、インディー・ファンは注目です。ニュー・アルバム『Jubilee』は6月4日(金)にリリース。今年前半の最注目アルバムではないでしょうか」

 

oddCouple feat. Jamila Woods “Reflections”

天野「オッドカップルがジャミーラ・ウッズをフィーチャーした“Reflections”。これはいい曲ですね!」

田中「オッドカップルことザック・ヘンダーソン(Zach Henderson)はウィスコンシン州ミルォーキー出身のヒップホップ/R&Bプロデューサーで、シカゴのシーンで活躍しています。元々は名前のとおりにデュオだったのですが、現在は彼のオウン・プロジェクトのようです」

天野チャンス・ザ・ラッパーの初期の楽曲“Burn This City”(2012年)を手がけていて、ジャミーラの“LSD”“VRY BLK”(いずれも2016年)や“Betty”(2019年)も彼の仕事ですね。彼の仕事を辿ると、チャノを取り巻くシカゴ・シーンが見えてきますよ」

田中「2016年と2018年には、シカゴのアーティストが多数参加したソロ・アルバム『Liberation』『Chatterbox』をリリース。新曲“Reflections”は、今春リリースされる次作のタイトル・トラックです。たゆたうようなギターの音色や、独特のトライバルなビートが聴けるイントロから持っていかれますね。ジャミーラの優雅な歌や、ほんのりとダンスホールっぽさが香るビートも含めて、とてもエレガントで温かい佳曲です。オッドカップルは個性的なプロデューサーとして、要注目ですね!」

 

The Avalanches “Since I Left You (Prince Paul Remix)”

天野「昨年、新作『We Will Always Love You』をリリースしたアヴァランチーズ。彼らの名盤『Since I Left You』(2000年)の20周年盤が6月4日に発表! LP 4枚組、CD 2枚組の大作で、故MF・ドゥームらによるリミックスが収録されるのだとか。感慨深いですね。同作から、タイトル・トラックのプリンス・ポールによるリミックスが届けられました」

田中「プリンス・ポールについては説明不要でしょうか。ヒップホップのゴールデン・エイジを代表する、伝説的なDJ/プロデューサーですよね」

天野「アヴァランチーズはずっとヒップホップ・カルチャーに憧れを抱いていたわけですから、このリミックスは念願叶ったり、でしょうね」

田中「プリンス・ポールの代表作と言うべきデ・ラ・ソウルの『3 Feet High And Rising』(89年)はポップ・カルチャーにおけるサンプリング・アートの可能性を提示したアルバムで、『Since I Left You』もその影響下にあるわけです。21世紀以降は権利関係がシヴィアになっていったので、サンプリング文化が下火になった経緯もあります。『Since I Left You』はそうした潮流のまさに最後を飾った金字塔なので、その意味でこの組み合わせは胸熱ですよ」

天野「ちょっと、〈オタクの夢が叶った感〉が強すぎますけどね(笑)。でもキックとベースが激太で、〈これだ!〉という最高のリミックスです。調べてもよくわからなかったのですが、これ、実は2002年にアメリカだけでリリースされたプロモ12インチ盤に入っていたものなんじゃないかと思います。もしそうだとすると、ラッパーはブリーズ・バーウィン(Breeze Berwin)、歌はケリー・サエ(Kelli Sae)ですね」