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自分のコアにあるもの

 デビュー以来、向井作品を支えてきた盟友のCELSIOR COUPEや常連プロデューサーのgrooveman Spotをはじめ、これまでも代表曲“空 feat. SALU”を手掛けているmabanua、香取慎吾のプロデュースを共同で行ったSONPUB、ZUKIE、omshyといった国内勢に加え、エモーショナル・オレンジズの中核としても知られるアザド・ナフィシーとウィリアム・レオンがLAから参加。その歌詞世界を引き立てるべく、R&Bからハウス・トラックまでしなやかに横断するグルーヴとメロディーの華やかさと多彩さは、本作の大きな特徴と言える。しかし、そのサウンドとは裏腹に、本作に付けられた『COLORLESS』というタイトルは何を意味するのか。彼の現在の心境をダイレクトに反映した“Get Loud”や“Colorless”の歌詞には、前作で葛藤や苦悩と真摯に向き合ったからこそ辿り着いた心境が描かれている。

 「コアなことから王道なことまで、これまでにいろんな音楽をやってきて――音楽以外でもアートワークや衣装のスタイリングを自分でやったり、フォトグラファーからヘアメイクまで選ばせてもらったり。そういうたくさんの色を纏ったのが今の自分なんですね。それがプラスにもなれば、マイナスにもなって、器用にあれこれやってきたからこそ、自分に突出したものがないように感じた時期もあったんです。でも、自分がやったあれこれは最終的に音楽に繋がってほしいと思っていたし、悩み、葛藤していた時期に音楽を作っていたことから自分のコアな部分に音楽があることを再認識して。それこそが〈無色〉で〈純粋な〉、自分の『COLORLESS』な部分だと思ったんです。“Get Loud”における〈僕が生きる限り/何色に染まっても大丈夫〉という一節もアルバムのコンセプトに繋がっていて、無色のピュアな自分がいれば、どれだけ色を重ねてもブレずにやっていけるなって。そう確信することができたし、アルバムを締め括る“Colorless”では重なったものを取り払った自分のコアにあるもの、それが音楽であることを表現したつもりです」。

 その揺るぎない自信が歌声からも強く感じられるアルバム『COLORLESS』は、向井太一のキャリアを大きく切り拓く作品であり、代表作として記憶される作品となるだろう。

 「前作は不安定だったので、リリース前は正直怖かったんです。今回の制作も、もう4枚目のアルバムということもあって、当初は焦りの気持ちがあったりしたんですけど、今はもう大丈夫だなって。満足感も今まで以上に高くて、4作目だからこそできた内容だなと。そう自信を持って世に送り出せるアルバムになりましたね」。

向井太一の作品。
左から、2017年作『BLUE)、2018年作『PURE』、20219年作『SAVAGE』(すべてトイズファクトリー)

 

『COLORLESS』に参加したアーティストの関連作品を一部紹介。
左から、mabanuaの2018年作『Blurred』(origami)、エモーショナル・オレンジズの2019年作『The Juice:Vol.1』(Island/ユニバーサル)、Monster Rionの2017年作『Message』(avex EDM)、grooveman Spotの2020年作『Resynthesis (Yellow)』(Scotoma Music)