近年では「パラサイト」と並び世界で評判を呼んだ韓国映画。94年ソウルの集合住宅に住む少女を主人公に、映画は少女の目線に降りて、 家族との関係、学校の同世代との関係、社会との関係を静かに見つめる。そこから見えてくるのは、どこか不穏な世界の様相と少女の〈生きづらさ〉だ。「82年生まれ、キム・ジヨン」に通じる〈女性ゆえの抑圧〉を映画は炙り出すが、本作はフェミニズム的メッセージだけの映画ではない。人と人とが出会うことの尊さや、厳しく残酷であろうとも〈世界は不思議で美しい〉と信じさせてくれる映画だ。本作が長編初監督となるキム・ボラの繊細な演出に酔いしれたい。