うまく言えないけど何かが違う

 そして、早々に届けられた最初のアルバム。タイトルは、キリンジのラスト作『Ten』から何事もなかったわけではないが、あえてさらりと『11』。

 「以前だったら、いろんなことにチャレンジしても泰行のヴォーカルのカラーになるから、そこにもうちょっと広がりがほしいなっていう時は自分で歌ったりしてたんですけど、かつての枠組がなくなったぶん、音楽的な広がりっていうのかな、こういう意図でこういうことをやってるっていうのがより伝わりやすくなった気がしますけどね。キリンジの音楽っていろんなスタイルのものがあって、基本的にはカジュアルなものだったと思うんですけど、KIRINJIでもそこは残しながら、キメキメになりすぎず、自分が作りたいものを作ろうと」(高樹)。

 昨年暮れの船出ライヴでも披露され、オーディエンスの心を熱くした“進水式”で始まる『11』は、コーラスワークも心地良いウェストコースト風情の“だれかさんとだれかさんが”、中華風味のファンキーな“雲呑ガール”、カントリー・テイストのハートフル・ソング“虹を創ろう”……作詞/作曲はすべて高樹だが、コトリンゴが歌う妖しくもエレガントな“fugitive”、彼女と弓木がヴォーカルを分け合うグルーヴィンな逸曲“クリスマスソングを何か”、ラテン風のビートに乗って楠が歌う“ONNA DARAKE!”など高樹以外がメイン・ヴォーカルを取る楽曲もあり、広がりと奥行きのあるパノラマを見せてくれる。

 「KIRINJIは、キャリアがあるけどスレてない感じで各々のキャラクターがより出てるバンドだと思います。同じメンバーでも、やっぱりかつてのキリンジでやってもらってた演奏といまのKIRINJIでやってもらってる演奏は、うまく言えないけど何かが違うんですよ。やってることはそんなに変わらないっていうメンバーも責任感が増したっていうメンバーもいるし、その〈何か〉が何なのかは自分でもよくわからないんですけどね」(高樹)。

 

▼関連作品
KIRINJIが参加した2013年のコンピ『大貫妙子トリビュート・アルバム -Tribute to Taeko Onuki-』(commmons)
ジャケットをクリックするとTOWER RECORDS ONLINEにジャンプ