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ありがとう、愛してます

――MVを制作した“THINK ABOUT WHY YOU STARTED”は、どんな思いを綴った曲ですか?

YOU「これはもう懺悔。やっぱり普通な顔して帰って来れねえなって。“44 YEARS OLD”で謝りきれてないから。だからこそ、ここで〈心配かけて悪かったよ。またがんばりたいからやってるよ〉〈そっちは最近どうなんだ?〉って、地元の後輩とか離れていった友達とかにラヴコールしてる」

――〈何故ラップを始めたのか考えよう〉というセリフから始まることもあって、ラップに対する初期衝動がテーマになっているのかと思いました。

YOU「(ラップを)始めたけど、なんでこんなに転落しちゃったんだろう?みたいなことなんだ。今回のアルバムの大きなテーマはそれだから。俺は傷ついて転がり落ちちゃったっていうところからのスタート。〈みんなのYOUちゃんはいなくなっちゃったよ〉〈いままでの俺はどこにもいないんだ〉って言ってるんだ」

――今回、YOUさんが所々で歌っているのも新鮮でした。

YOU「ガンガン歌ってるね。“PARTY OVER HERE”もそうだし」

――“ヘビの学校”もそうだし。

YOU「“LONESOME SOLDIER”も歌だし。ウチの親父が76歳なんだけど、〈そろそろラップいいんじゃねえか? さんざんやりつくしたろ。もうお前の歌を歌っていいんじゃねえの?〉ってしつこく連絡してきて。俺、中学校のとき合唱部の部長だったから。NHK合唱コンクールでも2年連続銀賞になってて、すごい強い学校だったわけ。だから歌えるのよ。そこで腹筋が鍛えられて声がデカくなったわけ」

――デカい声のルーツは、そこにあったんですね。

YOU「応援団長もやってて、放送委員もやってて、それがラップに活かされてたわけ。やってきたことが全部固まってきてヒップホップやってたから。だから親父のために、このアルバムを作ってるところもあるんだよね。あと、今回は誰も攻撃してない」

――ですね。

YOU「新しい俺のヒップホップなんだよ。ディスはなし。ILL-BOSSTINOとの間柄もディスから始まったけど、本当そういうのは嫌で。意識したわけじゃないけど、最後くらいに〈誰もディスってないじゃん〉って気付いて」

――自然とそういうマインドになってたんでしょうね。

YOU「自分が傷つきまくって、どうしようもなくもがいてたから、誰も傷つけたくなかったんだと思うし、嫌な気持ちにさせたくなかったというか。そういうことなんだと思う」

――その気持ちの到達点が仲間への感謝を歌った“FOR YOU FROM YOU”ですね。

YOU「ありがとう、愛してます、感謝してます、っていうね。これは“BACK CITY BLUES”とか“ROCKY ROAD”とか“本当の愛”とか、俺の語りスタイルの新しい感じだね」

――今後に向けて、どのような活動を考えていますか?

YOU「コロナでライヴがどうなるか全然見えないけど、どんな場所でも構わないから、〈YOUちゃん、おかえり。待ってたよ〉〈ただいま、心配かけたね、待たせたね〉っていうところから生まれるヴァイブスを育んでいく作業が、このあと数年かかってくるのかなと思ってます。現場で生き様を見せていきたいと思ってます」

――“FOR YOU FROM YOU”には〈人生のセカンドヴァース〉というリリックが出てきます。ここから再出発ですね。

YOU「うん。いま楽しいですよ。何より今回の制作が最高に楽しかったから。これが続いていけばいいなと思ってます!」

 

 YOU THE ROCK★が客演したtha BOSSの2015年作『IN THE NAME OF HIP HOP』(THA BLUE HERB RECORDINGS)

 

2020年リリースの関連盤。
左から、THA BLUE HERBのEP『2020』(THA BLUE HERB RECORDINGS)、BRAHMAN feat. ILL-BOSSTINOのシングル『CLUSTER BLASTER/BACK TO LIFE』(トイズファクトリー)、ILL-BOSSTINOが客演したZORNの『新小岩』(All My Homies)