インタビュー

チャールス・ロイド(Charles Lloyd)『Tone Poem』ペダル・スティールという魔法の絨毯に乗って人間性を謳歌した新作を語る

Photo by Dorothy Darr

ジャズの巨人、魔法の絨毯に乗る。ペダル・スティール付きバンドの新作を語る。

 今もっともジャズをジャズたらしめる広がりと威厳を出しているサックス/フルート奏者がチャールス・ロイドだ。そんな彼の新作は、過去に2作品を出しているザ・マーヴェルスによるもの。そのザ・マーヴェルスは、ギター奏者とペダル・スティール奏者を擁するピアノレスの編成を取っているのが肝だ。

CHARLES LLOYD 『Tone Poem』 Blue Note Records/ユニバーサル(2021)

 「メンフィスに住んでいた子供時代に、白人の友達がペダル・スティールを弾いていた。彼とはすごく仲良しで、2人でいつも演奏していたんだ。そうした経験から、僕はペダル・スティールにポジティヴな思いを持っている。そして、その話をビル・フリゼールが知っていて、あるときペダル・スティールを弾く友人のグレッグ・レイズを連れてきていいかと訊いてきたんだ。それで一緒にやったら、子供の頃の楽しい思い出が蘇ってきて、その夜は奇跡のようにも思えた。だから、彼が入ったバンドは、ザ・マーヴェルス(マーヴェル=驚くべきこと)という名前にしたんだ」

 絶妙の重なりを見せる2本の弦楽器が効いた流動的なサウンドの上で、彼は悠々とサックスやフルート音を躍らせる。「ある種、自分にとってみれば〈魔法の絨毯〉に乗って演奏できるような、そんな気分になれる」と、彼は微笑む。過去のザ・マーヴェルス作『I Long To See You』(2016年)にはノラ・ジョーンズやウィリー・ネルソン、『Vanished Gardens』(2018年)にはルシンダ・ウィリアムスがシンガーと参加していた。だが、今回はゲストなし、クインテットのみで録音された。

 「僕たちもまた素晴らしいシンガーなんだよ。楽器を持って歌わせれば、ね。僕はシンガーを入れてやるのも好きだけど、今作に関して言えば、自分たちというシンガーで十分だった。どの楽曲も人間性を謳歌する曲であり、とくにこのコロナの時期にハートとスピリットを癒してくれる音楽が作れたと思う。その達成感に、今は感謝している」

 演奏している楽曲は自作、オーネット・コールマンやセロニアス・モンク曲、カナダ人の名シンガー・ソングライターであるレナード・コーエン曲まで、いろいろだ。それらは〈宇宙飛行士と考古学者が一緒になった〉ようなロイド流儀のもと溢れ出る。その様は刺激的だが、一方では包容力豊かに聴き手を包む。

 「何かと何かをそれぞれのものとして分けたくないんだ。だから、もし今作を聴いて君がここに美しいものを見つけたり、何か心に響くものを見つけてくれたのなら、僕はすごくありがたいと思う。僕は自分の前に現れた素晴らしい人たちを崇つつ、彼らに僕は〈奉仕している〉という気持ちを持っている」

 以上の発言はズームによる取材による。現在82歳のロイドは、人間味と包容力に満ちていた。