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インタビュー

NEHANN『New Metropolis』痛みや苦しみからも美しさを見出すことはできる

(左から)オダ モリト、ワタナベ タイセイ、クワヤマ ヒロタカ、イノ トモヤ 、ナラ リョウタロウ
 

2019年より、東京を拠点に精力的なライブ活動を行い、インディペンデントなシーン/バンドのリスナーのみならず、多方面のミュージシャンやアーティスト界隈からも注目を集めているバンド、NEHANN(ネハン)。メンバー全員が20代前半という若さながら、出している音楽は80年代のポスト・パンクや90年代のオルタナティヴ・ロック・サウンドを近代版に進化/昇華させたスタイルで、独創的な世界観を構築している。

海外のゴスやモダン・ポスト・パンク・バンド、そして国内だとGEZANTHE NOVEMBERS、Lillies and Remains、PLASTICZOOMSといった辺りのバンドのファンなら秒でヤラレること請け合いな楽曲と、その可能性を最大限に広げている色気ある歌声による独自の音楽性は、彼らの記念すべきファースト・アルバム『New Metropolis』としてカタチになった。遠くないうちに世界へと広がって、様々な方面に強烈なインパクトを与えることになるであろう。

今回は、アルバム『New Metropolis』について、クワヤマ ヒロタカ(ヴォーカル)とオダ モリト(ギター)の2人に話を訊いた。このインタビューを読めば、NEHANNが形成している切れ味の鋭い音楽は、なんとも純粋で無垢な背景から誕生していることがよくわかる。

 

ニルヴァーナ、アイスエイジ、ビリー・アイリッシュ……NEHANNを作っている音楽たち

――Mikikiでのインタビューは初なので、まずは結成のいきさつを教えてください。

クワヤマ ヒロタカ「もともと僕とオダくんが同郷で、2人でバンドをやりたいねと言ってたのが2018年の秋くらい。それから曲を作りはじめて、いまのメンバーみんなが集まって結成できたのが2019年の2月くらいです」

オダ モリト「(クワヤマとは)長野県の同じ村で育ったんです。小学校~中学校と同じで」

クワヤマ「高校に入ってから偶然何かで再会して、そしたら音楽の話が合った。仲良くなったのはそこからなんですよね」

――5人編成になった理由は?

クワヤマ「僕も一応ギターは弾けるんですけど、ヴォーカルだけに専念したくて。それでギターを2本にしたのが大きいかもしれません」

――もう1人のギタリスト、イノ(トモヤ)くんは留学先で知り合ったんですよね?

クワヤマ「僕が18、19歳の頃にLAに留学をしていて……2015~2016年ですかね。そのときのルームメイトのひとりです。僕はギターを持ってアメリカに行ったんですけど、彼もギターを持ってきていて。寮のなかでギターを一緒に弾いて遊んだりしてました。で、オダくんと〈バンドやりたいね〉となったときに、イノくんも東京にいたので誘ったという」

――バンド名についても訊きたいです。以前のインタビューでニルヴァーナがきっかけだという話を読みましたが、ニルヴァーナ=涅槃って言葉自体は仏教用語で意味も深いし、あとづけでも何かしらの意味があるのかなと思ったんですが。

クワヤマ「きっかけはニルヴァーナですが、そもそもバンドをはじめるときに日本語で3文字くらいのものをイメージしていて、それで50個くらい単語を並べたんだけど、そのなかで涅槃(ねはん)=NEHANNがいちばんしっくりきたんです。10代の頃は仏教とか哲学、精神世界とかについて考えたり調べたりするのが好きだったので、そういう傾向が多少潜在的に影響していたのかも、という気はします」

――かっこよくて覚えやすいし、アルファベットのNを重ねるところにもセンスを感じます。ここからは音楽的背景を訊きますが、NEHANNの音楽っていわゆるポスト・パンクと表現されることが多いと思うんです。とくにキュアーやジョイ・ディヴィジョン、エコー&ザ・バニーメン辺りの70年代終盤~80年代に登場してきたバンドがよく引き合いに出されていますが、実際、そういったものを深く聴いているんですか?

クワヤマ「もともと学生時代はニルヴァーナやパール・ジャム、レディオヘッド辺りのグランジやオルタナティヴ・ロックを聴いて育ったんです。そこから僕がポスト・パンクを聴くきっかけになったのは、(80年代のオリジナルではなく)サヴェージズとか同時代のバンドに出会ったことがきっかけで。

そのあとアイスエイジを経て、ソフト・ムーンだったりドラブ・マジェスティが所属しているダイス・レコーズ(Dais Records)周辺だったりを聴くようになりました。そこから遡る形で80年代のポスト・パンクを聴きはじめたんです。そのあとシスターズ・オブ・マーシーとかも聴くようになっていいなと思ったり。80年代にルーツ・バックしてもいるけど、どちらかというといまのものを聴くほうが多いかな」

※シンセウェイヴやインダストリアルの牙城となっているUSのインディー・レーベル
 
ソフト・ムーンの2015年作『Deeper』収録曲“Far”
 

オダ「もちろんキュアーやジョイ・ディヴィジョン、エコバニは好きです! もともとは学生時代にTHE NOVEMBERS、Lillies and Remains、Psysalia Psysalis Psycheなど当時の東京のインディー・シーンのバンドが好きで、そこからルーツバックして掘りながら80年代のポスト・パンク、ニューウェイヴを聴いていました」

クワヤマ「僕もジョイ・ディヴィジョンは有名だし聴いていたけど、めっちゃ好きで掘って、みたいな感じではなかったですね」

――グランジやオルタナからサヴェージズやダイス、キャプチャード・トラックス周辺のポスト・パンクに興味を持つようになったきっかけは? 日本の音楽シーンやメディアを通じてだと、なかなか辿り着けないバンドやカルチャーだと思うんですが。

クワヤマ「それこそSpotifyのサジェスションなのかもしれない。当時XXとかが流行っていたじゃないですか、ネットの記事か何かでXXのロミーとサヴェージズのジェニー・ベスが仲いいと出ていて。それでサヴェージズを知って、その流れでアイスエイジとかも聴いた。ディグっていたらしっくりくるものがあったんです」

――いまっぽい聴き方ですが、それで80年代の音楽にルーツバックして辿り着く流れを、20代前半の方からリアルに訊けたのは嬉しい限りです。ちなみに、海外の音楽シーンでいま興味を持っているシーンやバンドは?

クワヤマ「ベルリンとかはインダストリアルが盛んだし、そういうのを好きな人が多いと思うので興味があります。あと結成初期に影響を受けていたダイス周辺のバンドは普通にライブを観たい」

オダ「最近はUKの(現行の)ポスト・パンクを聴いてますね。ブラック・ミディスクイッドの新譜がおもしろくて、あのあたりのシーンはずっと気になっています」

――好きな音楽をいまの気分でひとつ答えてと言われたら、何を選びますか?

オダ「(迷わず)僕はレディオヘッドの『Kid A』(2000年)ですね」

クワヤマ「最近のビリー・アイリッシュの曲が好きですね。暗い感じでよく聴いちゃいます。こういう感じなんだって。ニュー・アルバムも7月に出るそうだから、かなり楽しみです」

ビリー・アイリッシュの2021年の楽曲“Your Power”
 

――他のメンバーの音楽嗜好は?

オダ「もう1人のギターのイノくんは、アンビエント系の音楽を毎日作っています」

クワヤマ「ギターがいちばん巧くてスキルがあるのはイノくんですね。音楽歴が長いし。彼とは一瞬、NEHANN以前に一緒にバンドをやろうとしていたんだけど、ジャンルが定まらなさすぎて、すぐやめました」

――それがNEHANNではしっくりハマった?

クワヤマ「NEHANNはそもそもやることをある程度イメージして結成したんです。それこそ、ソフト・ムーンやアイスエイジ以降のモダン・ポスト・パンク的なコンセプト、世界観でやろうと。バンドをやりながら探していくのではなく、もともと意図してたのでやりやすかった。2018年秋ごろの時点で、僕はすでに“Under the Sun”などの曲を作っていましたから」

――僕がNEHANNの名前を知って最初に観たのが『New Metropolis』には新録で入っている“Under the Sun”のオリジナル・ヴァージョンのMVでした。観た瞬間から〈こりゃヤベェ〉と衝撃だったんです。

クワヤマ「“Under the Sun”は、NEHANNでもいちばん初期の曲ですね。ライブの物販で売っていたファースト・デモにも入れていたもので」

2019年の楽曲“Under the Sun”
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