Page 2 / 3 1ページ目から読む

自信を持って世に出せる覚悟

 完成したアルバムでは初めて自身の姿がジャケットに。これはある種の決意表明とも解釈できるし、『ONE WORLD』というタイトルからも強い意志が感じられる。

 「昔はミュージシャンとセッションしながら作り上げていくプロデューサー気質だったんですけど、いまはゼロから自分で全部作れるようになったということもあって、心から自信を持って世に出せるという、覚悟を示したかったのかもしれません。タイトルに関しては、日本に限らず世界中が一つなんだなって改めて感じたこともあり、自然と浮かびました」。

 アルバムの表題曲“One World”で歌うのは21歳のジャズ・シンガー、Ayana。彼女はTHE ROOMでスタッフとして働いていた縁で今回の起用に至ったという。

 「デビュー作『BEAUTIFUL』のときにも後輩スタッフのKarinに2曲歌ってもらって凄くいいものになったので、今回は彼女にお願いしました。歌詞を沖野さんの奥さんに書いてもらって、THE ROOMで仮歌を録ったら一発OKだったんで、本当に実力あるなって思いましたね」。

 また、リード曲“Sun, Run & Synchronize”ではsauce81を起用。彼の透き通ったヴォーカルを活かしたブギー・チューンとなっている。

 「実は彼の“Dance Tonight”が大好きで、自分のDJプレイでもよくかけているんですが、シンプルにこういう曲が作りたいと思って連絡を取ったんです。僕が最近走ることにハマっていて、曲のイメージもタイトルのまんまで〈ランニング〉。歌詞は彼に書いてもらったんですが、引きこもってばかりいないで、外を走って、太陽の光を浴びて、そしたら光とシンクロして何もかもうまくいくよっていうポジティヴな内容の曲になっています」。

 続く“Light Your Light”は、自身の代表曲“Into You”など要所で迎えてきた多和田えみを招き、新たなアンセムともいうべきダンス・チューンを完成させている。

 「彼女にぴったりの曲が出来たんで、ぜひ歌ってほしいって連絡したら二つ返事で歌ってくれることになりました。実際にライヴでもこの曲から“Into You”への流れはめちゃくちゃ盛り上がりましたね」。

 その一方で、オープニングを飾るファンク・ナンバー“Urban Origin”や、鍵盤とギターが熱く絡む“Now It Comes”、パーカッシヴでツール的な役割を果たしそうな“Midnight Escape”といったインストの3曲も、本人いわく「会心の出来」だそう。

 「自分もDJでこんな曲が欲しいなっていう、使いやすい曲を想定して作っています。だから、僕のインストって意外と同業者のDJから評判がいいんです(笑)」。

 ヴォーカル曲とインストのバランスや曲順に関しても最後まで頭を悩ませたというだけあり、これ以上ないというほど完璧。まるでミックス作品のようにスムースにグルーヴを紡ぎ出す構成は流石の一言に尽きる。なお、kickin'を主宰する先輩DJの黒田大介によるライナーノーツも本編に負けじと濃い内容になっているそうで、本編と併せて味わってほしいとのこと。その流れで、今年2月に急逝した盟友RYUHEI THE MANについても想いを語ってもらった。

 「ずっと僕の曲を好きだと言ってくれていたし、アルバムの完成を楽しみにしてくれていたと思います。彼がいなかったら、こうした全編生音のアルバムは形にできなかったかもしれない。すごく影響を受けたし、いまでも良きライヴァルであり、良き友人です」。

 まだまだ厳しい状況は続くが、明けない夜はない。近い将来、すし詰めのフロアで大いに〈密〉になりながら、汗だくの身体全体で浴びるようにグルーヴを受け止めたい、とにかくそんな気持ちにさせられる一枚だ。

 「生演奏のアルバムだとライヴでもそのまま再現できるし、その素晴らしさを今回痛感しました。やっぱりライヴやりたいですね」。

『ONE WORLD』に参加したアーティストの作品を一部紹介。
左から、sauce81の2020年作『S8100』(Eglo)、彩菜-Ayanaの2021年作『Yellow Flower』(Steelpan)、多和田えみの2012年作『Sing you』(ソニー)、メイリー・トッドの2017年『Acts Of Love』(Do Right!)、Monday満ちるの2014年作『Brasilified Nights』(HYDRA)