
シブがき隊や松田聖子、そして康珍化との黄金タッグへ――ソニー盤のオススメ曲
――では各盤で林さんが特に聴いてほしいと思うオススメ曲をいただいて良いですか?
「じゃあソニー盤から。まずはRainychの“BLIND CURVE”(2020年、菊池桃子のカバー)ですね。最初、RainychというYouTuberがこの曲を選んだことに驚いたんですけど、あらためて曲を聴き直してみたらすごく良くて。
あと鷺巣(詩郎)くんもノってやってくれたシブがき隊の“KILL”(85年)も印象に残ってる曲ですね。当時の男性アイドルの曲でこういうテイストはなかなか珍しかったんじゃないかなと思います。吉野千代乃さんにあげた“Driving In The Rain”(92年)は、僕が歌ってる方だと“Loving in the rain”(92年)に変わるいわゆる異名同曲で、ソニー盤に両方入ってます。
あと今回は“真っ赤なロードスター”(84年)が入りましたけど、松田聖子さんに書いた一連のアルバム収録曲は自分でもけっこう好きなんですよ。
そして浅野ゆう子さんの“半分愛して”。これは自分にとっても時代の幕開け的な作品で、しかも詞が康(珍化)さんなんですよね」
――林さんと康さんの初タッグ曲で、80年作品。近年メロウ・グルーヴとして高く評価されている曲です。
「その後のコンビの足掛かりになっていく作品ですね」
ディスコからフレンチ・ポップスまで、多彩なポニーキャニオン盤
「キャニオン盤は“真夜中のドア”を筆頭にですけど、僕のサウンドを支えてくれたギタリストのひとり、松原正樹さんのリーダー・アルバムに提供した“SHINING STAR”(83年)や、あとイースタン・ギャングの“Charlotte”(79年)もなぜかここ数年で海外からの楽曲使用の連絡が多い曲です(笑)。マイケル・コースのファッション・ショーとかアメリカのドラマで使われたりしているみたいで。
坪倉唯子さんの曲はソニー盤とキャニオン盤に1曲ずつ入ってますけど、これ実は忘れちゃってたんですが、歌もすごくいいし、鳥山(雄司)さんのアレンジが冴えてますね。
岩崎良美さんはアルバム1枚プロデュースさせてもらって(84年作『Wardrobe』、康珍化との共同プロデュース)、“くちびるからサスペンス”がよく知られていますけど、その影に隠れちゃった“WHAT’S LOVE”あたりは、さっき話したソウルと白人のポップスの融合をちゃんと継承しているのが見えるんじゃないかと思います。
一方で、サーカスの“Petit Dejeuner -日曜日の朝食-”(81年)を聴いてもらえれば、僕が単にシティ・ポップで括られる作家ではなく、フレンチ・ポップスが入った作家だということがわかってもらえるんじゃないかと思いますね。
あとは松居和さんがロス録音でカルロス・リオスとやった“幻の水平線 -The Direction You Take-”(82年)。これ、特に曲タイトルにクレジットされてないんですが、ボーカルが映画『愛と青春の旅だち』の主題歌(“Up Where We Belong”)をジョー・コッカーとデュエットしているジェニファー・ウォーンズなんです。なので実はすごい曲です(笑)。
それと大宮京子&オレンジの“ミラージュ”(80年)は個人的に大好きな曲ですね。今回は入ってないですけど“イン・ザ・レイン”(80年)という曲も松本隆さんの作詞で、併せて聴いてもらいたいです。“Rainy Saturday & Coffee Break”の大橋純子版(77年)もオススメかな」