2023年にデビュー40周年を迎える杉山清貴&オメガトライブ。林哲司が総監修し、彼らの過去作を最新技術で生まれ変わらせるリミックスプロジェクトが進行中だ。その第4弾『ANOTHER SUMMER REMIX』が、3月29日(水)にリリースされる。今回はそんな『ANOTHER SUMMER REMIX』を、〈Light Mellow〉で知られる音楽ライターの金澤寿和に解説してもらった。  *Mikiki編集部

杉山清貴&オメガトライブ 『ANOTHER SUMMER REMIX』 バップ(2023)

 

デビュー40周年のリミックスプロジェクト

デビュー40周年を迎えた杉山清貴&オメガトライブ、当時の作品を最新技術で蘇らせるリミックスプロジェクトが進行中だ。総監修は、松原みき“真夜中のドア/Stay With Me”の作曲者で、杉山とも縁の深いヒットメイカー:林哲司。ジャスト40年目にあたる今年の復刻は、85年にリリースされた4作目『ANOTHER SUMMER』のリミックス盤『ANOTHER SUMMER REMIX』で、2021年9月に発売された第1弾『AQUA CITY REMIX』昨年3月の第2弾『RIVER’S ISLAND REMIX』、そして同年9月に出た第3弾『NEVER ENDING SUMMER REMIX』と、半年に1枚のペースで着々と復刻が進んでいる。収録曲は、JALのCMソングとして大ヒットした“FUTARI NO NATSU MONOGATARI -NEVER ENDING SUMMER-”以外、すべて初のリミックスだ。

『ANOTHER SUMMER REMIX』ティザー

 

稀有なサウンドと独自の活動体制

時は折しもシティポップの世界的ブーム真っ只中。その中でも軽く踊れる80年代のサウンドが大人気で、海外DJによるフロア需要がめっぽう高い。オメガトライブと同じマネージメントに属した妹分の菊池桃子も、ボーカルを務めたグループ:ラ・ムー含め、アナログ盤が再発されるほど大人気を得ている。その中にあって彼らは、80年代初頭の煌びやかなウエストコーストサウンドを、より華やかに、なおかつそこにチョッピリ叙情的な日本のメロディを乗せて歌った稀有な存在だ。

それに加えて、バンドフォーマットを持ちながらも、実はプロジェクト的に活動していた点が斬新で。当時はほとんど知られていなかったが、バンドとしてライブ活動やTV出演を行ないつつ、レコーディングではセッションミュージシャンが起用されて演奏し、ほとんどの楽曲は林哲司の作編曲。そこに杉山自身や他のメンバーの書いた楽曲が混ざる、というシステムを構築していた。2年8ヶ月という活動期間にアルバム5枚、シングル7枚をリリースという早いスケジュールは、看板の杉山以外、スタジオとライブでそれぞれ別のチームが動いていたからこそ可能になったことである。

 

従来ファンも見逃せない今の時代にフィットしたサウンド

今回の復刻は、完成した音にEQ(イコライザー)を加えるだけのリマスターではなくリミックス。だから技術的にはパートの差し替えや抜き差しも可能だが、往年の名盤のイメージを覆すようなことはせず、楽器の音量バランスやアンビエントな空気感を今様に調整し直した仕上がり。“FUTARI NO NATSU MONOGATARI”は彼らにとって初めての打ち込みトラックだが、当時のドンシャリなサウンドやクリック音が、よりナチュラルで、耳に優しい仕上がりになっている。80年代サウンドというと、人工的なリバーブが耳に痛かったりするものだが、リマスターでリカバーできないような処置が、リミックスで可能になるのだ。だからサウンド全体の印象はそのままに、今の時代感にフィットしたサウンドメイクが可能になる。その成果がハッキリ分かる仕上がりだ。

作品的にもメンバーの成長が窺い知れる内容で、林が作編曲を受け持ったのは9曲中5曲。残り4曲は杉山が2曲、他のメンバーが2曲を分担している。また今回のリミックスでは、ボーナス曲1曲を追加収録。従来ファンも見逃せないモノとなっている。当時のグループの実態が書籍などで公表されている今、新ためてフレッシュな気持ちで杉山清貴&オメガトライブを聴き直す良い機会だ。

 


RELEASE INFORMATION

杉山清貴&オメガトライブ 『ANOTHER SUMMER REMIX』 バップ(2023)

リリース日:2023年3月29日(水)
特典:『ANOTHER SUMMER REMIX』オリジナルポストカード
価格:2,750円(税込)

TRACKLIST
1. ROUTE 134
2. DEAR BREEZE
3. FUTARI NO NATSU MONOGATARI -NEVER ENDING SUMMER-
4. TOI HITOMI
5. SCRAMBLE CROSS
6. MAYONAKA NO SCREEN BOARD
7. AI NO SHINKIRO
8. YOU’RE LADY, I’M A MAN
9. THE END OF THE RIVER

BONUS TRACK
10. ???

 

LIVE INFORMATION
林哲司 SONG FILE SPECIAL with 杉山清貴 菊池桃子
デビュー50周年公式本『Hayashi Tetsuji Saudade 50years with melody』出版記念

2023年4月1日(土)東京・恵比寿 ザ・ガーデンホール
開場/開演:15:00/16:00
第1部:出版記念トークショー
出演:林哲司
ゲスト:ヒャダイン

第2部:SONG FILE SPECIAL
出演:林哲司(ボーカル/ギター)
ゲスト:杉山清貴(ボーカル)/菊池桃子(ボーカル)

 


PROFILE: 杉山清貴&オメガトライブ
オメガトライブは80年代に活躍したジャパニーズAORの草分けで、プロデューサー・藤田浩一が指揮を執り、作曲家・林哲司らを中心とした制作陣で構成され、杉山清貴&オメガトライブを始まりとし、その成功のもと、コンセプト、サウンドを継承、 カルロス・トシキなどにボーカルを変えて変遷した当時のプロジェクトの総称。杉山清貴&オメガトライブは83年4月、シングル“サマーサスピション”でバップよりメジャーデビュー。シングル7作、アルバム5作をリリースしてその活動を終えた。2018年、デビュー35周年を迎えるにあたり、杉山&オメガトライブのシングルに、現在は入手困難な『カマサミ・コングDJスペシャル』、さらに『SINGLE VACATION』の初DVD化などを収録した特別パッケージ『杉山清貴&オメガトライブ 35TH ANNIVERSARY オール・シングルス+カマサミ・コングDJスペシャル&モア』をリリース。