連載

【沖メイのサウンズ・オブ・クリーチャー】第7回 〈場所〉への想いから始めたライブの空間演出について

ミュージシャンの沖メイが〈音楽と生き物〉というテーマで綴る連載〈サウンズ・オブ・クリーチャー〉。前回の掲載から1年、新曲“レスタウロ”のリリースなどを経て、ひさびさの更新になりました。今回は、新型コロナウイルス感染症の蔓延によって世界が一変してしまった2020年、沖が〈場所〉について考えを巡らせ、新たに始めた試みについて。 *Mikiki編集部

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こんにちは。お久しぶりです。
2021年も半分が過ぎましたね。

2020年から2021年、この1年は本当に色々なことがありましたね。

私は昨年からソロ活動を本格化させて、台湾ツアー後の7月に初めての音源『Half Way For Now』をリリースしました。
リリースした2曲は、バンド時代に演奏していた曲です。

もともとバンド用に制作していたデモ・トラックを改めて作り直し、松下マサナオと二胡奏者の吉田悠樹さんに参加してもらいました。
ここから”という曲に収録されている吉田さんの二胡は、ソロ用に新たに録音していただいたもので、バンド・ヴァージョンとは異なるのでぜひ聴いていただけたら嬉しいな。

盟友斎藤拓郎と作った摩訶不思議MVシリーズ第1弾

 

さてさて、〈ニュー・ノーマル〉〈ウィズ・コロナ〉などの言葉が飛び交っていた2020年。
家でたくさん過ごすようになり、今まで見落としていたような生活様式や人との関わり方など、様々な変化を感じました。
当時を思い出すと、〈2020年はとにかく前向きに!〉というがむしゃら感もあったのですが、ライブが減り、音楽などのアウトプット作品に対する世間からの価値付けやそれらを取り巻く状況などの変化を感じ続けた1年で、私は〈場所〉について考えることが多くなっていました。

そこにいけばいつも仲間がいた場所。
ライブをしていた場所。集う人たち。お店の皆さん。
ライブを作ってくれる照明、音響、運営、関わる全ての皆さん。
故郷、懐かしい場所、身をおけば心が温かくなれる場所。
人と場、本来なら密接であるその関係性、そして音楽と場所の関係性は確固たるものでした。

場所との関係性が時代によって分断されてしまったことは、新しい関係性を生むことになったと思います。
現状を元どおりにすることをただ願うのではなく新しい日々を前向きに過ごすため、多くの現場で試行錯誤や新しい取り組みが多くなされたことも事実です。
配信ライブが盛んになったことで新たなシーンも生まれたように思いますが、これまで以上に〈表現〉の場をいかに楽しめるか、が突きつけられたような気もしました。

 

変化を受け止めながら進んで行くときに、少しの恐怖がつきまといます。
場所への想いはいつしか消えてしまうんじゃないか、どうしたら興味を持たせ続けられるのだろう、自分の、そして観る人の……。
私は、そんな流れでこれまでよりも一層場所について大切に考えたいと思い、ライブ会場などの視覚演出、会場演出、ステージ装飾を制作するプロジェクトを始めました。

音楽はいつだって最高の空間演出だと私は思います。
液体のように伸び縮みし、どんな場所やシーン、シチュエーションでもフィットし、体験をもたらす、とんでもなく自由な存在だと感じています。
消費されることも、サブスクの大海原の中で通り過ぎて行くことも、現代では音楽の一つのあり方ですが、生演奏が持ついっときのストーリー、その特別性は私にとって大切なものです。
生音、その価値をどのように打ち出して行くかを考えたくなり、作り手(実演家、制作現場の皆さん、運営の皆さん)に還元されるもの、当事者だけでなく客席にいてくださる皆さんにももっと体験としてプラスαになるものを作ってみたいと思うようになりました。

配信ライブに限らず、一つの空間・ライブ時間の中でテンポラリーな視覚演出を作ることは贅沢なことだと思われがちですが、私はそうは思いません。
いつもの黒い壁、見慣れた風景がその時だけ変化し、音を彩ることは自然なことだと思うのです。

 

予算や時間が限られた中でストーリーを最大限活かす方法として、私はアップサイクルを思いつきました。
予算に合わせて毎時新しい素材を購入&廃棄するのではなく、身の回りにあるもの、本来の役目は遂げたけど形を変えたらまだ使えるかもしれないもの(チラシ、裏紙、ビニール傘、剪定した草木、土、ダンボールなど)を使用して、〈今あるものをどうしたら楽しめるか?という工夫を表現する〉ことをコンセプトにすることにしました。
私は昔から石や流木、ボロ布やビニールの切れ端、近所に転がっていた木の根などを拾い集めてコレクションしていました。(病的な収集癖だと思う)
物の多さにいつも背徳感を覚えながら暮らしてきましたが、それが日の目を見るときがきて、このための収集癖だったのだと自分で自分を肯定できた気がして大変嬉しかったです。

最初は修行のつもりで、こういうコンセプトでやらせてくれないかと様々なライブハウスに掛け合いましたが、今は演者のために時間と予算を使いたいからということでお断りされることが多かったです。
そんななか青山にある月見ル君想フの店長タカハシコーキさんに相談したところ、すぐに〈いいよ!〉と快諾してくれて、あっという間に担当する日にちが決まりました。

廃棄植栽を利用した空間 2020.12.25 インスタ

廃棄裏紙を利用した空間 2021.03.31 インスタ

高井息吹『kaleidoscope』リリース・ツアー/弾き語りファイナル@渋谷 7th FLOOR

朝崎郁恵 × 青葉市子〈緑光憩音〉@表参道・能楽堂本舞台銕仙会

まだ始めたばかりのプロジェクトですが、近々正式な形でローンチ予定です。
またその時に詳しく書けたらと思います!

 


RELEASE INFORMATION

沖メイ 『レスタウロ』 FRIENDSHIP.(2021)

リリース日:2021年4月28日
フォーマット:デジタル
配信リンク:https://FRIENDSHIP.lnk.to/Restauro

TRACKLIST
1. レスタウロ

 


PROFILE: 沖メイ
東京生まれ。日本のバンド・ZA FEEDOのヴォーカル、作詞、作曲、アートワークを担当。小学校に行かず、東京シューレで過ごした後、自由の森学園に入学。卒業後、和光大学に進学し、ジャズ研究会にてビッグバンドを始め、テナー・サックスを担当。ジャズやモータウンなどをたくさん聴いて過ごす。
社会人を経て2012年、ZA FEEDO結成後から作曲を始め、エレクトロニカ、民族音楽、クラシック、ジャズ、ロック、猫、インコなどから影響を受けた楽曲を制作。ZA FEEDOとしてシンガポールの野外フェスに招聘されるなど精力的に活動。
2016年、LAから来日したマイ・ハワイ(my hawaii)のジャパン・ツアーに帯同。同年8月には沖メイとしてノウワー(KNOWER)の初来日公演のゲスト・アクトを務める。
2017年、初めての単身ツアーとしてヨーロッパへ。ベルギー、フランスを廻る。
2019年、ZA FEEDOの活動休止を機に本格的にソロ活動をスタート。
2020年1~2月、台湾、東名阪ツアーを開催。同年7月、ソロとして初めての作品『Half Way For Now』をリリース。
2020年12月から、〈サステナブル〉〈アップサイクル〉などの観点からライブ会場をメインとした空間装飾&演出をするプロジェクトをスタート。
2021年4月、UR都市機構のプロジェクト〈さんかく問屋街アップロード〉のタイアップとして“レスタウロ”をリリース。
その他の活動として、モノンクルのビルボードライブ公演シリーズにコーラス/エレクトロニクスでサポート参加。藤原さくらのデジタル・シングル“Twilight”にハーモニー&コーラス・アレンジで参加。

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