ミュージシャンの沖メイによる〈音楽と生き物〉がテーマの連載〈サウンズ・オブ・クリーチャー〉。彼女のバンド、ZA FEEDOは2019年10月のライブをもって活動を休止しました。それを経た2020年1月には台湾でソロ・パフォーマンスを行い、Yasei Collectiveの結成10周年ライブに参加するなど、現在はソロ活動に熱心に取り組んでいます。

今回は連載の特別編として、沖がかねてから〈会いたい!〉と思っていた友森玲子さんとの対談をお届けします。動物病院とペット・サロンを運営する株式会社ミグノンプランと、保護動物の譲渡活動を行う特定非営利活動法人ランコントレ・ミグノンの代表を務める友森さん。〈ほぼ日刊イトイ新聞〉など、多数のメディアに出演されているので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。

2人の対話は、私たちが向き合わなければならない課題である、生き物と人間との関係性を巡るものになりました(それは、いまもっともアクチュアルなトピックである気候変動問題とも決して無関係ではありません)。海外での活発な議論と比べると、日本では見過ごされがちなこの問題を考えるきっかけになればと思います。

なお取材は、ランコントレ・ミグノンの写真展の会期中に会場で行いました。ユニークな展示の様子も、沖の親友であるKana Tarumiによる写真でぜひお楽しみください。

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動物と人間が〈出会う〉場を提供するランコントレ・ミグノン

沖メイ「私が友森さんのことを知ったきっかけは、4、5年前に友森さんのツイートを見たことなんです。興味を持って調べてみたら、音楽との関わりもあることを知って、さらに親しみを覚えました。

実は、私の実家の周りには猫が20匹くらいいて、〈保護猫〉〈地域猫〉という形で母が面倒を見ています。私が一緒に暮らしている猫もそこの出身で。ある日、その母から〈ミグノンって知ってる?〉って訊かれたんです。2人とも友森さんの活動をチェックしていたんですね(笑)。

この連載で生き物と人間との関わりを掘り下げるにあたって、ペット・ショップや保護犬・猫といった身近なトピックを考えたかったので、友森さんにお話を訊きたいと思いました。友森さんは、もともとペット・サロンを経営されていたんですよね。現在の活動に至った経緯を教えいただけますか?」

(左から)沖メイ、友森玲子

友森玲子「25歳でサロンを開業して、開業費を返すために必死で働いていたんです。そうしたら数年で返済が終わって、そのぶん好きなことをしようと思いました。

まず、お店の看板犬になってくれる、一緒に出勤して家に帰るパートナーが欲しくて。必ずしも子犬でなくていいから、手放された動物を引き取ろうと思いました。それで動物愛護相談センターのサイトを見たら、チワワとかトイプードルとか、人気犬種の情報がたくさん載っていて驚いたんです。

それほどひどいことは起きていないだろうと思い込んでいたのが、東京都でもたくさんの動物が手放されていた。そのなかから1頭だけを救っていいのか、自分が預かって譲渡をしたほうがいいんじゃないかと。それで、まず預かりボランティアを始めました。この仕組みで保護をしていけば、一生のうちに結構な数の動物を助けられるなと。そう考えて……気づいたら団体を立ち上げていたんです(笑)。

自分で選んで引き取って、自分の考えで譲渡に向く動物になるように治療やトレーニングをし、責任を持って譲渡する。そういう流れでやりたかったので、大きくするつもりもなく、東京でいちばん小さな団体にしようと思いました。なので、〈生涯を動物のために捧げる!〉という思い切りがあったわけじゃなく、出来る限り続けていこうという感じでした」

「そうだったんですね。〈ランコントレ・ミグノン(Rencontrer Mignon)〉という団体名はフランス語ですよね?」

友森「そうです。動物を〈助ける〉〈保護する〉という言い方や言葉に違和感があったので。そもそも、全部人間が勝手にやっていることじゃないですか。犬も猫も人間が品種改良して作り上げた生き物で、それを売って儲けたいから増やして、飼いきれなくなったら手放す。今度はその動物を〈助けます〉って、おかしな話だと思って。

フィットする言葉を探していたとき、たまたまサロンの名前が〈mignon(ミニョン)〉をローマ字読みにしたものだったので、またフランス語の辞書を調べてみました。そこで〈遭遇する〉〈出会う〉を意味する〈rencontrer〉という単語を見つけて、いいかもって思ったんですね。

動物と人間が出会う場を提供するポジションで活動を続けられれば、自分も楽しいし、動物に対して上から目線にもならない。自分の気持ちに合っているなって」