初の映像作品でトライしたのはクラシックと笑い、そのギャップがたまらない!
昨年の〈K’z Piano Show2013~笑得るクラシック〉ツアーの最終公演を収録した清塚信也の初めての映像作品「THE LIVE」。演奏の前に生演奏への思いを綴った文章がテロップで流れる。真摯な言葉が心に響くが、コンサートはトークもあり、会場に笑い声が響く。
「演奏を聴いて、見て、トークで笑う。どれをとってもエンターテイメント、というのが僕の目指すコンサート。だから、ショウという言葉を使い、こういうピアノを弾く人はどんな人なのか。多くの人が気になる点に応えて、僕を知ってもらうためには、トークでパーソナルなことを話すのが重要だと思っています」
プログラムもユニーク。1部はショパンやリスト、ドビュッシーなどのクラシック、2部はオリジナル楽曲で幕を明け、松任谷由実の“春よ、来い”から始まる清塚信也編“Four Seasons”などが演奏される。
「四季のメドレーでは、僕のアレンジャーとしての側面を表現したかった。さらに音楽は、演奏された瞬間から音が消えていくものでしょ。それは人生における時の流れに似ていて儚いものであり、その儚さは季節の移ろいを連想させることもあって、クラシック以外の曲で四季をメドレーにアレンジしてみたんです」
撮影を多くのCMを手掛けてきたマキノユキオ監督が担当。さまざまなアングルから清塚信也をとらえ、漆黒の鍵盤蓋に映る10本の指と、まるで競演しているように見える映像などでワクワクさせてくれる。
「マキノさんとはCMで一緒に仕事をしたことがあり、それがすごく楽しかった。彼はとても美しい感性の持ち主だから、今回のような映像作品が出来上がったんですが、実は僕としてはコントもやりたかった(笑)。ショパンやリストの笑えるエピソードをコントで紹介して、彼らの曲を演奏する。笑いは、エンターテイメントに欠かせない大切なものだと思っているので……」
斬新な発想と驚くが、ここに彼の信念があり、奇抜な演出で脚光を浴びるためではない。この構想も実現に向けて着々と進行中で、本人は「キレイな方向は僕の本意じゃないから」と謙遜するが、2部の冒頭で演奏されるオリジナル楽曲はとても優美。光や風を感じさせ、時には波間に揺れているような心地好さがあると同時にストーリー性にイマジネーションが膨らむ。
「作曲に関しては、インスピレーションを得たまま、それを素直に曲で表現しています。そこにはエンターテイメント性を追求するこだわりは介在せず、自分の感性を優先させていますね」
多才で、その間に存在するギャップのおもしろみ、会場を掌握していく演奏とキャラ。さらに終演時の笑顔に彼自身が感じられる。ここに映像の楽しさがある。