クラシックをベースにマルチな才能を発揮する凄腕ピアニスト清塚信也が中学時代(桐朋の音楽教室)からのマブダチ髙井羅人と結成した注目の連弾デュオ。
「一昨年の終わりにドイツ留学から帰国して再会したら、7年間音信不通だったとは思えないくらいに即、意気投合(笑)。一緒に何かやろうよって誘われて、彼のコンサートにゲスト出演したのが始まり」(髙井)
当初はクラシックの作曲家のものを演奏していた二人だが、もともと素人ピアノ弾きの家庭内コンサート用に書かれていたような連弾曲にすぐ物足りなさを感じ、オリジナルや編曲ものを追究する方向にシフト。
「ピアノの特性をよく知っている僕らだからこそできる凄い曲を作っちゃおうぜって。他のセッションとは違い、お互いが相手に合わせるのではなく、二人でひとつになるような連弾を目指した」(清塚)
耳慣れた旋律が高速のテンポで炸裂する《agitato!》やモンティ&ビゼーもびっくりな遊び心と超絶技巧が散りばめられた《チャルメン》など、高揚感溢れる音の波に圧倒されるオリジナル曲も見事だが、楽譜上は一見シンプルに見えながらも、ひとつひとつの音にぴたりとシンクロする4つの手から奇跡のように美しい響きが生まれる《tranquillo》が圧巻。本アルバム最大の聴き処かもしれない。
「本当はこのアプローチの楽曲だけでアルバム1枚作りたかったくらい、自分でも思い入れがある」(清塚)
「彼は早弾きのテクニックも凄いけど小さな音のコントロールが抜群。特に下のパートを弾いている時の予想を超えた繊細な音に驚かされる。そんな演奏ができるからこそ、こういう曲が書けるのかも」(髙井)
「そういう羅人も響きへのこだわりは人一倍。間のとり方もそうだし、次に繋がる音のひとつひとつにデリカシーが感じられる。逆にふだん弾き慣れないポップス・カヴァーの時には苦労をかけたかも」(清塚)
そのカヴァーでもリズミカルな《Viva La Vida》や2CELLOSにも負けないテンションの《Smooth Criminal》と実に見事。《Forever Man》もイケてる。
「ギターバンドの曲をピアノで弾くのは無謀だけど、クラプトンが好きなので、この曲ならばと」(清塚)
ガーシュウィンの《Summertime》も仰天アレンジ。
「ジャズの人が普通にやってる“バウンス”とか、頭でわかってても指が動かない。鍵盤を激しく叩くようなプレイも躊躇したけど…勉強になりました」(髙井)
ボーナストラックにはヴァイオリンとチェロを加えて映画『ポプラの秋』のテーマを先取り収録。
「これからも連弾の新しいイメージや可能性を探っていきたい。ライヴもお楽しみに!」(清塚)