会場でしか味わえない〈一期一会〉の音楽体験が帰ってくる!
2020年から猛威を振るった新型コロナウイルス。当時は〈不要不急〉というワードの是非とともに、音楽を演奏すること、そして享受することについて、多くの人がこれまでにないほど考えた時期だったと思う。長くて寒い冬のようなその時間があったからこそ、再びライヴの空間に身を任せられる喜びもこの上なく大きいのである。
川崎の夏の風物詩となって久しい〈フェスタサマーミューザ KAWASAKI〉も、コロナ禍からの出口が見えてきた今年は、7月22日の〈歓喜の広場〉でのオープニング・ファンファーレなど、これまで控えてきた祝祭感のあるイヴェントの数々が復活。〈一期一会の音楽をライヴで楽しむ〉という原点回帰ともいえるコンセプトを打ち出し、会場に足を運ばないと味わうことができない豪華なラインナップで臨むことが発表された。
まず、〈フェスタサマーミューザ KAWASAKI〉の主軸であるオーケストラ公演から紹介していこう。日本を代表するオーケストラが、自らの個性とアイデアを披露し合うかのごとく、今年もビギナーからマニアまで幅広く受け入れられそうな、バラエティに富んだプログラムが並んでいる。ミューザ川崎シンフォニーホールを本拠地とする東京交響楽団はオープニングコンサートとフィナーレコンサート、しんゆり公演に登場。7月22日のオープニングでは音楽監督を務めるジョナサン・ノットが、彼にとって本邦初公開となるチャイコフスキーの交響曲第3番“ポーランド”と第4番を指揮するオーケストラファン大注目の公演だ。8月11日に行われるフィナーレコンサートは、正指揮者の原田慶太楼がラヴェルのピアノ協奏曲ト長調(ピアノ:清塚信也)やアルトゥロ・マルケスのダンソン第9番、チャイコフスキーのバレエ組曲“眠りの森の美女”など、リズムやダンスを意識した楽曲を披露するマニアも要チェックのステージだ。その中に芥川也寸志“交響管弦楽のための音楽”も組み込まれているのが日本人作曲家の作品を大切にする原田らしい。
クラシックを初めて聴く、あるいはいきなり王道から行くのはちょっと重いかも、と感じる人には、7月26日の東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の公演が面白いかもしれない。ガーシュウィンとバーンスタインの作品に着目する、アメリカをテーマにしたプログラムだ。また、8月9日の日本フィルハーモニー交響楽団にも要注目。今回取り上げるのは、テレビドラマや映画のサウンドトラックでも知られる菅野祐悟によるサクソフォン協奏曲“Mystic Forest”(サクソフォン:須川展也)。既存のクラシック曲の枠に収まらない新しい作品からオーケストラの魅力を探るのも、フェスティバルならではの楽しみである。
もちろん、王道的なクラシックを聴きたいファンにも、前述した東京交響楽団&ジョナサン・ノットのチャイコフスキーをはじめ、井上道義がベートーヴェンの“田園”と“運命”を振る8月6日の新日本フィルハーモニー交響楽団など興味深い公演がたくさんあるので、詳しくはウェブサイト等でチェックしていただきたい。
さて、7月23日に行われる公演、サマーナイト・ジャズについても触れておこう。かねてからジャズの公演にも力を入れていたミューザ川崎シンフォニーホールは、佐山雅弘がジャズ部門のホールアドバイザーを務めていたが、彼が2018年に逝去して以来、そのポストは空席のままだった。そして今年、約4年半ぶりに就任したのが、ピアニスト・ヴォーカリストであり、作・編曲家でもある宮本貴奈だ。サマーナイト・ジャズは、彼女の就任披露公演として行われ、八神純子、佐藤竹善、エリック・ミヤシロを始め、バラエティに富んだメンバーが集まるスペシャルな公演になりそうだ。アメリカやイギリスで20年に渡り活躍し、国内でもジャンルを超えて幅広い活動を行っている彼女ならではのオリジナルな公演の実現が、今後も期待される。
来年の川崎市制100周年に向けて、〈フェスタサマーミューザKAWASAKI 2023〉は、音楽のまち・かわさきの魅力をさらに広げる起爆剤になりそうである。
LIVE INFORMATION
フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2023
2023年7月22日(土)~2023年8月11日(金・祝)
チケット:Web先行発売2023年4月22日(土)、一般発売2023年4月27日(水)
チケットのお申込み・お問い合わせ:044-520-0200(10:00〜18:00)
主催:川崎市/ミューザ川崎シンフォニーホール(川崎市文化財団グループ)
後援:川崎市教育委員会/公益社団法人 日本オーケストラ連盟/J-WAVE/TBSラジオ
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業)/独立行政法人日本芸術文化振興会
https://www.kawasaki-sym-hall.jp/festa/