多角的な光を纏って変化する新しい表情の歌声

 昨年6月に良質なパワー・ポップをぎっしり詰め込んだ初アルバム『STYLE』を届け、10月にはキャラソン仕事で縁の深い伊藤翼が書き贈ったシングル“キミのとなりで”で会心のアキシブ系高速オーケストラル・ポップをものにするなど、声優業だけでなく音楽活動も絶好調の鬼頭明里。今回のミニ・アルバム『Kaleidoscope』は、それぞれ特定の楽器やサウンドをフィーチャーした楽曲を収録することで、彼女のシンガーとしての顔にさまざまな角度から光を当てた、まさに〈万華鏡〉のような一枚だ。

鬼頭明里 『Kaleidoscope』 ポニーキャニオン(2021)

 流麗な〈ストリングス〉を纏ったバンド・サウンドに乗せて希望に溢れた歌声を響かせる“The One”で幕を開けると、続く〈シンセサイザー〉をフィーチャーした乙女心全開のエレクトロ・ポップ“Follow me!”では、キャラソン寄りのトニカクカワイイ歌唱アプローチを披露。かと思えば、“深夜センチメンタル”ではリズミカルな〈ピアノ〉とスラップ・ベースが躍る、〈夜好性〉路線のクールなアップに挑戦し、彼女特有の膨らみのある低音と抜けのいい高音の合わせ技で魅了する。さらには、過去最高にヘヴィーな〈ギター〉が主役の情熱的な歌声を引き立てるアニメ「出会って5秒でバトル」のオープニング・テーマ“No Continue”、賑やかな〈ブラス〉や鳴り物が開放感を演出する元気いっぱいのスカ・ナンバー“Vivace”と、従来の明るく前向きなイメージも含みつつ、新しい表情の彼女と出会える全5曲。本業の役幅と同様、音楽性も今後さらに広がっていきそうだ。 *北野 創