メランコリーは、メルドーの音楽を彩る重要な要素。この新作の、ワルツに揺れるメランコリーのテーマはラグタイムのように聴こえる。かつてドビュッシーやラヴェルが驚愕した時代のジャズにこのワルツを使って遡り、そして再びクラシック、ジャズそれぞれに固有のマナーに固執することなく、我々の時代の音楽として回帰する。最後のピアノソロに彼の音楽に、もはやそのどちらでもない、あるいはどちらでもあるようなあり方が聴こえる。コープランドのような室内オーケストラの響き、そしてジャズに、アフリカとユダヤのディアスポラを重ねてきた彼らしいメランコリーは、何故か武満徹の“ホゼー・トレス”を彷彿とさせた。