フラダンスを通して培ったオーガニックでナチュラルな感覚
――さらささんといえば、音楽以外でもマルチに活動されているのがすごいですよね。フラダンスについては、お母さんがフラダンスの先生で、小さい頃から触れていたんだとか。現在も続けていらっしゃるとのことですが、フラダンスのカルチャーについて、どんな思いを持っていますか?
「フラダンスは人生の一部になっている感じがします。自分にとって〈ホーム〉のようなイメージですね。
お母さんのフラダンスの先生がハワイのカウアイ島というところに住んでいらっしゃって、その方はずっと代々フラダンスをやられている家系なんです。母や私はその流派を習っています。古典フラなので、山で儀式を行ったり、自分たちの衣装を葉っぱで制作したり、真冬の海で冬至の儀式をしたりします。幼い頃からそういうハワイの伝統的な文化や古典的なものに触れてきたので、自然が好きなことなど、感覚的な部分でとても影響を受けています」
――さらささんの音楽がオーガニックなのは、そういう背景があるからからもしれませんね。
「父親もサーフィンなどの仕事をしている関係で、中学生の頃まで毎年ハワイに1~2か月ほど滞在することがありました。そこは、ハワイのなかでもノース・ショアという田舎のところで、周りにはスーパーと海しかない、車がないと生活できないような場所なんですね。ノース・ショアでは毎日海に行ったり、ご飯を食べたり、という生活を送っていました。
いま考えると、自分のオーガニックでナチュラルな感覚には、そういうことが影響していると思います。フラダンスは本来、自然の神々に捧げる踊りなので、フラダンスを通して自然と触れあってきたことは、影響を受けているつもりはなかったのですが、確実に影響しているんでしょうね」
油絵、写真、古着……音楽以外のマルチな表現
――さらに、美術作家としては油絵を描いているんですよね。
「それには明確なきっかけがあります。2019年に、カウアイ島の先生がヨーロッパ・ツアーをすることになって、それにミュージシャンとして招いていただいたんです。それで、ドイツやスイス、スペイン、オランダ、オーストリアなどを、2週間くらいかけて回りました。
最初に行った国が、ドイツのボーデン湖のエリアだったんですね。ボーデン湖の近くの昔お城だったホテルに泊まっていて、ボーデン湖の周りを散歩したときに、あまりにも湖が綺麗で、映画の『マンマ・ミーア!』に出てきたようなレストランがあるなど、とにかく衝撃的でした。そのときに、〈これを油絵に描けたら最高じゃん〉と思い至って(笑)。もともと美術の大学には通っていたのですが、油絵はやったことなくて、でも前々からやりたい気持ちがあり、ボーデン湖を見たことをきっかけに油絵を始めました」
――どんなタイミングで絵を描くんですか?
「油絵を始めたときは、美大はすでに辞めていたので、私塾のようなところで習い始めたんですね。最初は、それこそボーデン湖を写真で撮った風景を描いていましたが、だんだん抽象画を描くようになりました。
曲を書くよりももっとラフな感じで、書きたいときに書いたり、コロナ禍でいろんな感情が頭のなかをぐるぐるしちゃうときに精神統一的に書いたり。ある種、ヒーリング的な意味合いで絵を描いているのかもしれません。でも、自由に描いています」

――写真はいつ始めたんですか?
「写真にもきっかけがあります。シンガー・ソングライターをやる前から撮るのが好きだったので、Instagramに載せていたんですね。そのタイミングで古着のECショップをはじめて、そこで販売する商品の写真も自分で撮っていました。
あるとき、アルバイトをしようと思って、アパレル系のECのスタートアップ企業の社長さんがTwitterで〈人手が足りない〉とツイートしていたので、DMで〈働きたいです〉と伝えたところ、その社長さんが私のInstagramやそのECショップを見て、〈写真がかわいいから撮ってよ〉と言われたんですね。それで、アルバイトの初日から会社のInstagramの写真を撮り始めました。
働いているうちに、チュッパチャプスのInstagram用の撮影や、PARCOのポップアップ・ショップの撮影の依頼などが来るようになったんです。プロフィールにはフォトグラファーと書かれていますが、写真についてまったく学んでいないので、本当におこがましいというか、恥ずかしいというか……」

――古着屋〈Monum〉についても教えてください。
「先ほども話しましたが、中学生の頃までは毎年ハワイに1~2か月ほど滞在していました。ハワイにはスリフト・ショップという、日本で言うセカンドストリートのような古着や古道具などをなんでも扱うお店があるんですね。そこで私は、子供の頃からおもちゃや洋服、小物などを買っていたんです。スリフト・ショップは日本の古着屋さんとは雰囲気がちがって、安くて個性的なものが多いので、〈これを日本に持って帰ったらみんなハッピーなんじゃない?〉と思い至って(笑)。それで、日本で買ったら高そうな服を自分で仕入れて、少し上乗せして販売するくらいだったら楽しいだろうなと思い、興味本位で始めましたね。
いまは海外に行けないので、ショップについてはストップしています。その代わりに、最近は古着のTシャツを買ってきて、その上にロゴを刷って販売しています。ロゴは〈ブルージ―に生きろ〉から取って、〈LIVE BLUESY〉です」

――そういった音楽以外の活動は、音楽活動に関係していますか?
「曲作りに直接影響している感覚はないのですが、精神的な部分で関わっていると思います。〈やりたい〉とか〈楽しそう〉と思ったらやる、〈やったらいいんじゃないかな〉と思うことはやる、という気持ちでやっているので。
音楽に対してもそう思っていて、大きい目標を掲げるより、〈目の前のことややるべきことを一つ一つやっていこう、それで見えてくるものもあるでしょ〉と考えているので、活動の全体を通した精神性の軸のようなものが見えてきている、というのはあります」