TOWER DOORSが選出したアーティストを猛プッシュする企画〈TOWER DOORS POWER PUSH!!!!〉では、これまでに多種多様なアーティストやコレクティヴ、レーベルなどを取り上げてきました。いまシーンを賑わせているLil Soft Tennisや、昨年〈FUJI ROCK FESTIVAL ROOKIE A GO-GO〉の配信で一躍注目を浴びたMÖSHIが所属するコレクティヴ〈Laastc〉、〈即効性〉が重視される現在の風潮に反旗を翻すレーベル〈makran〉など。そして前回は、クリエイティヴ・チーム〈londog〉を率いてDIYで活動をするアーティスト、a子を特集しました。
今回、新たに選んだのは、さらさです。
神奈川の湘南を拠点に活動するシンガー・ソングライターのさらさ。潮風が香るスムースなR&Bサウンドに、まだ22歳とは思えない成熟した少しハスキーかつ流麗な歌声で、デビュー前からSNSを中心に話題が絶えず、多くの人々を魅了してきた才能です。音楽性だけでなく、彼女が掲げるテーマ〈ブルージ―に生きろ〉が滲み出た歌詞の独特な言い回しや言葉選びも魅力の一つだと言えます。
また、さらさがユニークなのは、音楽だけでなく、幼少期から習っているフラダンスを得意とし、さらに美術作家やフォトグラファーとして幅広くマルチに活躍している点です。古着屋〈Monum(モニュム)〉を立ち上げ、仕入れから運営までをこなしており、ファッション面も注目を集めるなど、その表現者としての多才さや万能さには驚かされます。
そんなさらさは、デビュー・シングル“ネイルの島”を7月に発表したばかり。ガール・イン・レッド(girl in red)やアルフィー・テンプルマン(Alfie Templeman)らを擁するレーベルのASTERI ENTERTAINMENTからのリリースで、ますます話題を呼んでいます。
このインタビューでは、マルチな表現者になった理由や彼女のルーツ、独特のリリシズムなどについて、本人に尋ねてみました。
ディズニー・チャンネルで〈歌〉と出会った
――湘南育ちということですが、幼少期はどんなふうに過ごしていましたか?
「いま考えてみると、そのときは特別なことに感じていなかったのですが、海が近いので学校帰りに海に行ったりとかしていて、当たり前に海と育ってきた感じでした(笑)」
――その土地柄は、現在の音楽性と関係していますか?
「曲作りを始めてから〈あ、すごい影響しているんだな〉と気付いたことがいちばん大きいです。自分のアイデンティティーの大きな部分に生まれた土地とかが影響しているとは、あまり思っていなかったんですね。でも、無意識に出てしまうし、曲についての周りの方からの感想でも〈海っぽいね〉と言われることが多いので、影響しているんだと思います」
――自覚的に音楽を聴き始めた時期や、それがどんなアーティスト、作品だったのかを教えてください。
「たしか幼稚園生か小学校低学年のときに、初めて買ったCDが『シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ』(のサウンドトラック)だったと思います。『アンパンマン』みたいな子供向け番組は観ず、ディズニー・チャンネルを観て育ちました。そのなかでも『ハンナ・モンタナ』とか『ハイスクール・ミュージカル』とかの曲を聴いて歌っていたので、海外の曲がとても好きだったんですね。
R&Bが好きだと気付いたのは、中学生くらいのときです。ストリート・ジャズ・ダンスをやっていて、ラベル(Labelle)の“Lady Marmalade”を使って踊ったのをきっかけに、〈あたしが好きなの、こういう曲だ〉と気付いたんです。それで〈これってどういうジャンルなんだろう〉って、Yahoo!知恵袋とかを使って調べてました(笑)」
――そこからどのように掘り下げていったのでしょうか?
「YouTubeを見たりとか、アーティストについて調べたりとかして。
あと高校では軽音部に入っていて、部活のパソコンにいろんな音源や映像が入っていたので、そこでR&Bを含めていろんなジャンルの音楽を探りました。洋楽しか入っていなかったんですけど、楽曲数がかなりあって、昔のアーティストはだいたい入っていたと思います。ジャズ、R&B、ファンクももちろんですが、ディープ・パープルやジョニー・ウィンターなんかもありました。ジャンル関係なく、顧問がいいと思ったものを入れていたのでしょうね」