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SACDは2.0chステレオで聴く『ロンバケ』として史上最強

今回のSACDは、シングル・レイヤー。ハイブリッド盤のSACDとは違って、通常のCDプレイヤーでは再生することができない。SACDを再生できるプレイヤーがあってこそ、DSDに変換された高音質を楽しむことができるディスクになっている。音源はステレオ1種類の収録で、前述の40周年VOXで聴かれたのと同じ、2021年の最新リマスターが採用されている。 

今回は同じプレイヤーを使って、40周年VOX入っているCDと、SACDを聴き比べてみた。すると40周年ボックスのCDは、CDの音質としては十分な魅力を備えていることが、あらためてよく伝わってくる。すでにBlu-rayでのハイレゾを愛聴しているので、それに比べると音像は多少、窮屈な感はある。しかし、CDとして聴くには十分にフレッシュなサウンド。20周年や30周年のリマスターを経て、制作側の一層の力の入れようが伝わる音響になっている。

だがしかし、続いてSACDを聴いてみると、やはり違うのだ。音の広がりが。音のツヤが。その奥行きの深さが。 

アルバムのオープニング、スタジオでのチューニングの様子を伝えるピアノの単音から、まるで違う。滑らかで、気品があって、その後の展開に思わず身を乗り出してしまうようなピアノの単音。 

実際のところ、“君は天然色”に始まるアルバムは、サウンドのステージがCDよりもグンと広くなっている。小ぶりなサイズのテレビから大画面のテレビに買い換えた時のような違い。それをじかに体験することができる。 

『A LONG VACATION』収録曲“君は天然色”

今年の3月に40周年VOXが出されるまで、『ロンバケ』はサラウンド・ミックスが作られることがなかった。つまり、今までは2.0chのステレオで聴くのが『ロンバケ』だったわけで。2.0ch CDのステレオで聴く『ロンバケ』としては史上最強。それが実現されているのが、今回のSACDだと思える。 

 

聴き比べも楽しい『ロンバケ』のSACD

2005年頃からしばらくは、ソニーが開発したSACDと、ワーナーが開発したDVDオーディオと、2種類の高音質盤が出された。どちらにもそれぞれの魅力があり、僕は今でもその両方を愛聴している。 

今回の『ロンバケ』40周年がスゴイのは、Blu-rayオーディオとSACDの聴き比べを、1枚のアルバムで可能にしてしまったことにもある。まさに前代未聞。今日はBlu-rayでの晴れやかなサウンドで聴くか。今日はSACDのカチッとタイトな音響を楽しむか。リリースから40年を経た今もなお新しい音楽体験を可能にしてくれる――そういう意味でも意義の深い、『ロンバケ』のSACDのリリースだ。

 


RELEASE INFORMATION

大滝詠一 『A LONG VACATION 40th Anniversary Edition(SACD)』 ナイアガラ(2021)

リリース日:2021年8月4日
品番:SRGL-1000
仕様:SACD 1枚組/シングル・レイヤー1層
価格:5,900円(税込)
初回仕様限定:ナンバリングシール付スペシャル・スリーヴ仕様
Super Audio CDのために新たなマスターテープからリマスターされた2021年版最新音源を使用

TRACKLIST
1. 君は天然色
2. Velvet Motel
3. カナリア諸島にて
4. Pap-pi-doo-bi-doo-ba物語
5. 我が心のピンボール
6. 雨のウェンズデイ
7. スピーチ・バルーン
8. 恋するカレン
9. FUN×4
10. さらばシベリア鉄道