リリースから40周年を迎え、〈40th Anniversary Edition〉としてよみがえった大滝詠一さんの名盤『A LONG VACATION』(81年)。CD、LP、そして豪華な〈VOX〉がリリースされ、さらにナイアガラ時代の全作品がストリーミング・サーヴィスで解禁されるなど、いつまでも色あせない大滝さんの音楽と『ロンバケ』は、2021年のいまも人々の心を掴んで放しません。
〈CITY POP Voyage〉キャンペーンを開催中のタワーレコードとアナログ専門店〈TOWER VINYL SHINJUKU〉も、『A LONG VACATION 40th Anniversary Edition』を大々的に展開してプッシュしています。同店の連載であるこの〈TOWER VINYL太鼓盤!〉では、前回に続いて『ロンバケ』を大特集。今回は、再発アナログ盤(1LP)、VOX所収の45回転盤(2LP)、そして83年のマスター・サウンド盤という3つをTOWER VINYL自慢のサウンド・システムで聴き比べながら、タワーレコード新宿店のスタッフたちとともに、『ロンバケ』について語り合いました。
なお、『A LONG VACATION 40th Anniversary Edition』のアナログ盤と『A LONG VACATION VOX』は人気商品のため売り切れ続出中。在庫については、各店舗にお問い合わせください。
大滝詠一 『A LONG VACATION 40th Anniversary Edition』 ナイアガラ(2021)
3つのアナログで聴く“君は天然色”
――今回は『A LONG VACATION 40th Anniversary Edition』をアナログで聴きながら、タワーレコード新宿店スタッフのみなさんと『ロンバケ』についてわいわい語り合えればと思っています。まずは1LP盤で、A面1曲目、説明不要の名曲“君は天然色”から。……イントロのチューニングとカウントからして、かなりすっきりした、クリアな音像であることが感じられますね。ベルの音もはっきり聴こえてきます。
田中学(新宿店9F)「全然ちがいますね! 『ロンバケ』って、音を重ねに重ねているアルバムじゃないですか。なので、リマスター盤のほうがそれを感じられますね」
村越辰哉(新宿店副店長)「1LP盤のカッティングは、ロンドン・メトロポリス・スタジオのティム・ヤング。ビートルズの『Love』(2008年)でグラミー賞を受賞したという、最高峰のエンジニアの方なんですね」
――彼は引退していたのですが、〈『A LONG VACATION』の作業ならしてもいい〉と引き受けたのだとか! また今回のリマスター盤では、大滝さんのヴォーカルを前に出しているそうです。しかもオケを引っ込めることなく、全体的な音圧を上げつつも、さらにその前にヴォーカルを出すようなイメージの音像を目指したといいます。
田中「なるほど。では、禁断の45回転盤を聴いてみましょうか……」
――おお……。低音がヘヴィーで、かなりパンチがある。音圧の高さがすごいですね。
田中「ベースが前に出ていますね。特に、スラップ奏法のときにそう感じます。レッド・ツェッペリンみたいなドコドコと叩くドラムの迫力がすごい!」
村越「ラウドですね! いい音だと思います」
田中「“君は天然色”はAメロ、Bメロ、サビで、ドラムのリズム・パターンがちがいますよね。そのことがガツっと感じられます」
塩谷邦夫(TOWER VINYL)「“君は天然色”だけでなく、『ロンバケ』はほとんどの曲でドラムのリズムが変わりますからね」
――リズムが豊かなアルバムなので、ボトムがパワフルな45回転盤で聴くとより楽しめると。
塩谷「でも、ウォール・オブ・サウンド的な音の一体感はある。リマスター盤は分離がよくなったというよりも、場面場面で主役の楽器の音が〈ここは俺の出番だ!〉と前に出てくる印象です。“君は天然色”にたくさん入っている効果音に、それが顕著ですんw。45回転は、さらに音が太く厚く感じられます」
田中「音溝が深いですから、重さがどすんときますし、音の〈団子感〉が強い。それに比べて、33回転盤は軽めの仕上がりです」
松本創太(新宿店8F)「45回転盤は鑑賞用で、33回転盤はデイリー・ユースというか、BGMとしても聴ける感じでしょうか」
――田中さんが持ってきてくださった、83年のマスター・サウンド盤も聴いてみましょう。リマスター盤よりもわもわとした音像で、音の塊感が強いですね。
田中「これはこれで太い音ですね」
塩谷「音が一体化していて、これぞ『ロンバケ』という感じがします」
松本「これもまた、大滝さんが思い描いていた音なのかも」