日本のポップ史における金字塔。あるいは、不朽の名作。どんな言葉もこのアルバムの前では色あせてしまう――大滝詠一の名盤『A LONG VACATION』(81年)は、そんな作品です。

本作が2021年3月21日、リリースから40周年を迎え、〈40th Anniversary Edition〉としてCDとLP、豪華な〈VOX〉がリリースされました。さらにはナイアガラ時代の作品がストリーミング・サーヴィスで解禁されるなど、音楽シーンは大滝詠一の話題でもちきり。いま全世代、全世界のリスナーの心の中をBREEZEが通り抜けているはず。

〈CITY POP Voyage〉キャンペーンを開催中のタワーレコードとアナログ専門店〈TOWER VINYL SHINJUKU〉も、これにあわせて『A LONG VACATION』を大プッシュ中。そこで今回は、タワーレコード新宿店/TOWER VINYL SHINJUKUのスタッフ4人が心の中にある『ロンバケ』について綴りました。それぞれの〈私とロンバケ〉を、ぜひお楽しみください(なお、『A LONG VACATION 40th Anniversary Edition』および『A LONG VACATION VOX』は人気商品ですので、在庫については各店舗へお問い合わせを!)。 *Mikiki編集部

★連載〈TOWER VINYL太鼓盤!〉の記事一覧はこちら

大滝詠一 『A LONG VACATION 40th Anniversary Edition』 ナイアガラ(2021)

大滝詠一 『A LONG VACATION VOX』 ナイアガラ(2021)

 

矢藤一夫(TOWER VINYL)とロンバケ

音楽との出会いは面白い。
ずっと気になっていた曲に再会したときも、そのまま入手するか、また縁があったらと一度お別れするか。

『ロンバケ』とは高校生の時に出会った。
職員室にLPが飾られていた。同級生が誰かに貸すために持ってきて、それが先生に見つかって没収されたのだ。
返してもらった友人は、貸そうかと言ってくれたが、当時シャーデーやスタイル・カウンシルを聴いてUKかぶれを気取っていた僕はやんわりと断った。密かなお別れだ。
数年後、TV CMでかかった稲垣潤一さんが歌う“バチェラー・ガール”が気になり、大滝さんの作品だと知る。物欲が急遽発生。
そこから、『EACH TIME』を買って、すぐさま『ロンバケ』に遡るまで、さほど時間はかからなかった。

稲垣潤一の86年作『REALISTIC』収録曲“バチェラー・ガール”。作詞は松本隆、作曲は大瀧詠一。大滝詠一ヴァージョンはシングルとして発表されたのち、86年作『Complete EACH TIME』と89年以降の『EACH TIME』に収録された

『ロンバケ』を見かけて自宅で聴くまでに約5年。
そこから数十年が経ち、いまや何種類も『ロンバケ』を所有するおじさんになってしまった。
だから音楽との出会いは面白い。

 

塩谷邦夫(TOWER VINYL)とロンバケ

僕の場合、『ロンバケ』というよりまずは〈天然色〉がやってきた。それもFMではなくテレビから流れてきた。ということは、あの象徴的なイントロを聴く前に、歌い出しもしくはいきなりサビを聴いていたということか……。さらに、アルバムを通して聴くまでには少し時間がある。おそらく夏だと思う。姉がレンタル・レコードで借りてきたんだ。カセットにおとして聴いた。シングル曲が全部並んでいるような贅沢感があって、とくに最後の〈シベリア鉄道〉を待っていた記憶がある。少し経って中学に入り、音楽好きの友達が出来た。きっかけはYMO。皆首ったけだったな。そして、遂にその瞬間が訪れた。その友達は言うんだ。〈ホソノとオータキがいたはっぴいえんどが……〉。え、なになに? 自分の大好きな二人はかつて同じバンドにいたのか……。ネットで検索、なんてことがなかったあの頃。ラジオのチューニングや友達との情報交換ってほんと大事でした。

『A LONG VACATION 40th Anniversary Edition』収録曲“君は天然色”

『A LONG VACATION 40th Anniversary Edition』収録曲“さらばシベリア鉄道”