音楽を聴く環境や方法が多様化し、〈音質〉に注目が集まっている昨今。タワーレコードが音楽ラヴァーのみなさまにおすすめしているのが、高品質なSACDを聴く体験です(SACDを特集したタワーレコード オンラインのページはこちら)。この連載〈SACDで聴く名盤〉では、そんなSACDの魅力や楽しみ方をお伝えしています。
第2回に取り上げるのは、大滝詠一さんの不朽の名作『A LONG VACATION』(81年)です。大滝さんの歌とメロディーとサウンド、松本隆さんの歌詞、そして永井博さんのイラストが作り上げた音楽世界は、いつまでも色褪せない魅力を放っています。発売時の大ヒットもさることながら、2020年までに累計300万枚以上のセールスを記録するなど、40年間常に音楽シーンの中心で燦然と輝いてきた名盤――それが『A LONG VACATION』です。
2021年3月には発売40周年を記念して〈40th Anniversary Edition〉がリリースされたことで大いに盛り上がり、世は『ロンバケ』一色に染まりました。この夏のサウンドトラックだった、という方も多いでしょう。
そんな『ロンバケ』の〈40th Anniversary Edition〉が、このたび待望のSACD化。CDよりもぐっと高解像度になった音で『ロンバケ』を楽しめるようになり、Sony Musicが国内でリリースしたシングル・レイヤー1層のSACDとしては歴代1位の初回出荷枚数になるなど、異例のヒットを記録しています。そこで、ここでは音楽評論家の宮子和眞さんにSACDで聴く『A LONG VACATION 40th Anniversary Edition』の魅力について綴っていただきました。 *Mikiki編集部
〈ロンバケに包まれる幸せ〉を実現した5.1chサラウンド
今年の3月の末に、5.1chサラウンドを聴く時に使うセンター・スピーカーとリア・スピーカーを買い換えた。大滝詠一『A LONG VACATION』の40周年VOXに搭載された5.1chサラウンドに感激して、これはもっと良い音で聴かなければ、と思ったからだ。
いちばん感銘を受けたのは、『ロンバケ』への深い理解に満ちたサラウンドが、そこでお披露目されたこと。モノーラルっぽい“君は天然色”に始まり、2曲目以降は音の彩りが増していって、ラストにいちばんドラマチックな“さらばシベリア鉄道”が控える。長年夢に見た〈『ロンバケ』に包まれる幸せ〉が実現されたのだから、多少の投資は全然痛くなかったと今も思っている。
その40周年VOXの中で告知されていたのが、今度は『ロンバケ』の初めてのSACDがリリースされる、ということだった。いま実際にそのSACDを手にして新しい感慨が湧き上がっているので、それについて書いていくことにしよう。