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最新アルバム『ニガミ17才o』からの2曲、“こいつらあいてる”と“幽霊であるし”では、岩下のサンプラーとギターを交互に持ち替える視覚的にも惹きつける演奏を軸に、卓越した存在感に圧倒されるイザキのベース・パフォーマンス、ニガミ17才の象徴のひとつとも言えるあくびの特徴的なコーラスが加わり、それぞれがそれぞれにしか出せない音を自由に発していく。しかし、この空間ではそれら自由な音によるグルーヴはクールにまとまり、会場全体に浸透していく世界観がとても美しい。バンドのテーマである〈おしゃれ且つ変態な楽曲〉を特に体感できる2曲だった。

“幽霊であるし”が終わり、次曲のカウントが始まるも、岩下が〈ちょっと待って用意できてない〉と演奏に入れず。改めて岩下がカウントするも、今度はサポート・メンバーのkyonが〈ちょっと待ってください、準備が……〉と言い出し、珍しく〈失敗かな?〉と思ったところで、示し合わせたように全員でのカウント・イン。アレンジされた“湯きり少女とイクツかの妄想”が急にスタートする。そこでこの〈失敗かな?〉と思わせることこそが、観客をハッとさせるための演出だったことに気付かされた。ハプニングをも装い、演出の一環としてステージが作られているのが実にニガミ17才らしい。実は本公演のハイライトへの布石だったことが後で分かる。

続く人気曲“化けるレコード”では、岩下がMy懐中電灯を客席やメンバーへと向けていくパフォーマンス。岩下の独特なワード・センスが光る矢継ぎ早なヴォーカルとサウンドが合わさり、またしても壮麗な世界観を作り上げていく。客席に向かって〈ほら狂い足りない そう日本語が足りない〉と言い放つさまは、まるで先生が生徒に〈もっと狂え〉と煽っているような光景だった。

本編ラストは、岩下が途中で〈あと15分やります〉と語った“かわきもの”。こちらは8分の5拍子で、ライブで大化けする楽曲。フリー・ジャズのように、どこまでが計算でどこまでがアドリブか分からない展開を見せていくが、それも4人の類まれなる演奏技術があってこそ。演奏が途中でブレイクすると、〈休憩を間奏としてお楽しみください〉と岩下。オーディエンスに〈ニガミのライブに初めて来た人〉と訊くと、半数以上の観客が手を挙げる。そんな観客に向けて岩下が“かわきもの”が5拍子でノリにくい曲であること、そんな曲でも好きに踊ってくれたらいいということ、音楽に正解・不正解はないことなどを語る。

演奏が再開すると、またしても不思議なリズムのセクションに突入。岩下の掛け声に合わせてメンバーは即興で曲を作り上げていき、〈このようにしてニガミ17才は曲作りをしています〉〈音楽は誰でもできます、みなさんも好きなようにやってみてください〉と語ってのける。

〈オン・エキサイティングピッチングフォーム 平沢あくび!〉〈オン・ビューティーアンチエイジング イザキタツル!〉などとメンバーを自由に紹介すると、今度は楽曲をヒップホップ調に変えて即興ラップ。お次は岩下曰く〈一番変態と言われる音楽ジャンル〉である演歌に変えて〈ラッセーラー ラッセーラー〉と熱唱。そしてボサノヴァに変えて〈祭りだ 祭りだ〉と歌い上げる。

その後、岩下は音楽に対する思いを語り、〈これからも音楽をよろしくお願いします〉と締めくくった。本当に15分近く続いた“かわきもの”に対してオーディエンスは大拍手を送り、メンバーは舞台を後にした。

鳴りやまない拍手でニガミ17才がステージへと戻ると、この対バン企画〈ニガミ17才と〉の趣旨や、アンコールでは必ず対バン相手の楽曲を混ぜたメドレーを披露していることを説明。ステージ後方の巨大モニターと観客の手元にある謎の歌詞カードを使ってメドレーの説明を行う。しかし打首獄門同好会の楽曲も繋げたあまりにもめちゃくちゃなメドレーに、説明しながら思わず自分でも笑ってしまう岩下。〈今からやる曲は気持ち良くない曲になります。成功率は20%くらい〉と言い切ってしまう。

そうして8分にも及ぶ大メドレー“ニガミ17才と学 ver.打首獄門同好会”が始まると、怒涛の展開を見せていく。あまりに面白すぎる曲の繋ぎに、観客もマスクの下は笑みがこぼれていたはずだ。

成功率20%の楽曲を無事やり遂げると、客席からはまたしても大拍手が沸き起こり、メンバーは一礼をしてステージを去っていく。

するとライブの興奮も冷めやらぬうちに、巨大モニターには特報映像が。次回の〈ニガミ17才と〉はなんと〈サンリオピューロランドと〉。さらに2021年9月15日には新曲“HEELS”をリリース、17日には同曲のMVを公開とのこと。またしても客席からは大拍手が沸き起こる。常に衝撃をもたらすバンド、ニガミ17才の快進撃はコロナ禍であっても留まるところを知らない。そんなことを証明したようなライブだった。


SETLIST

打首獄門同好会
1. 新型コロナウイルスが憎い
2. 足の筋肉の衰えヤバイ
3. 筋肉マイフレンド
4. なつのうた
5. はたらきたくない
6. 猫の惑星
7. カンガルーはどこに行ったのか
8. シュフノミチ
9. きのこたけのこ戦争
10. 島国DNA
11. 日本の米は世界一

ニガミ17才
1. A
2. おいしい水
3. ただし、BGM
4. ねこ子
5. こいつらあいてる
6. 幽霊であるし
7. 湯きり少女とイクツかの妄想
8. 化けるレコード
9. かわきもの

en. ニガミ17才と学 ver.打首獄門同好会

 


INFORMATION

ニガミ17才 “HEELS”
2021年9月15日(金)リリース
各サブスクリプション・音楽配信サービスにて配信

「ニガミ17 才と vol.🍎」
in サンリオピューロランド

2021年10⽉17⽇(⽇)サンリオピューロランド エンターテイメントホール
開場/開演:12:30/13:00(一部)、15:00/15:30(二部)
料金:7,800円(税込、サンリオピューロランド⼊場券込み)
プレオーダー1次(抽選)
2021年9⽉12⽇(⽇)23:59まで
https://eplus.jp/nigami17_pl/
プレオーダー2次(抽選)
2021年9⽉16⽇(⽊)10:00〜9⽉21⽇(⽕)23:59
⼀般発売(先着)
2021年10⽉1⽇(⾦)10:00〜