
SMTKをはじめとした様々なバンド、ユニットに所属し、ジャズとロックをクロスオーヴァーさせるギタリスト、細井徳太郎が初のソロ作品『スカートになって』を完成させた。ジミ・ヘンドリックスに憧れてギターを始め、上京してからは新宿のPIT INNで働きながら様々なジャズを追求し、現在は即興/ノイズのシーンでも活躍する細井だが、ソロでは作詞作曲・ヴォーカルを担当し、ポップス的な作風も展開しているのが新鮮だ。
そこで今回はかねてより細井と交流があり、『スカートになって』の制作にも深く関わっている君島大空と石若駿を迎えて、3人での鼎談を行った。本作には即興ノイズ発生団体〈秘密基地〉でともに活動する高橋佑成(キーボード/シンセサイザー)、トリオ〈泥砂に金〉でともに活動する瀬尾高志(ウッドベース)、SMTKでともに活動するマーティ・ホロベック(エレキベース/シンセベース)も主要メンバーとして参加していて、ジャズを軸に素晴らしい才能が混ざり合い、刺激し合っているシーンの現状を改めて伝える作品でもあると言っていいだろう。そのうえで、細井の特異性を伝える意味では、君島が取材の最後にポロッと口にした「ジャズ・ギタリストのソロ・アルバムだと思って、間違えて聴いてほしい」という言葉をつけ足しておこう。

3人の出会い
――細井くんと石若くんは細井くんが新宿のPIT INNでバイトをしていたときに出会ったとSMTKのインタビューなどで話されていますが、細井くんと君島くんはいつ頃どうやって出会っているのでしょうか?
細井徳太郎「僕と君島氏が出会ったのもPIT INNです。2018年に駿の3デイズがあって(2018年10月26日~28日に行われた〈石若 駿3DAYS 6公演〉)、君島、岡田(拓郎)さん、優河さん、シュウタメン(西田修大)とやってたのを観て、すごくいいなって。俺はその時スピッツを感じたんだけど」
君島大空「初めて言われた(笑)」
細井「〈この声好きだわ〉と思って、その場でデモを買って、仲良くなってからそれにサインをもらいました(笑)」
君島「同じ日に徳ちゃんは〈SONGBOOK〉(石若、西田、角銅真実によるプロジェクト)のバンド・セットに出てて、エレキがシュウタメンと徳ちゃんだったんですけど、そこで初めて徳ちゃんがプレイしているのを観て、〈ヤバいやついるなあ〉と思いました。プレイが狂気に満ちてたんですよ(笑)。で、終わってからちょっと話したら、めちゃくちゃ優男だったっていうのが怖すぎて、〈こんな人いるんだ〉って思ったのを強烈に覚えてます。ギターを持つとホントに変わっちゃう人だなって、その印象は今も変わらないかも。最初は〈ジャズ・ギタリスト〉って紹介されたけど、〈こんなロックなギターを弾くやつは他に知らないな〉って思いますね」
――石若くんは細井くんのギタリストとして、音楽家としての魅力を特にどんな部分に感じていますか?
石若駿「共通点として、根底にはジャズがあって、でも世界中にはいろんなジャズがあるから、好きな部分が共通する人はそんなに多くない中、徳ちゃんとは好きなものが結構一緒で、しかも同い年なので、最初から馬が合うなと思いました。一緒に演奏をしてても、好きなものを共有してると話が早いというか、僕が出した音に対して、すぐそれに似合う音を出してくれるんですよね」
――2人は日本のジャズで共有している部分が多いという話だったと思うんですけど、具体的にはどんな名前が挙がりますか?
石若「山下洋輔トリオ、富樫雅彦さん、プーさん(菊地雅章)とか。徳ちゃんはPIT INNのバイト時代にそういう音楽にまみれて過ごしていたと思うし、僕も日本のジャズのことを考えて音楽をするようになった時に、そのあたりをたくさん勉強したのもあって。もちろん、日本のジャズだけじゃなくて、例えば、ポール・モチアンの話もよくするし、お互いその辺が好きなんだなっていうのが、話をしなくても音で分かる、みたいな」
細井「付け加えると、日本のジャズだけじゃなくて、日本のロックも似たようなのが好きで。夏に一緒に花火をしたときに、フジファブリックを大音量で流して合唱したり(笑)」
――ジャズが根底にありつつ、それ以外の話も幅広くできるからこそ、馬が合ったという部分もあるでしょうね。ちなみに、最初に西田くんの名前が挙がりましたが、人脈的にも近いところにいるし、わりと王道のロックから入って、ジャズを吸収して、今では幅広いプレイ・スタイルを持っているという意味で、細井くんと西田くんには通じる部分もあるのかなと思うのですが、細井くん自身はどう感じていますか?
細井「変な音を出したり、目立つことをしたり、面白いアプローチをするっていう部分では共通するところもあると思うんですけど、根幹の部分は違いがあって、それぞれのベクトルを突き進んでるのかなって。ギタリスト同士ってわりとバチバチしがちだと思うんですけど、君島氏とシュウタメンに対しては〈いいなあ〉と純粋に思います」
君島「印象に残ってるのが、さっきも言った駿さんの3デイズのときに、徳ちゃんと西田でソロの掛け合いをしてたんですよ。当たり前といえば当たり前なんだけど、そのとき考え方の違いみたいなのがそれぞれのソロにすごく出てたんですよね。それまで僕の周りにはジャズ・ギタリストの友達ってあんまりいなくて、同年代となるとさらに少ないという中で、徳ちゃんは〈めちゃめちゃカート(・ローゼンウィンケル)みたいなフレーズ弾いてるな〉と思って新鮮だったし、西田はもっとフリーキーなロック・ヴァイブスで行ってて、全然違うけどいい2人だなと思ったのはすごく覚えてて。好きな機材は結構似てる気がするんです。でも材料は一緒なんだけど、全然違うものを作る2人、みたいな」
――ちなみに、細井くんが使ってるグヤトーンは君島くんにオススメされて買ったとか?
君島「そうです。徳ちゃんが〈ソリッド・ギターが欲しい〉と言ってたのを聞いてて、そうしたら僕の地元の方にある楽器屋さんにグヤトーンのテレキャスが売ってたので、徳ちゃん絶対こういう変なの好きだろうなって。それ、めちゃくちゃ安かったんですよ」
細井「3万円で売ってて、前のギターを下取りに出したから、1万5千円で買いました(笑)」
――でもそれが今もメイン・ギターのひとつなんですよね。
君島「徳ちゃん、毎回ライブに違う竿を持ってきたりするじゃん? 自然にやってるんだと思うけど、何を使うかってどんどんシビアになっていくところだと思うので、それができるのは案外すごいなあと思ったりもします。もちろん、こだわりはあるんだけど、その日の気分で服を選ぶような気軽さで、竿を選んでるんだろうなって。そもそも普通だったらグヤトーンは買わないと思うし(笑)、そういうところも素敵だなあと思います」
27歳までにギタリストとしてどこかに到達しないといけないんじゃないか
――そんな細井くんが初のソロ作『スカートになって』を発表するわけですが、ソロ作の構想はいつ頃からあったのでしょうか?
細井「コロナ禍になって、みんな仕事がバンバン飛んだりして……(2020年)5月とか6月くらいだったかな? 駿に〈こんな曲書いたよ〉というのを携帯で録って送って、駿も駿で作った曲を送ってくれて、そういうやりとりが何回かあった中で、駿が〈これを徳ちゃんに歌ってもらおうと思う〉って、“したっけ”を書いてくれて。で、〈駿がこんないい曲を書いてくれたから、俺も書こう〉と思って、“スカートになって”を“したっけ”に対するアンサー・ソング的な感じで書いて。この2曲を駿の家で宅録したときに、駿が〈せっかくだしEPとかにしようよ〉と話をしてくれて、〈やるか〉ってなったんです。〈コロナ禍で1年を無駄にしちゃった〉じゃなくて、〈僕たちにはこんないい思い出がある〉というものを残したいと思って、それで作品にすることにしました」
――じゃあ、もともと以前からソロの構想があったわけではなくて、言ってみれば、コロナ禍での石若くんとのやりとりから偶発的に生まれたものだと。
細井「はい。こう言うと申し訳ないですけど、もともとソロでやるっていうのは考えてなかったです」
石若「でも去年ライブが少なくなった中で、徳ちゃんはそれでも曲作りやライブをできる限りやっていこうとしているように見えて、気付いたら〈ライブで歌ってるな〉と思って。その頃キミ(君島)とも密に連絡を取ってたと思うから、歌い始めたのはキミの影響もあるのかなって俺は感じてた。あと〈俺は次の誕生日までに何かを残す〉と言ってた気がする」
細井「あー、27歳から28歳になるってやつでしょ?」
君島「ジミヘンの話?」
細井「そうそう。27歳までにギタリストとしてどこかに到達しないといけないんじゃないかという強迫観念があって(笑)」
――ジミヘンは細井くんの一番のルーツなんですよね。
細井「そうです。僕のアイドルです」
――彼が亡くなった27歳までに、何かひとつ形にしようと。
細井「結局今年の1月で28歳になっちゃったから、〈越えちゃった〉と思いつつ、2月末くらいにレコーディングをしました。内容もギタリストギタリストしたものでは全然ないんですけどね」
――さっきの石若くんの話に戻すと、歌い始めたきっかけは君島くんだったりするんですか?
細井「最初に話した駿の3デイズの少し後に下北沢THREEで君島氏のワンマン・ライブを観たんですけど、その前後に〈エフェクターを見せ合おう〉って話をして、一緒にスタジオに入り、その後に君島氏とシュウタメンと下北沢APOLLOに内橋(和久)さんを観に行って」
君島「そうだ。(山本)達久さんとのやつ」
細井「そこでAPOLLOの美浦さんとも仲良くなって、APOLLOで君島氏と何かやりたいと思い、〈実験室〉というタイトルでデュオをやったんですけど、そのとき君島氏が〈徳ちゃんも歌ったら?〉と言ってくれて。それで歌い始めて、そこに瀬尾さんも入り、〈泥砂に金〉というトリオが始まったんです。なので、君島大空さんへの憧れから歌い始めた説もある(笑)」
君島「すごく印象的だったのが、SMTKに“ホコリヲハイタラ”という曲があって、メロは(松丸)契ちゃんがサックスで吹いてるんですけど、いい曲だなと思ってたら、徳ちゃんが書いた曲で、しかも〈あれ実は歌詞があるんだよ〉と言ってたのに僕はすごくときめいてしまって。〈いつか歌う気でいるんじゃないか?〉って、嬉しかったのを覚えてます」
細井「歌う気があったというよりは、俺の書いた曲には大体歌詞があるんです。メロは鼻歌で生まれるから、ゴニョゴニョ歌いながら曲を作って、一応その歌詞もメモってあるんだけど、でもみんなにはメロディーだけ渡してて」
君島「なるほど。その歌詞は徳ちゃんしか知らないんだ」
石若「佑成のやつで角さん(角銅真実)が“ホコリヲハイタラ”歌ってるよね?」
細井「そうそう、秘密基地では角さんが歌ってくれてます」
――じゃあ、やっぱり〈歌〉への意欲は以前からあったと言ってもいいかもしれないですね。
細井「そうですね。それこそジミヘンも歌ってるし、ジョン・フルシアンテがレッチリのライブだとか細い声でコーラスしてるのとかもめちゃめちゃ好きで、SMTKでコーラスをやってみたいとも思ってたから、声で表現したい気持ちはずっとあったんだと思います」

いつも褒め合っている
――“スカートになって”と“したっけ”が起点になって、そこから他の曲も作っていくうちに作品としての全体像が見えてきたわけですか?
細井「2曲だけだと勿体ないなと思ったときに、さっきも言った通り、僕の曲には80%くらい歌詞がついているので、基本的には昔書いた曲を引っ張り出してきて、自分で歌い、結果7曲になった感じです」
――“スカートになって”と“したっけ”は比較的シンプルなアレンジで、〈歌〉の印象が強いです。
細井「非常に申し上げにくいですけど、この2曲はほとんどデモというか、ギターはデモの時に入れた音がほとんどそのまま残っていて、そこに生のドラムとベースとシンセを入れてもらって。歌は歌い直したんですけど、アレンジ自体はほぼデモのときのまんまです。“したっけ”は駿の最初のデモの段階で〈もうこれ完成してるな〉って感じで駿の作曲アレンジ能力に驚きました」
――もともと石若くんは“したっけ”をどんなイメージで書いたのでしょうか?
石若「曲を作ってて、〈これ徳ちゃんじゃね?〉と思って、パッと送ったら、徳ちゃんから“スカートになって”が送られてきたので、それを家で録りました。ホントに直感なんですけど、曲の醸し出す雰囲気みたいなものが徳ちゃんっぽいと思ったんですよね。僕は曲を作ってて、〈これは歌詞が乗るな〉と思ったときは、毎回〈誰が歌うのがいいかな?〉と考えるんですけど、“したっけ”は徳ちゃんにピッタリなんじゃないかなって」
――歌そのものに関しては、細井くんの中ではどんなイメージがあったのでしょうか? 最初の方でスピッツやフジファブリックの名前が出ていて、もちろん全然違うんだけど、ああいう日本のバンドにも通じる雰囲気はあると思いました。
細井「自分の中では一貫してるつもりなんですけど、実際に録音したものを聴いてみると、わりと着せ替え人形みたいになってるというか、1曲1曲イメージが違う感じにはなりましたね。具体的に言うと、1曲目の“スカートになって”はthe pillowsみたいな感じ。2曲目の“八月の光”は一緒に歌ってることもあって、めちゃめちゃ君島氏から影響を受けてます」
――最初に作った2曲以外は昔の曲を引っ張り出してきたとのことですが、“八月の光”はいつ頃書いた曲なのでしょうか?
細井「まだ僕が群馬にいた頃に書いた曲です。大学でアメリカ文学を勉強していて、ウィリアム・フォークナーの『八月の光』がめちゃくちゃ好きなので、それに対して曲を作ろうと思って。なので、〈リーナ・グローヴ・サイド〉と〈ジョー・クリスマス・サイド〉に分けて、君島氏がリーナ、俺がジョーで、歌詞がふたつあるんです(※リーナとジョーはそれぞれ「八月の光」の登場人物)。この曲は外山明さんと、ニラン・ダシカ、栗田妙子さんとのバンド(Around Trio)でよくやってて、トランペットとピアノのメロディーを俺と君島氏が歌ってます。で、泥砂に金でもこの曲をやり始めて、せっかくだから録音したいなって」
――2か所出てくるギター・ソロも素晴らしいです。
君島「1回目が徳ちゃんで、2回目が僕ですね。徳ちゃんのソロがめちゃくちゃよくて、魔法がかかってる感じ」
細井「それはあなたよ、君島さん。ラストにかけてやばソロが聴けます」
君島「いつもこういう褒め合いをしてます(笑)」
――あはは。前半の細井くんのソロはエフェクティヴで、音の変化が面白い。
君島「僕は逆にレコーディングのときはエフェクティヴに行かないんですよね。割とアン直(アンプに直接ギターを繋ぐ)っぽい音の方が好きというか、今回のギターも全部そうかもしれない。ヴォリューム・ペダルとオーヴァードライヴと残響だけ、みたいな。でも“八月の光”の徳ちゃんのソロは、すごくシームレスにエフェクトを入れながら、気付いたらめっちゃ歪んでて、〈どうやってるんだろう?〉とずっと思ってたんですよね」
――実際“八月の光”のプレイはどうやって生まれたのでしょうか?
細井「バンド全員で一発で録ったんですけど、ホントに思いつきです(笑)。ソロの途中で逆再生をかけて、その隙にオクターヴと歪みを変えて、戻ってきたら音が変わってる、みたいなのをその場で思いついてやりました」
――そこはやはりSMTKをはじめ、即興演奏を重ねてきた細井くんならではと言えそうですね。一方、後半の君島くんのソロはトーンとフレーズ自体が美しいなと。
細井「ギター・ソロをふたつ入れたのは俺の趣味というか、絶対1曲は俺と君島どっちのソロもある曲を作りたくて、勝ち負けではないですけど、これは負けたと思いました」
君島「バンドでせーのでやって、1個目のソロが出てきた時点で、俺は負けたと思ったけどね」
――また褒め合ってる(笑)。なおかつ、その間には石若くんのソロも入っていて、後半に向けての盛り上がりを作っていますね。
細井「構成としては俺の歌があって、ギター・ソロがあって、駿のドラム・ソロがあって、そこに瀬尾さんと君島のソロが入ってくる、みたいな。あそこのドラム・ソロは前半と後半を繋げるめちゃめちゃ重要な役割で、あそこに駿のドラム・ソロがあることで、その後の君島ソロがよりドラマチックになるので、さすがだなと思いました」
君島「“八月の光”の構成はすごくきれいだなって、聴くたびに思います。2人ともソロを取ってるけど、ソロの乗る進行は違うしね。聴き飽きない曲なので、自分でもよく聴いてます」
表現の源には夢があるんだろうな
――“エンガワ”も原型は昔書いた曲ですか?
細井「作ったのは3~4年前で、SMTKでも2回やってるし、他のインスト・バンドでもやってたんですけど、おじいちゃんおばあちゃんが亡くなったことがすごく悲しくて、その時の気持ちを歌詞にしたので、この曲はアレンジも含めておじいちゃんおばあちゃんがプレゼントしてくれた曲だと勝手に思ってます。なので、基本的には田んぼだったり、群馬の情景だったりが描かれていて、駿のドラムも風を感じさせるし、瀬尾さんの生音も木の感じが出てて、そこに何となく夢っぽい佑成のシンセが入って、さらに広がりが出てる。あとは何と言っても、フィーチャリング君島大空ギターですね」
――スティール・ギターみたいなやつですよね?
石若「あれレコーディングしてて超気持ちよかった」
君島「〈ビル・フリゼールでお願いします〉と言われたのをめっちゃ覚えてる(笑)」
細井「〈ビル島さんでお願いします〉って(笑)」
――ビル・フリゼールは共通のルーツな感じがしますよね。
君島「〈うん、オッケー〉って感じでした(笑)」
細井「あれは最高のギター。あとラストのカオスになる部分は、ミックスの段階で最後にちょっと逆再生をつけてて、あそこは僕の願いというか。君島氏とちょっと前に逆再生の意義みたいな話をしたんですよ。俺たちみたいな逆再生好きなやつらは、過去に戻りたいのかなって(笑)」
君島「時間はどうしたって流れて行ってしまうけど、音楽なら逆再生できるっていう、めちゃめちゃエモーショナルが高まった夜があったよね」
細井「あれだ、藤本タツキ先生の『ルックバック』を読んだ日」
君島「そう、『ルックバック』を読んで、Twitterのタイムラインが『ルックバック』だらけになって、嫌だよねって電話していて、それから逆再生の話になったんだよね」
細井「その話をした1週間後くらいにミックスだったので、願いを込めてラストに逆再生をつけたんです」
――いい話ですね。そして、ラストの“呼吸”は3部構成になっています。
細井「最初はひとつながりの曲にしようと思ってたんですけど、この形がカッコいいんじゃねえかっていうのは……君島氏が言ってくれたんだっけ?」
君島「クラシックとかだと、サブスクでひとつの組曲が3つに分かれたりしてて、そういうのがカッコいいんじゃないかなって」
細井「ちなみに、この曲はSMTKの“すって、はいて。”を誰にも分からないようにグチャグチャに改造した曲なんです」
石若「1回、東北沢(OTOOTO)でやったよね? キミも一緒に」
君島「やった。その時はまだ“すって、はいて。”だった」
石若「その日の演奏がめちゃめちゃかっこよくて」
細井「曲の成り立ちとしては、“呼吸:Ⅰ.火の中の水”はキーだけ決めてみんなで即興をして、幕間というか、〈これから違う曲をやります〉っていう感じ。“呼吸:Ⅱ.砂漠のノイズ”がさっき言ってた駿と俺とキミの3人で、東北沢でライブをして、その時も進行表だけ作ってほとんど即興だったんですけど、iPhoneで録音したのを後で聴いたらすごくかっこよくて、その即興演奏を採譜してアレンジとしてレコーディングをしました。で、“呼吸:Ⅲ.心臓”だけちょっと異質というか、コード進行は“砂漠のノイズ”の後半と一緒なんですけど、“砂漠のノイズ”の原型ができた日のライブで僕は基本バッキングだったので、俺もソロが弾きたいと思って、この曲をつけ足した感じです(笑)」
君島「やっぱり徳ちゃんヤバいなと思ったのが、“砂漠のノイズ”の作業を家でしてたときに、〈瀬尾さんのソロに歌詞が乗ってたら面白いよね〉って、僕が思い付きで言ったら、〈俺、歌詞書いてきたよ〉と言われて。ベース・ソロに歌詞を当てて書くって、この人ホントに計り知れないなって(笑)。あと、見た夢を歌詞にしたって言ってた気がする」
細井「歌録り当日の朝に見た夢なんですけど、おじいちゃんおばあちゃんの実家の周りが全部砂漠になって、家が宮殿みたいになってて、そこをおじいちゃんの機械が歩いてるんですよ。で、〈あれは人間に見えるけど機械なんだよ〉って、誰かが言ってて、そうしたらおばあちゃんが後ろから来て〈あんた!〉って、そのおじいちゃんの方に走っていって。それを追いかけて、みんな宮殿の中に入って、おばあちゃんがおじいちゃんを捕まえたら、おじいちゃんがニコッと笑って、そのまま2人がベッドに落ちていく、みたいな夢で。そこから“砂漠のノイズ”と“心臓”の歌詞を書いたんです」
――前にSMTKで取材をさせてもらったときに、“長方形エレベーターとパラシュート”も夢で見た風景を曲にしたと言ってたし、細井くんは夢がインスピレーション源になることが多そうですね。
君島「徳ちゃんと出会ってすぐくらいに、分厚い夢日記をLINEで送ってきて、それからちょくちょく見た夢についてやりとりしてたんですけど、徳ちゃんが送ってくれる夢の描写が緻密過ぎて(笑)。こんな人には出会ったことがなかったので、徳ちゃんの表現の源には夢があるんだろうなっていうのは、前から思ってます」
――ちなみに、EPのタイトルになっている“スカートになって”も夢が関係していたりしますか?
細井「いや、この曲は夢は関係なくて、ただ僕がスカートが好きっていうか、スカートを履きたいなって。君島氏ともよくこういう話をするんですけど、〈ギャルに生まれたかった〉とか、かわいいものへの憧れみたいなのがあるんですよね。そういうジェンダーのこととかって、今まで生きてきた人が勝手に決めた縛り付けで、そういうものから自由になりたい気持ちがあるので、歌詞もそう思って書きました。これをタイトルにして、僕が大好きな漫画家の羽賀翔一先生に本当に素敵な、EPの雰囲気にもばっちり合ったジャケットを書いてもらって、すごく満足です」

――もともとソロ作を作るつもりはなくて、ある意味偶発的に今回の作品が生まれたわけですが、1枚作ってみて、ソロに対する意識に変化はありましたか?
細井「お恥ずかしながら、もう携帯のメモに〈次回作〉というのを作ってます。今回の作品に参加してくれたみんなと〈こういう曲もやりたい〉というのが出てきたし、それにプラスして、〈こんな人を呼んだらもっと面白そう〉という人も何人か思い浮かんで。1枚作らせてもらって、自分が中心になって作る楽しさを知って、創作意欲も湧いたので、次の作品も絶対に作りたいと思っています」
LIVE INFORMATION
「スカートになって」発売記念ライブ
2021年11月26日(金)東京・新宿Marz
詳細後日発表
〈泥砂に金〉プチツアー名古屋京都東京編
(メンバー:細井徳太郎、瀬尾高志、君島大空)
2021年10月20日(水)愛知・名古屋KDハポン
開場/開演:
①13:30/14:00
②17:00/17:30
③18:30/19:00
※各セット入れ替え
料金:各1,900円(税込、1ドリンク代別)
※各回要予約、割引あり(2回で3,500円、3回で4,500円 各税込、2ドリンク代別)
予約メール:kdjapon@gmail.com
※件名に「2021.10.20水予約」、本文に氏名(カタカナフルネーム)、人数(複数名の場合は全員の氏名)、メールアドレス、電話番号、①②③どの回の予約かを明記の上、メールにてご予約お願い致します
2021年10月21日(木)京都・木屋町UrBANGUILD
開場/開演:
①16:30/17:00(短めセット)
②18:00/18:30(長めセット)
※各セット入れ替え
料金:①1,500円、②3,500円(各税込)
予約ページ:http://urbanguild.net/events/
2021年10月23日(土)東京・神保町試聴室
with special guest 荒悠平(ダンス)
開場/開演:
①13:30/14:00
②16:00/16:30
③18:30/19:00
※各セット入れ替え(複数セット割り有・抽選予定)
料金:各3,000円(税込、1ドリンク代込)
予約ページ:http://shicho.org/1event211023/
※名古屋、京都、東京、3公演とも複数セットのご希望が可能です。ご希望の時間帯やセット数を添えてご予約ください