Page 2 / 3 1ページ目から読む

LISA “LALISA”

天野「3曲目は、BLACKPINKのLISAによる待望のソロ・デビュー・シングル“LALISA”。この一週間で最大の話題曲と言っていいでしょうね!」

田中Billboardのインタビューによると、LISAはYGエンターテインメントの研修生になる前、占い師のお告げで自分の本名を出生名の〈Pranpriya Manoban〉から〈Lalisa〉に変更したのだそうです。コーラス部分のリリックでは〈Lalisaと言って/私を愛して〉と、意気揚々と歌っています。ちなみに〈Lalisa〉は〈賞賛を受ける人〉を意味するそうで、それを踏まえると、この曲は彼女なりのスター宣言と言えるのではないかなと」

天野「プロデューサーは、BLACKPINKの楽曲と同様にテディ・パーク(Teddy Park)。期待がめちゃくちゃ高かったぶん、最初、サウンドはちょっと普通かなと思いました。ただ、中盤からタイ・ポップを思わせる音色やフレーズがふんだんに使われていて、ビデオの映像演出を含めて、彼女のルーツであるタイ文化をレペゼンしているんですよね。そこにかなりぐっときました。この心意気は買いたいですね!!」

 

VLURE “Show Me How To Live Again”


田中「UKインディーの注目の新人の登場です。スコットランドはグラスゴーを拠点に活動するヴルアのセカンド・シングル“Show Me How To Live Again”」

天野「この曲は亮太さんが推したものですが、僕は苦手というか、よくわからないというか(笑)。大味なエレクトロニック・ビートにラウドなギター、そしてがなり立てるヴォーカル……。ポップ・ウィル・イート・イットセルフなんかに代表される〈グレボ〉というムーヴメントが80年代末から90年代初頭にありましたけど、グレボはその後、90年代後半にだんだんとヘヴィになっていったわけです。この曲は、その頃の音楽のように聴こえますね」

田中「その印象もわかりますけど、僕はウェスト・ヨークシャーの若手のワーキング・メンズ・クラブをよりEMBに近づけて、そこに90年代のレイヴ・サウンドが持つ混沌としたパワーを注入したような印象を受けました。この曲はもちろん、ひとつ前のシングル“Shattered Faith”しかり、ライブ動画が公開されている“Desire”しかり、〈はちゃめちゃに暴れ(踊り)まくって、停滞した現状をぶち壊そうぜ〉というやけっぱちなエナジーを感じます」

天野バンドによると、“Show Me How To Live Again”はコロナ禍以降の1年半、使用困難になったダンスフロアや喫煙室、地下室へひさしぶりに繰り出すことを歌った曲だそうです。そういったコンセプトのもとで〈再び生きる方法を示してくれ〉と言えるのは、行動制限が撤廃された英国だからこそ、でしょうか。日本でそんなふうに思える日は、いつくることやら……」

 

Tems “Crazy Tings”

天野「5曲目はテムズの“Crazy Things”です。テムズことテミラデ・オペニイ(Temilade Openiyi)はナイジェリア、ラゴスのシンガー・ソングライターで、2020年にデビューEP『For Broken Ears』をリリース。これは素晴らしい作品でした」

田中「その後ウィズキッドの“Essence”(2020年)にフィーチャーされ、この曲が欧米で大ヒットすると、ジャスティン・ビーバーが参加したリミックスも発表されました。それもあって、テムズも自然と注目を集めるようになったわけですね。また、先日リリースされたドレイクの新作『Certified Lover Boy』では“Fountains”というアフロビーツっぽい曲に参加していますね。ナイジェリア国内のみならず、北米やヨーロッパのシーンでも脚光を浴びている存在だと言えるでしょう」

天野「そんなテムズの新曲“Crazy Tings”は、ガーナのギルティビーツ(GuiltyBeatz)がプロデュースした気だるげなアフロビーツです。サウンドはハウス的なビートが強調されていて、ちょっとアマピアノ(Amapiano)っぽいかも。太いベース、ヒプノティックなヴォーカル・サンプルとリズム・ギター、そしてテムズのディープでブルーな歌いっぷりが最高の一曲で、R&Bやヒップホップのシーンでも話題になっていることに彼女の注目度の高さを感じます。そしてテムズはついさっき、ニューEP『If Orange Was A Place』を9月21日(火)にリリースすることを発表しました。すごく楽しみですね」