『Angels & Devils』が内包するムードは、あんなところやこんなところにも……
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『Angels & Devils』の持つ攻撃的な面を助長し、不穏な世界観の構築に一役買っているのが、“Fuck A Bitch”でコラボした同ユニットだ。神経をチクチク刺激するような黎明期のダブステップっぽいビート上で、キワモノ感丸出しのラップが冴える作りは、確実に『No Love Deep Web』の延長線上にある。
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陰のバグ、陽のローンと、紡がれる楽曲のトーンは正反対な印象の両者。しかし、デトロイト・テクノ、シカゴ・ハウス、ビート・ミュージック、ヒップホップなどなど、さまざまな音楽要素をしなやかに、そして軽やかに吸収した本作は、『Angels & Devils』と共通する部分も多い気が。
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テクノ・アニマルの同志で、『Angels & Devils』にも参加しているジャスティン・ブロードリック。ナパーム・デス脱退以降、ゴッドフレッシュを筆頭にエクスペリメンタル+アンビエント+スラッジ・メタルな音で裏街道を突き進む彼の姿が、バグのサウンドメイクに刺激を与えたことは明確だろう。
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当初はチルウェイヴの新潮流を担ったトライ・アングルも、現在はノイズやインダストリアルに主眼が置かれ、バグのテリトリーへ急接近。特に、このSDライカが奏でるアヴァン・ダブステップ、またはエクスペリメンタル・グライムとも呼ぶべき楽曲は、『Angels & Devils』に勝るとも劣らない大胆さだ。
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かつて、本作収録の実験エレポップ“Emergency Room”をリミックスしたバグ。このF&Lはもちろん、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーなど片割れのダニエルが関わる作品には、偏執的なほど妖しさを追求した電子音が散りばめられ、『Angels & Devils』の作りに通じるものあり。
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フロウダンやウォーリアー・クイーンの楽曲も収めたハイパーダブの10周年記念盤。古くからダブやレゲエで実験を行い、既成概念を打ち破ってきたバグだが、その撒かれた種がいままさに開花し、シーンを揺るがそうとしている——カオティックな本コンピを前に、そう考えずにはいられない。