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インタビュー

GADORO『韻贅生活』エモーショナルでテクニカルな韻の世界を突き詰め高らかに告げる第2章の始まり

地元で変わらぬ日常を過ごしながら改めて突き詰めた、エモーショナルでテクニカルな韻の世界――文字通りの『韻贅生活』を送る男がここに第2章の始まりを告げる!

 みずからの原点を再確認した昨年の『1LDK』の発表後も、変わることなく一人、楽曲の制作に向かっていたGADORO。先の見えない時代にあってなお揺るがぬラップへの思いが、彼をまた新たな制作に導いたとも言えるだろう。そして、その歩みがアルバムとしてここに完成を見た。前作から約1年半でリリースにこぎつけたニュー・アルバムのタイトルは〈印税〉ならぬ『韻贅生活』。タイトルさながら、贅沢に韻を盛り込んだ曲作りは、制作を進める過程で本作の大きな要素の一つとなっていったという。

 「最近は言いたい内容メインで曲を作ることが多くなってて、そこまで韻にこだわって曲を作ることがなかったんですけど、“64Bars To Kill”を作ったときに韻をアルバムのテーマにしようって思いついて、そういう曲が多めになっていきましたね」。

 ライムにこだわることで曲作りはおのずといつもとは違うものになったようだが、意外にもそこに特別な苦労はなく、「逆に曲を作りやすかった」とさえ話す。その作業を通じて、彼の音楽の核となる部分がより引き出されたのは本作の何よりの成果だ。かつて“チャレンジャー”でも共演したJ-REXXXとふたたびマイクを交え、ロッキンなサビと共にアルバムの口火を切る“Get The Glory”を引き合いに、今回の曲作りについての話は続く。

 「普段から韻のことをずっと考えて、いい韻を思いついたらそのフレーズを言いたい歌詞にハメ込んでいくっていうパズルみたいなことを今回やったんですけど、〈ダサい韻〉っていうか(笑)、どこにでもあるような言葉で韻を踏むっていうのはすごい意識しましたね。“Get The Glory”でもサビ前に〈太めのバッツやら黒毛の和牛じゃなくマックスバリュで袋麺を買う〉って歌詞があるんですけど、他のラッパーのようにカッコつけるんじゃなくてあくまでも普段のまんま、昔と変わらない自分でいることが俺の武器だし、誰にも負けないところだと思うんでそれを出しました」。

 その“Get The Glory”をはじめ、〈シャンパンよりファンタオレンジをラッパ呑み/ガンジャより焚くのはバルサンのみ〉とサビで歌うGADORO流のセルフボースト曲“G-ism”、サビ前の〈ロレックス時計・豪邸・超セレブのベンツ/俺氷結呑んで酔ってどん兵衛〉とのラインが同じ流れを汲む“Grateful Days”といった楽曲は、ライミングに力を入れた本作の一面を映す、まさにアルバムの武器。ラッパーとしてはもちろん、彼の生活のありようまでもそこにはっきり示されている。

 一方で、韻のこだわりは脇に置き、衒いなく素直に綴られた曲にも、また違う形で彼らしさが溢れている。DJ IRISA名義でトラックも制作するNOBUの哀愁を帯びた歌を道連れに、夫婦揃って小学校から同級生だというライヴDJのmxnistとパートナーに宛てた“月が照らす夜”や、支えてくれた感謝と共に〈いま貴方の幸せの中に僕はいますか?〉と問いかけるラヴソング“Sugar Hope”は、親愛なる人々に届ける手紙のよう。世の女性たちに思いを寄せ〈人類は全て女性から産まれてる〉とエールを送る“ヤマトナデシコ”と併せてまっすぐな心情を届ける。そして、白球を追いかけたかつての〈クソガキ〉の自分と60歳の自分に向けた2ヴァースから、60歳の自分が現在の自分に歌うヴァースへと繋ぐ構成の“俺へ”。はたまた、不遇なかつての姿と現在を結び付けて歌う“貧乏なんて気にする”や、〈ありのままでいれりゃ良い〉と地元での何気ない日々を綴る“平凡な日常”――「凡人以下なりの名言、俺にしか書けない言葉を残したい」とは前作での取材時にもGADOROが口にした言葉だが、身の丈の生活感を切り離すことなく自分ならではの歌詞を形にした姿に、その一言が重なっていく。

 さらには、(タイトルで誤解しそうだが)麺への愛着をラヴソング仕立てで歌った“メンヘラ”や、Under20Hzの原曲に漢 a.k.a. GAMIとCHEHONを迎えて地元に根を張るスタンスを共有した“Hot Town Blues REMIX”のような曲も。〈一つの個性でhip hopと呼べる〉(“Grateful Days”)とのリリックを地で行くべく、GADOROはさまざまに曲を聴かせていく。

 「今回のアルバムは韻がもちろんテーマの一つですけど、韻にこだわってない曲もそれと同じくらい入ってる。新しくなった自分と何も変わってない自分がどっちも入ってる、変わってるけど変わってないアルバムになったし、ここが俺の第2章の始まりだと思ってますね。これからも期待してほしいです」。

 ふたたび“Grateful Days”で歌っていわく〈この街から動かず向かう先は四畳半から武道館〉――その夢を現実のものとするのは情熱と雑草魂だという点においてその本質は何ら変えぬまま、GADOROは自身の新章を1ページずつ書き進めていく。

左から、GADOROの2017年作『四畳半』『花水木』(共にSUNART)、2019年作『SUIGARA』(コロムビア)、2020年作『1LDK』(SUNART)、GADOROが客演したDJ PMXの2020年作『THE ORIGINAL IV』(ユニバーサル)、詩音の2020年作『ALTER EGO』(Village Again)

 

参加ゲストの近作。
左から、J-REXXXの2021年作『2021』(ORNIS MUSIC WORKS)、NOBUのベスト盤『スタートライン』(ユニバーサル)、漢 a.k.a. GAMIの2018年作『ヒップホップ・ドリーム』(鎖GROUP)、CHEHONの2021年作『THE CULMINATION』(ARIOLA JAPAN)

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