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こういう風に人と想い合えるなんて思ってなくて……

──孤独から始まって、自然と連帯が生まれる流れがReiさんらしいなと思いました。

Rei「10代の頃は人間関係で苦しみました。過去のトラウマや、コミュニケーションが苦手なのもあってか、〈本物の友情ってあるの?〉って長らく思っていました。すべての時間が音楽に結びついていないと悪いことをしてるような気持ちになっていたんです。

でも、さくらちゃんと遊んでる時にそういうことから解放された感じがあって。〈別に楽しいことに意味なんてなくて良くない?〉って──実際にそういうやりとりをしたわけじゃないけど、そういう気持ちになれてすごく感動しちゃったんです。私、こういう風に人と想い合えるなんて思ってなくて……(涙ぐむ)」

藤原「うれしい……」

Rei「今回、レコーディングも本当に自分が尊敬していて大切だと思ってるメンバーとご一緒させていただきました。ドラムの(石若)駿くんもベースのハマ(・オカモト)くんもホーンズの方々もずっと昔から音楽仲間で、自分がすごく愛している人たちと音楽を作れる環境に改めて感謝しました」

藤原「私もReiちゃんと話すとすごく新鮮なことがいっぱいあるんです。すごく気負って、〈ちゃんとやらなきゃ〉って思ってきた子なんだろうなって思いますし。こうやって一緒に曲を出すことにはなったけど、自分との関係は〈仕事だから〉なんてことを考えなくて良い仲だから……とは私も思ってる」

Rei「人間関係ってやっぱりすごくしんどいものでもあって、悩んでる人はいっぱいいると思う。だけど一生懸命生きてたら、どこかで自分とバイブスが合う人に突然出会って、〈あ、同じこと思ってた人がいるんだ〉って救われたりする。だから、人間関係において絶望的な気持ちになってる人がいたら、私が代表して〈一生懸命生きてたら、どこかでそういう人に出会えるよ〉って伝えたいなと思います。

でも“Smile!”はそんな重たいことは考えずに、皿洗いでもしながら聴いて欲しい曲でもありますね(笑)」

──(笑)。とても軽やかな曲ですからね。

Rei「はい。本当に軽やかな曲なので、鼻歌しやすいと思います(笑)」

藤原「うん、ほんといい曲。私もデモをもらってから、ずっと家で歌ってた。一瞬で覚えられるようなところも好き。〈you make me smile/夢みたい〉っていう歌詞が、〈語呂も完璧だ。すごい!〉って思ったな。あそこ、好きだな~。笑わせてくれる感じもあるし、私も〈夢みたい〉って感じたし。だから一緒にこの曲を歌えて、ほんと良かったって思います」

Rei「あと、〈笑顔になる〉って〈歯磨きをする〉みたいにみんなが普段していることだと思いがちだけど、普段の生活の中では意外と声を出して笑ってなかったりすると思うんですよ。だから今の世の中においても〈スマイル〉って重要なモチーフかなと思います。今はみんなマスクをしていて口元が見えないし」

藤原「そうだよね」

Rei「曲の最後に私たちの笑い声も入ってるんですよ。レコーディングの最後に〈笑い声を録りたいな〉って、ふざけ合いながら録って。それで一番いい笑いを採用しました」

 

炊飯器にコーン缶をぶっこんで、醤油とバターをドンって入れて(笑)

──ルーツミュージックが原点にありながら、それぞれのやり方でモダンでハイブリッドなサウンドにどんどんアップデートされているところもおふたりの共通点なんじゃないかと思うんです。

藤原「うん、確かに。“Smile!”は原点回帰した作品でもある気がする。私たちが〈一緒にセッションしよう〉ってなるとギターでやることが多いけど、“Smile!”は自分たちの歌が真ん中にいてすごくシンプルでかっこいい曲になりましたね」

Rei「こないだ一緒にご飯を作った時、炊飯器にコーン缶をぶっこんだよね(笑)」

藤原「さらに醤油とバターをドンって入れて(笑)」

Rei「それだけで完璧だったね。この曲もそれに近くて」

藤原「うん。そういう感じ、そういう感じ」

Rei「だから余計な物は入ってません。さくらちゃんが去年出した『SUPERMARKET』にもすごく共感したんですよね。もちろんオーガニックな音楽も好きですが、私はルーツミュージックを焼き直したいわけじゃなくて、やっぱり自分らしいものを作りたいので」

藤原さくらの2020年作『SUPERMARKET』収録曲“Super good”

藤原「スタンスが一緒だよね。Reiちゃんはブルースが好きで、私はカントリーが好きで。でも、その自分の原点である音楽をそのままやりたいわけじゃなくて、お互いにいろんな挑戦をしてきてる」

Rei「そうそう。同じ悩みもあったりするし。ふたりとも英語詞も日本語詞も書くんですけど、そういうことの悩みを共有できる人って他にいなくて。共通項はすごく多いなって思います」

藤原「私もReiちゃんの『HONEY』はめっちゃ聴いたんです。Reiちゃんそのものが曲になってる感じもしたから、聴く度にすっごい幸せな気持ちになりました」

Rei「ありがとう」

藤原「初期からずっとReiちゃんの歌詞を見てきてるけど、どんどん良くなってると思う。毎回最新の曲が一番良いって思うから、私もそうでありたいなっていつも思うよ」

Rei「うれしい。私もさくらちゃんにはすごく色々な感情を持ってる。もちろん普通に愛情もあるけど、ライバル心もあって。さくらちゃんがすごくかっこいい作品をリリースすると、〈あ、負けてらんないな〉って思うし」

藤原「そうなるよね」

Rei「そう。最高のライブをやってるのを観るとすごく元気が出るし、〈私も頑張ろう〉っていう気持ちになる」

藤原さくらの2021年のライブ動画

藤原「うん。私もReiちゃんと一緒にライブをやると、〈めっちゃいい。最高!〉って思うけど、同時に〈悔しいな〉って気持ちにもちゃんとなる。めっちゃ友達で一緒に遊ぶけど、〈頑張ろう〉とも思える存在ってすごく貴重で。境遇も似てるし、歳も近いし、やっぱりすごく刺激を与えてくれる存在ですね」

Reiの2021年のライブ動画