反復が生み出す混沌としたサイケデリアを抜け出して、風通しのいいリラックスした場所へ。NEW HOUSEの新作『Kaleidoscopic Anima』は、根っからのリスナー気質である彼らが古今東西のフォークをはじめとしたポップスを吸い込んで、それをスッと吐き出したような、親密でいて、プリミティヴな感触が魅力的な作品に仕上がっている。
「気持ち的にフラットなものを作ってみたいと思って。これまではジャムって一気にスタジオで録るって感じだったんですけど、今回は一週間に1回僕の家に集まって、ゆっくりお茶とかコーヒーを飲みながら、宅録で〈こんな感じかな?〉って進めていったんです。そういうこともあって、非日常というよりは、もうちょっと生活に密着した、家のなかでも聴けるようなバンド・サウンドっていうのが念頭にありました」(Yuta、ヴォーカル/ギター)。
「リラックスして作ったことによって、〈これを人が聴いたら、どんなふうに思うだろう?〉っていう、客観的な視点でも考えられました。前はスタジオで、〈この場でどうおもしろいことをしよう?〉っていうことに集中してたんですけど、今回はその反動なのか、聴く人が気持ち良いと思えるものが作りたくて」(Punpun、ギター)。
本作の影響源を挙げるとキリがないようだが、なかでもサン・シティ・ガールズのアラン・ビショップが主宰するレーベル、サブライム・フリークエンシーズから出ているワールド・ミュージックのコンピレーション(特に西アフリカのフォーク)、さらにはヴァン・ダイク・パークスやフィル・スペクターの作品は大きいと言う。
「ポップで、インテリジェンスがあって、かつオーガニックみたいなのは、ヴァン・ダイク・パークスの『Song Cycle』の影響が大きいと思います。あと今回自分でミックスもやってるんですけど、フィル・スペクター関連は全部っていうぐらい聴いてるんで、その感じが出てるかなって。ちょっと奥まってて、リズムとかよく聴かないと聴こえないぐらいな感じだから、いまの日本のロックの音とはかけ離れてると思うんですけど、自分の理想の音像はソフトで心地良いフィーリングのものだったんです」(Yuta)。
〈オーガニック〉というのもまさに今作のポイント。〈サン・シティ・ガールズがやりたかった(笑)〉という、2本のエレキ・ギターのフリーキーな掛け合いが楽しい“Your Kaleidoscopic Anima Pt1”をはじめ、メンバーたちが〈そこで演奏している〉という感じが伝わってくるのも、本作の親密なムードの大きな要因となっている。Yutaはさらにこう語る。
「ワールド・ミュージックってすべて共有の意識から生まれてると思ってて、ヒッピーの考えとかも個人的には好きなんですけど、グレイトフル・デッドとかって、サイケデリックでインナーな方向から、オーガニックで開かれた方向に向かったわけじゃないですか? その〈開かれた〉という意味では、前までは夜中に曲を作ることが多かったんですけど、今回は〈昼前に集まって、夕方には解散しよう〉ってやってたんで、それも大きかったかもしれないです(笑)」(Yuta)。
オルタナティヴな資質と共有の精神をもって、さまざまな時代/地域の音楽を2014年の音として着地させるセンス。そこもまた、NEW HOUSEの大きな魅力なのである。
▼NEW HOUSEの作品
左から、2009年のミニ・アルバム『Want Alone But Help Me』、2012年作『Burning Ship Fractal』(共にSECOND ROYAL)
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▼関連作品
左から、サン・シティ・ガールズの2010年作『Funeral Mariachi』(Abduction)、ヴァン・ダイク・パークスの68年作『Song Cycle』(Warner Bros.)
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