忘れ難い表現と記憶の先に待っていた突然の活動休止――ある季節の終わりに残していく最後の挨拶『後日改めて伺います』でアユニ・Dは何を語っているのか?

驚くほど早く過ぎていった

 今年2月13日に日本武道館でのワンマン公演〈生活と記憶〉を行い、夏には〈SENTIMENTAL POOLSIDE TOUR〉を開催するも、その東京公演が行われた9月7日に、12月22日をもってPEDROの無期限活動休止/充電に入ることをいきなり報告したアユニ・D。その12月22日とは自身最大規模の横浜アリーナ公演〈さすらひ〉当日を指すわけで、BiSHでの忙しい活動との両立も区切りを迎えるという状況ながら、現在は休止前ラスト・ツアー〈SAYONARA BABY PLANET TOUR〉で全国を飛び回りつつ、新作リリースを踏まえて人気YouTuber・だいにぐるーぷとコラボした鬼ごっこ企画〈1週間逃亡生活 with PEDRO〉で楽しませるなど、感傷的な書き出しを許さないほどのサービス精神で彼女は最後まで走り抜けるようだ。

 そもそも唐突な発表がよく似合うのは、始まり自体がサプライズだったからかもしれない。もともとは同じBiSHのセントチヒロ・チッチとアイナ・ジ・エンドがソロでのスプリット盤を発表するにあたり、その同日にPEDROがゲリラ的にお目見えしたことを覚えている人も多いだろう。そのデビュー・ミニ・アルバム『zoozoosea』(2018年)ではアユニ・Dがベースを構えて歌うソロ・プロジェクトという状態だったものの、MV撮影や初ライヴでサポートに迎えた田渕ひさ子(ギター)、毛利匠太(ドラムス)とのコンビネーションがPEDROを〈バンド〉へと大きく飛躍させることになった。レーベルを移籍して本格始動を謳った翌年のフル・アルバム『THUMB SUCKER』(2019年)からは田渕もレコーディングに参加し、アユニ自身もベース演奏を担うようになる。独自のツアーも始まり、BiSHとは違う創作やパフォーマンスの場を得たことで彼女が水を得たSKYFISHのように殻を破ったのは明らかだった。

 コロナ禍に見舞われた2020年、4月リリースのEP『衝動人間倶楽部』が緊急事態宣言の直撃を食らうも、アイデア豊かなプロモーションを経て8月にはセカンド・アルバム『浪漫』を完成。ここではメロディーメイクに止まらないデモ制作から独りで行う形で“浪漫”と“へなちょこ”を作曲。その成果を経て辿り着いたのが、決定的なシングル“東京”を引っ提げた先述の日本武道館公演だったわけだ。そう思うと数年間が驚くほど早く過ぎていった感じだが、よく考えると一介のサイド・プロジェクトなら活動休止をわざわざ報告する必要もないわけだ。つまり、あえての区切りを言葉にする必要があるほど、本人にとってもBiSHと同じくらいPEDROが大切な存在になっていたということなのだろう。