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歌やメロディーだけで〈いい〉と思える音楽を目指して

――お2人は普段からそういう情報交換をよくされるんですか?

菊池「いつもはほとんどしないですね(笑)」

甫木元「曲作りになってやり取りするくらいです。好きなものは本当にバラバラだし、特に音楽については僕がいつも教えられています。今回も菊池が1曲ずつ、リファレンスとなるプレイリストを作って、共有してくれました」

菊池「バラバラですけど、方向性は似ていると思うんですよ。すごく雑に言えばチャラいものは好きじゃないし、流行を追いかけることも苦手。でもとっつきやすかったり、間口が広かったりするものが好き。Bialystocksの音楽も甫木元の詞はなかなか抽象度が高いので、サウンドはその分なるべくとっつきやすくしなければと考えています」

――菊池さんが考える〈チャラくはないけど、とっつきやすい音楽〉って、Bialystocksではどのように表現しようとされていますか?

菊池「2021年になってからSpotifyの公式プレイリストをよく聴くようになって、いろんな素晴らしい音楽があることに圧倒されました。プレイリストを聴くことで新しい出会いも増えたんですけど、一方で自分が好きなのはやっぱりさっきあげた1940~1950年代のミュージカル映画で流れているような音楽だということも再認識して。

もっと言えば、歌やメロディーだけで〈いいなぁ〉と思える音楽。だから今回のEPに入っている5曲も、〈アレンジすればすごくよくなりそう〉という観点より、弾き語りのデモの段階でちゃんとグッときた曲を選びました」

――つまりそれは菊池さんの中での普遍性と言い換えられるかもしれないですね。 

菊池「そうかもしれません」

 

何かが過ぎ去ったあとに目を凝らすこと

――確かに最後の“あいもかわらず”なんて、楽器はアコギとシンセのみの素朴なもので歌の強さを感じます。でも後半にかけてロマ音楽のようなアンサンブルが広がっていって、ベイルートなんかを思い起こしました。

甫木元「これは自分が住んでいる部屋でデモを録ったんですけど、その狭いスケール感がちょうどいいんじゃないかとなりました。でも部屋の中に閉じこもっているのではなく、風を入れ替えるイメージでカーテンを開ける音を入れたり、自宅の前で録音した鳥のさえずりを入れたりしています。

自分が作った後半の3曲は、特に曲を書いた時に観ていたもの聴いていたもの、考えていたことが色濃く反映されていると思います」

『Tide Pool』収録曲“あいもかわらず”

――甫木元さんは高知県四万十町にお住まいですよね。普段過ごしている町の環境が、創作のインスピレーションになることはありますか?

甫木元「“あいもかわらず”にも〈ヤマフジ〉、〈ネムノキ〉と部屋の窓から実際に見えている植物の名前が入っていますし、すごくあると思います。

自分の住んでいるところは街灯も少ないので夕方過ぎの日が暮れた時間が本当に暗くて。逆に夜が深まってからの方が月灯りや星が見えることで明るい。“All Too Soon”に出てくる〈黄昏時〉も、そんな不思議な時間を歌っていて、まさしく高知の景色です」

――本作のタイトルを『Tide Pool』としたのも、そんな高知の景色が反映されているのでしょうか?

甫木元「そうですね。波が引いたあとの潮だまりという意味で『Tide Pool』。“光のあと”で歌っていることにも通じますが、何かが過ぎ去ったあとに現在から目を凝らそうとするイメージです。

2017年までは埼玉に住んでいたので、海とは縁遠い人生だったんですが、ここしばらく高知にある漁師町に頻繁に行っていて。波の音が常に聴こえているような場所で生活している人たちにずっと取材をしていたんです。そこから得られたことの蓄積は今の自分のものの考え方に大きく影響していると思います」

『Tide Pool』収録曲“光のあと”

――その取材は昨年、甫木元さんが行った個展〈その次の季節〉のためのものですね。1954年のビキニ環礁での水爆実験にマグロ漁船が遭遇して被曝した〈ビキニ事件〉を取り上げ、高知在住の関係者に取材された作品の展示です。

甫木元「はい。その図録のような書籍(『その次の季節 高知県被曝者の肖像』)もこの1月に出て、今はドキュメンタリーを制作しています」

2021年に開催された甫木元空の個展〈その次の季節〉トレーラー

――取材はどのような影響を及ぼしましたか?

甫木元「ビキニ水爆から70年近く経ちますけど、放射線は目に見えないものだし、完全に終わりが来ることはない。出来事が起こった瞬間ではなく、それが過ぎ去ったあとに今何が残っているか、またこの先はどうなっていくんだろうということをすごく考えていました」

――過去から続く現在を切り取った作品という点で、『Tide Pool』は甫木元さんの映像作家としての取り組みとも通じている部分を感じますし、タイトルに今の考えが見事に表れているなとお話を聞いて思いました。

甫木元「タイトルはギリギリまで悩んだのでよかったです(笑)。前作からの1年を詰め込むというような、区切りを持った作品ではありません。全ての曲で何かの始まりも終わりも描いていないし、物事は常に地続きである中で、2022年1月に誰かの手元に差し出す記録媒体として、現在までの蓄積を出そうとした作品なんだと思います」

 


INFORMATION
〈未来ノ和モノ〉キャンペーン第25弾 Bialystocks

①〈未来ノ和モノ〉コラボポスター掲出
掲出店舗:タワーレコード/TOWERmini全店(全国74店舗)
※TOWERminiもりのみやキューズモール店を除く
掲出期間:2022年1月25日~2022年2月6日(日)

②〈未来ノ和モノ〉フリーペーパーBialystocks特集の配布
配布店舗:タワーレコード/TOWERmini全店(全国74店舗) ※TOWERminiもりのみやキューズモール店を除く
配布開始日:2022年1月25日
※先着でお渡しし、なくなり次第終了
※誌面には〈未来ノ和モノ〉をテーマにしたショートインタビューやディスクガイドを掲載

③〈Mikiki〉ロングインタビューの掲載
タワーレコードが運営するミュージックレビューサイト〈Mikiki〉にBialystocksのロングインタビュー(当記事)を掲載。

④抽選でメンバーの直筆サイン入り〈未来ノ和モノ〉コラボポスターをプレゼント
Bialystocks『Tide Pool』をタワーレコードおよびTOWERmini全店、タワーレコード オンラインでご購入いただいた方に、Bialystocksのメンバーの直筆サイン入り〈未来ノ和モノ〉コラボポスターが抽選で当たる応募抽選付ポストカードを先着で差し上げます。
応募締め切り:2022年2月28日(月)
※PC/スマートフォンからのご応募が必須です
※ご応募にはタワーレコードメンバーズへの登録およびレシート番号の入力が必要です
※応募抽選付ポストカードは、各店でなくなり次第終了になります

〈未来ノ和モノ -JAPANESE FUTURE GROOVE-〉とは
日本国内で活躍し、海外でも注目を集めているアーティストをタワーレコードのバイヤーが厳選してフックアップしていく企画。タワーレコード店頭でのコーナー設置はもちろん、フリーペーパーの発行や撮り下ろしポスターの掲出など、リアル店舗ならではのアプローチを展開中。

■コンセプト

そのサウンドは、機能性を損なわずに時代を超越する。
そのサウンドは、新たな機能性を見出だされ時代を超越する。
20年後、30年後、世界中の音楽ディガーに発見され、興奮し、
語り継がれる日本の音楽。
フロアを揺らす音楽。
決して消費される事のない音楽。
音楽はタイムマシン。
盤は回り、そのサウンドは未来へと繋がって行く。

 

RELEASE INFORMATION

Bialystocks 『Tide Pool』 Bialystocks(2022)

リリース日:2022年1月26日(水)
品番:PCCI-00006
フォーマット:CD
価格:1,650円(税込)

配信リンク:https://lnk.to/TidePool

TRACKLIST
1. Over Now
2. All Too Soon
3. フーテン
4. 光のあと
5. あいもかわらず

■CDショップ購入者先着特典
“光のあと(Acoustic Version)”ダウンロードコード付ポストカード
※旧譜特典:2021年2月17日に発売されたアルバム『ビアリストックス』には“Nevermore (Acoustic Version)”のダウンロードコード付ポストカードが付属
※全国の対象店舗にて2021年1月26日(水)に発売される『Tide Pool』をご購入のお客様に先着で上記オリジナル特典をプレゼント
※各店舗でご用意している特典数量には限りがございますので、お早目のご予約をおすすめいたします
※特典は数に限りがございますので、発売前でも特典プレゼントを終了する可能性がございます
※一部取り扱いの無い店舗やウェブサイトがございます。ご予約・ご購入の際には各店舗の店頭または各サイトの告知で特典の有無をご確認ください

 

LIVE INFORMATION
Bialystocks 1st EP「Tide Pool」Release Live

2022年2月25日(金)東京・新代田 LIVE HOUSE FEVER ※SOLD OUT
開場/開演:19:00/19:30
出演:Bialystocks/Ryu Matsuyama
前売り/当日:3,500円/4,000円(いずれも税込/自由席/ドリンク代別)

 

EVENT INFORMATION
Bialystocks 1st EP「Tide Pool」リリース アコースティックLIVE&ジャケットサイン会

2022年3月2日(水)東京 タワーレコード渋谷店5Fイベントスペース
開場/開演:18:30/19:00
出演:Bialystocks
https://towershibuya.jp/2022/01/21/162458
※サイン会はご購入いただきましたCD『Tide Pool』が対象になります。当日必ずお持ちになってご参加ください
※実施内容は予告なく情勢に応じて変更になる可能性ございます。あらかじめご了承ください

 


PROFILE: Bialystocks
2019年、ボーカル・甫木元空監督作品、青山真治プロデュースの映画「はるねこ」の生演奏上映をきっかけに結成。ソウルフルで伸びやかな歌声で歌われるフォーキーで温かみのあるメロディーと、ジャズをベースに持ちながら自由にジャンルを横断する楽器陣の組み合わせは、普遍的であると同時に先鋭的と評される。2020年、大型フェス(〈METROCK 2020〉)への出演が決定。2021年、ファーストアルバム『ビアリストックス』を発表。収録曲“I Don’t Have a Pen”はNTTドコモが展開する〈Quadratic Playground〉のウェブCMソングに選出されている。2作目の全国流通EPとなる『Tide Pool』には、すでに話題になっている先行シングル“光のあと”“All Too Soon”他全5曲を収録。