Bialystocksが3rdアルバム『Songs for the Cryptids』のリリースにあわせ、自己最大規模のライブハウスツアー〈Songs for the Cryptids Tour〉を開催。2024年11月29日にZepp DiverCity (TOKYO)でファイナルを迎え、7公演を走り切った。同日には過去最大のワンマンライブ〈Bialystocks 単独公演 2025〉を2025年4月25日(金)に東京・国際フォーラム ホールAで、4月29日(火・祝)に大阪・フェスティバルホールでおこなうことも発表、彼らがとんでもなく勢いに乗っていることが感じられる。今回は、終演を迎えたばかりの〈Songs for the Cryptids Tour〉の模様をお届けしよう。 *Mikiki編集部
※本文は11月2日に開催されたKT Zepp Yokohama公演についてのものです。また写真は11月29日に開催されたZepp DiverCity (TOKYO)公演のもので、最後の集合写真のみKT Zepp Yokohama公演のものです
毎回変貌する曲=キャストが演じるBialystocksの公演
Bialystocksのステージは音楽を披露する〈ライブ〉というより、もう一つ広義な意味合いの〈公演〉を観ている感覚になる。セットリストに並ぶ楽曲一つ一つはまるで〈キャスト〉のようだ。公演ごとに選抜された顔ぶれが集まって、主役、新人、大御所、バイプレイヤーと役割、役柄、演出がツアーごとにがらっと変わる。〈あの曲がこんな怪演をするなんて!〉〈あの曲が登場したらもう間もなく大団円〉といった具合に、〈この公演であの曲はどんな風に演じるのか〉こそがBialystocksのライブの醍醐味なのだ。このMikikiでレポートするのも6回目にして、そんな気がしてきた。
もちろん今回のツアーの新人であり主役は、10月にリリースされた3rdアルバム『Songs for the Cryptids』の収録曲に違いない。実際、全曲披露されたのだが、早くも音源との聴き心地がまるで違うことに驚いた。そのこと自体は、先に公開されたアルバムインタビューで菊池剛(キーボード)が「音源が出来た段階で自分の中では一区切りついていて、ライブで演る時は改めて一からアレンジを考えるくらいの感覚の曲もあります」と語っていた通りではある。しかし、改めてこれまでの楽曲も含め、全てアップデートしながら2時間のステージを構成していく、アレンジャーでありもはや舞台演出家ともいえる菊池の職人芸には感服しきりだ。
そんなキャストを増やして臨んだ〈劇団Bialystocks〉、本稿では7都市を回ったツアーの内、11月2日に行われた4本目、KT Zepp Yokohama公演の模様をお届けする。
二段の舞台を駆使し序盤から攻める演奏
3連休の初日、久々の大雨に見舞われ、集まった観客は濡れた衣服を拭いながら開演を待つ。19時、BGMとして流れていたキューバのジャズファンクバンド、イラケレ“Juana 1600”がフェードアウトすると、客電が落ちて、シンセが薄く鳴り響く。『Songs for the Cryptids』の1曲目、“空も飛べない”だ。ミラーボールが回り、会場中に無数の光がしとしとと降り注ぐ様は、まるで悪天候の中、足を運んだ満員の観客に対する労りと感謝のよう。
次第にステージの全貌が見えてきた。中央に菊池と甫木元空(ボーカル/ギター)が並び、その後ろに高い舞台が設置され、サポートミュージシャンたちが一列に並ぶ。下手から朝田拓馬(ギター)、越智俊介(ベース)、小山田和正(ドラムス)、オオノリュータロー(コーラス)、西田修大(ギター)と、ギター2人が両端でせめぎ合うという超攻撃型の配置だ。
序盤からアグレッシブな場面が多く、2曲目の“All Too Soon”から早速菊池が約3分にわたってジャズピアノソロをとる独壇場に。すると4曲目の“コーラ・バナナ・ミュージック”では西田が階段を降り、ステージ前方まで飛び出してギターソロを炸裂させ歓声が沸く。
その一方で、過去のライブではベースを中心としたアウトロのソロが見ものだった“差し色”は幾分あっさりと終わり、次の新曲“Kids”では朝田と西田に加え、甫木元も加わってトリプルギターをしっかり見せる。この硬軟織り交ぜた演奏に、観客の心はどんどん揺さぶられていった。