今回の課題盤

ALLEN TOUSSAINT 『Southern Nights』
Reprise(1975)

 

――リリースされましたね、初のコラボ盤『VXV』!

「リリース日の会話的なことから始める感じですか

※取材日がリリース日でした

――せっかくなんでね。

「えー、リリースしました……」

――ハハハハハハ(笑)。初のコラボ・アルバムということで、奥田民生さんら先輩方から同世代の黒猫チェルシーまで、いろいろなアーティストが参加されていますが、制作の様子はいかがでしたか?

「自分たちだけだったら1週間合宿して録ろう、みたいになりますけど、どなたかと1~2日レコーディングしたら、1週間半空いてまた別の方と……といった感じで、先方の都合にスケジュールを合わせたりするのも初めてだったし、また各々で制作のテンポが違うので、そういった意味でもおもしろかったですね。大変だった、みたいなことはありませんでした」

――RIP SLYMEとの曲はただのコラボじゃないというか、本当の意味でがっちりコラボしてる感じの曲ですよね。

「あれはいちばんがっつりやってますね。逆に民生さんはギターとコーラスだけなど、人によって入ってもらい方が違います」

OKAMOTO’S『VXV』収録RIP SLYMEとのコラボ曲“Wanna?”

――私、あれもぜひ観たいんですよ、初回盤に付いているSHIBUYA AX公演のライヴDVD。

OKAMOTO’S『VXV』初回盤DVDダイジェスト映像

「評判いいですよ、普通のライヴ映像ですけど。カメラ12台入ってるんですよ。お客さんのなかにもハンディー・カメラが2人くらいいて。結構すごいです。なのでぜひクリックしてください」

OKAMOTO’S 『VXV』 ARIOLA JAPAN(2014)

「あと、今年はCDデビュー5周年でして、いまツアーの準備をしているんですよ。ちょうどセットリストを決めたりしていました」

――こんな早い段階で決めるんですね。

「今回はいろいろスペシャルな感じになる予定なので、がっつりやってるんですよ」

――なるほど、楽しみですね! ということで今回ですが……。

「夏だしもっと夏っぽいのにすれば良かったかな~と思ったんですけど……」

――いいですよ、もう9月ですし……(8月中に公開できませんでした……謹んでお詫び申し上げます)。

「あ、そうか。これ聴いたことあります?」

――アラン・トゥーサン『Southern Nights』。このアルバムは聴いて……ないかな……っていうかこの裏ジャケ(笑)。

「それヤバイですよね。なんで、赤バックで切り抜かれてしまったのか」

問題の裏ジャケ

――ハハハハハ(笑)。

「(笑)。iTunesで買ったらこの表ジャケしか見れませんよ。表は言ってもそんなおもしろくもない、パッとしないジャケじゃないですか(笑)」

――でも緻密に描かれてますよ(笑)。

「まあね、でもやっぱり特筆すべきはこの裏ですよ。シャツのボタンを全部開けてね、赤で抜かれてしまったアラン・トゥーサンのこの儚げな表情! これをタワーレコードで買って確かめてもらいたい。マネしようかな、今度のアー写で(笑)」

――ハハハハハ(爆笑)。してして。

「この毛髪の感じもイイんですよ。アフロ具合というか。デカすぎず、小さすぎずっていう」

――散髪したばかりなのか、小ざっぱりした感じがありますね。

「ですよねえ。しかもおもしろいのが、ブックレットを見ると、この写真の元画像まで見れてしまうという(笑)」

――ありがちです、そういうの(笑)。

「最近知り合いのエンジニアのスタジオに入り浸ってるんですけど、近頃その人がレコードを買いはじめたんですよ。何10年かぶりに」

――ほうほう。

「渋谷にHMVの中古レコード屋が出来たじゃないですか。そこでいろいろ買って、そのスタジオで聴こうってことになりまして。レコードは自宅でも聴きますけど、それはあくまで家のモニター・スピーカーで聴いてるだけだから、大きい音でちゃんとした機材で自分の好きなレコードを聴くことなんてそうないじゃないですか。久しぶりにそういう環境で聴いてみたんですけど、やっぱり音が全然違う、CDとは。で、僕この『Southern Nights』のオリジナル盤を持ってるので、それも持って行って聴いたら、とっても良かった」

――どんなふうに違います?

「上も下も(高い音も低い音も)全然出てない部分がCDにはあるんだなと実感しましたね。あと聴いてて疲れない、どんなに大きい音でも」

――なんででしょう?

「なんででしょうね~? やっぱりCDにすると音がコンプされますから」

――圧縮されると。

「この例えが核心を突いた言い方かはわからないですけど、たい焼きなんかといっしょで、たい焼きはあんこを挟んで焼くと具がグッてなるじゃないですか……(笑)」

――具がグッてね(笑)。

「このグーッが絶対に影響していて、CDになる過程で音を圧縮することによって、サウンドがこんなにも表情を変えるのかと。どっちがいいというわけではないと思うんですけど、やっぱりレコードだとより生々しい音が聴けますよね」

――そのままな感じが。

「うん、そのまま感があります。で、このアルバムは何を隠そう、ピアノはアラン・トゥーサンですが、バック・バンドのメンバーがミーターズなんですよ。俺はそれで知って買ったんですが、久々に聴いてみたら1~2曲目が渋すぎで(笑)。カッコイイんですけど、シブっ!て感じ。夏の夕方に聴いたら、すごくテンションが合いました」

※何を隠そう、bounce連載時代の記念すべき第1回はミーターズでした。記事はこちら

『Southern Nights』収録曲“Last Train”

『Southern Nights』収録曲“Worldwide”

「このアルバムを初めて聴いたのは高3くらいだったかな。その時もカッコイイなとは思ったんですけど、あのミーターズを期待して聴くと、ちょっと大人な感じがしてたんですよね。でもいま聴いてみると改めて、やっぱり良い仕上がりだなと思いました。大人の夏を演出できるんじゃないかなと(ニヤリ)」

ミーターズの69年作『The Meters』収録曲“Cissy Strut”

――ハハ(笑)。

「9月と言ってもまだ暑いですからね(笑)」

――ニューオーリンズものって、ミーターズ以外に取り上げましたっけ……bounce連載時代。

「そういえばやってないですね。ドクター・ジョンもやってないですよね。でもまあ僕はそこまで深くニューオーリンズものを聴いてきてないので。あとはなんだろう……ワイルド・マグノリアスあたりかな。でもワイルド・マグノリアスまで行くと何ていうんですか、もう境地だから(笑)」

――どニューオーリンズ(笑)。

「そう、〈ど〉ですよね」

ワイルド・マグノリアスの74年作『The Wild Magnolias』収録曲“Handa Wanda”