2021年よりバンド体制になったcolormal(カラーマル)のボーカル/ギター担当イエナガと、TikTokでブレイクし先日メジャーデビューを果たしたmeiyoの中の人・ワタナベタカシの二人による連載〈今月のイエナベ!〉。友人同士でもある二人が、前月に聴いて良かった音楽を3曲ずつ、〈イエでナベでも食べながら報告しあう〉ように紹介する連載です(たまに編集の酒井が茶々を入れます)。それではお二人、張り切ってどうぞ~!

★colormalイエナガとmeiyoワタナベタカシの〈今月のイエナベ!〉記事一覧

 


①downt “地獄で夢をみる”

イエナガ「既に界隈で話題になっていて、今更かとは思ったのですが……。久しぶりにギターで興奮させられたというか、バンドとしてあまりに完璧で。もっとギターが流暢で小慣れていればミッドウェスト・エモっぽいバンドだと思っていただろうし、リズム隊の体温が高ければ残響レコードの系譜だとスルーしていたかもしれないんですが、どちらでもないこの3人からしか発せられないであろうバランスが本当に素晴らしい。

この“地獄で夢をみる”の中盤から畳み掛けるようなギターのフレーズ、頭にこびりついて離れない大発明だと思います。是非アルバムを通じて聴いて欲しくて、メロのセンスが光る“111511”やストーリー性の高いアルペジオで終始焦燥感のある“Channel 2”、インタールードを含めてストーリーのある音源を締めくくるアンセム“AM4:50”まで名曲揃いです」

ワタナベ「ごく個人的な話ですが、最近ライブハウスに出る機会がめちゃくちゃ減ったので界隈の話題を全く知れていないことにちょっと絶望しちゃった。downtもお恥ずかしながら初めて聴きました。

案外そう簡単に出来ることではない〈その時々の主役を一番立たせる組み立て〉みたいな部分が綺麗になされていたり、イエナガも言っているようにこなれすぎていない(こなれた作品を残そうとしていない?)感じが非常に愛しいです。“111511”好きだった!」

酒井「〈downt、酒井さん好きだと思います〉とイエナガ氏に言われたけど、なんで分かった!? ドライブ中に選曲を任されてかけたら〈酒井君っぽいな~〉と言われたことがあります。なんでみんな分かるんだ?」

 

②ヒャダイン “冬の花火(原曲・熊谷幸子)”

ワタナベ「熊谷幸子さんの曲。ヒャダインさんがカバーしていることをきっかけに知りました。今回はその素晴らしき原曲をご紹介……と思ったのですが、Youtubeを探しても公式がアップしているものが見つけられなかったので今回はそのカバーバージョンのご紹介となります。

ヒャダインさんは熊谷幸子さんの影響を強く受けたとラジオで語っていたようです(Wikipedia情報)。原曲と聴き比べると、どれだけ愛を持って接しているかが分かります。この楽曲を良いと感じるその核となる部分には全く手が加えられておらず、あくまで丁寧に寄り添うように組み立てられた聖歌隊のようなアレンジが泣けてきます」

イエナガ「ヒャダインさんが自ら歌っている曲って、ボイチェン抜きにするとBase Ball Bearとのコラボだった“23時40分”のイメージがあって、その頃はあんまり印象に残らなかったイメージがあって。このカバー聞いて、全部のパートを自身のボーカルでやるスタイルが凄く合ってる人だなって……。普段は楽曲提供や宅録で裏にいる人が、全部自分の声でやるってことにえも言われぬ〈ハンドメイド〉っぽさを感じました。原曲の熊谷幸子さんの方は、ユーミンの“A HAPPY NEW YEAR”と並んで年末に聴きたいソング上位です」

 

③家主 “路地”

イエナガ「開幕3つ目のコードで大胆に裏切られて、地方の町を歩き巡るようなセンチメンタルに満ちた一曲。メンバー全員がソングライターとして優れた人たちなんだろうと思わざるを得ない寄り添い具合の絶妙な楽器、ヨレている訳ではないけれど既定路線を決してなぞらないヒロイックなギター!

Mikikiでも先日インタビューが公開されていたようで、アルバムタイトルの『DOOM』も所謂ナードさやダウナー感を表す言葉として使っていると聞いて納得しました。僕も大学のサークルだけで流行った謎の単語、あったな……〈悪魔的〉〈ガンギマリ〉とか(笑)。隙間のある音像は、しっかりとパーソナルスペースを設けて接されているような心地よさもあり、素晴らしい音源だなと」

ワタナベ「家主は『生活の礎』(超名盤!)をリリースしたときに狂ったように聴いてました。良さと同じくらい、同じミュージシャンとしての悔しさみたいな感情が湧いてくるので『DOOM』はまだ聴いていませんでしたが、やっぱりすごい……。

奇跡的とも思えるほど綺麗で不安定なメロディーとコード、だけど百発百中で素晴らしい曲を出してくれます。もはやリスナーとして好きとかじゃなくて、加入したいとかそういう感情に近いです。ううっ」