オリジナル曲“なにやってもうまくいかない”がTikTok人気急上昇ランキングで1位を獲得するなど、いま大バズり中のアーティスト、meiyo(メイヨー)が、2021年9月26日に同曲でユニバーサルミュージックよりメジャーデビューした。Mikikiでは好評連載〈colormalイエナガとmeiyoワタナベタカシの〈今月のイエナベ!〉〉の執筆も担当する彼が何者なのか、改めて彼の経歴を簡単におさらいしておきたい。

meiyoとは、ワタナベタカシによるソロユニットだ。本人によれば、meiyoにおけるワタナベタカシという立ち位置は、スカートにおける澤部渡と同義らしいが、彼が一般に〈スカート氏〉と呼ばれないのとは違い、本人いわく〈meiyo氏〉〈meiyo君〉と呼ばれることにも違和感はないらしい。名前の由来は〈没有〉という中国語で、〈○○しない〉という意味だそうだ。
ワタナベタカシ個人としては、高校卒業後の2009年にバンド、シガテラにドラム/コーラスとして加入。同バンドの活動中から作詞作曲を行い、2012年にはソロでCD-R『デモ・ファースト』をリリース。2015年のバンド解散後からはソロとして活動を本格化させ、同年、おかもとえみ(現・フレンズ)らが参加したファーストアルバム『日々のこと』をリリースする。
その後も、ライブ会場限定リリースのミニアルバム『I'm Alone』(2015年)やCD-R『デモ・セカンド』(2015年)をリリースしつつ、ソロ活動だけでなく、侍文化、SAM4416、POLLYANNA、HGYM、プールと銃口といったバンド、ユニットにも在籍しながら、楽曲提供やサポートにも力を入れていく。
2018年にはソロでの活動名義をmeiyoに変更し、meiyoとしての初アルバムにしてベスト盤『羊の皮をかぶった山羊』を無料配布CDと配信でリリース。その後、2019年にファーストシングル『madeal』を出して以降は、単曲での配信を続けている。
ここまでのmeiyoは、シンガーソングライター、特に〈歌も歌えるドラマー〉という見られ方が強かったように感じるが、『madeal』の収録曲“いつまであるか”で〈これまでの最高傑作を作った〉と感じた彼は、以降、作風をがらっと変えてしまう。その転機となった楽曲が2020年の“KonichiwaTempraSushiNatto”だ。
海外から見たネオジャパネスクのようなテーマ性と、和風音階をモロに使用した楽曲に、島唄的なこぶしを効かせた独特の歌い回し。都会の孤独が感じられる歌詞に、切なさがこみ上げるコード進行。そして、くるりの〈ドゥルスタンタンスパンパン僕〉(“ワールズエンド・スーパーノヴァ”)に通ずるような擬音の使い方。“KonichiwaTempraSushiNatto”という楽曲は、どこをとっても既存のmeiyo像を覆すものだった。
この曲はZOZOTOWNの元社長である前澤友作氏が募集した〈日本を元気にしそうな歌〉に応募されたことでも話題になったが、続いてリリースされた“ヒルナンデス - Brand New Break Time! -”もテレビ番組「ヒルナンデス」のテーマ曲募集企画に応募されたものとして話題になった。この頃の彼の活動からは〈とにかく有名になりたい〉〈誰か見付けてくれ〉という意思が伝わってくるようだ。
続く“うろちょろ”は、やはり島唄的こぶしやファルセットを巧みに使用した歌唱法と、映像クリエイター・葛飾出身による8ビット風のMVやアートワークがピコピコ音と見事にマッチ。またもや歌詞に擬音を効果的に使いつつ、やはり空虚感とか切ない感情を、〈ウロチョロする〉という言葉に乗せて昇華させた名曲に仕上げている。
この他にも2020年のmeiyoは、〈これまでのmeiyo〉と〈新機軸のmeiyo〉をうまくブレンドしたようなバラード“机上の空論”や、自身が大ファンであるというフワちゃんに捧げた“Japanese Kawaii Ataoka.gif”も発表。筆者は〈まじフワちゃん早くmeiyoのYouTube見ろし〉とずっと思い続けているが、この思いは本人に届いているのだろうか。
2021年に入ってからはTikTokでの活動を開始し、先の“KonichiwaTempraSushiNatto”や“うろちょろ”、“机上の空論”などの音源を使用した動画を投稿していく。その一方で、ゲーム会社・コナミのゲームソフトに数多く仕込まれた裏コマンドを題材にした楽曲“↑↑↓↓←→←→BA”や、バーチャルシンガー鏡音リン・レンをフィーチャーした初のボカロ曲“レインボー!feat.鏡音リン・レン”を発表。meiyoはまだまださまざまな音楽的方向性を模索しているように思えた。
そんな矢先の2021年7月15日、これまで二転三転してきたmeiyo像を踏襲しつつも裏切るような楽曲“なにやってもうまくいかない”がついにTikTokに投下される。楽曲の波形が映し出されたパソコンのモニターに向かって首を振る映像に合わせて歌われるのは、文字通り〈なにやってもうまくいかない〉人間の叫び。それは、高校卒業後から様々な表現方法にトライしつつも、なにやってもうまくいってこなかったワタナベタカシの魂の叫びを表しているようにも思えたものだった。その一方で、その叫びというのは、コロナ禍で行動が制限され、仕事、恋愛、学業、人生、全てがなかなか思うようにいかない全人類の叫びにも共鳴しているようにも思えた。そんな動画のコメント欄には〈縺溘□縺ゅ>縺輔l縺溘>da縺代↑縺ョ縺ォ〉とだけ記されていた(この文字化けを直すと〈ただあいされたいdaけなのに〉となる)。
@meiyo_music 縺溘□縺ゅ>縺輔l縺溘>da縺代↑縺ョ縺ォ ##オリジナル曲 ##音源使ってね ##fyp ##CapCut
♬ なにやってもうまくいかない - meiyo
“なにやってもうまくいかない”は投稿後1時間で再生数が1200に上がり、次第に拡散され始めていく。7月26日にはイラストレイター・アニメイターのトキチアキが同曲にアニメーションを付けて話題に(その後、正式リリースされた同曲のジャケットやMVもトキチアキが担当している)。
なにやってもうまくいかない/meiyo
— トキチアキ(酒) (@IKAIHCIKIHS) July 26, 2021
曲めっちゃカッコよかったから私もアニメーションつけてみた!!!!!!なにやってもうまくいかない君、救われて欲しい!!!!!
ご本家動画元リンクは下記ツイートにありますのでご覧ください🔻 https://t.co/5Kj3BwruaT pic.twitter.com/QNFnYBmnJS
8月2日にはインフルエンサーの、なえなのがこの曲の振り付けを作ったことでミーム化していった(10月7日時点で50万超のイイネ)。
@naenano クセになる曲〜😵💫振付作ってみた🙂 ##なにやってもうまくいかない
♬ なにやってもうまくいかない - meiyo
TikTokの週間楽曲ランキングで16位(8月13日付)、3位(8月21日付)をマークしていた“なにやってもうまくいかない”は、8月23日にはついに人気急上昇ランキング1位に到達。オクト/OctOの振り付け動画も話題になったり、
@octo_uneune ##なにやってもうまくいかない ##meiyo ##オリジナル振付 ##踊ってみた
♬ なにやってもうまくいかない - meiyo
ダンスクルーのローカルカンピオーネが、なえなのの振り付けの続きを作ったり、
@localcampione @naenano ちゃんの振りの続き作ったよん🤷🏻♀️🌈俺たちにもうまくいかないことはたくさんあるけど、うまくいかないからこそ、うまくいったときの嬉しさが尊いよね😉⭐️@meiyo_music ##なにやってもうまくいかない ##meiyo ##ローカルカンピオーネ
♬ オリジナル楽曲 - ローカルカンピオーネ🗾👑
YouTubeやTikTokでバズ経験のある水野あつがカバー動画を上げたりと、
なにやってもうまくいかない - cover pic.twitter.com/OTHPBju8kw
— 水野あつ (@atsu361) September 7, 2021
話題の波は今も途絶えることを知らない。そのすさまじさはmeiyo本人が制作したYouTubeプレイリスト〈#なにやってもうまくいかない みんなの投稿集〉を参照してほしい。〈なにやってもうまくいかな〉かったミュージシャンが、たった1曲で大成功を収めてしまったのであった。
そんなmeiyoが、9月26日に“なにやってもうまくいかない”をユニバーサルミュージックから正式リリースし、メジャーデビューを果たした。同曲のミックスエンジニアを務めたのは、サカナクションやくるり、DAOKOなどの楽曲も手掛ける浦本雅史(青葉台スタジオ)で、ベースはサカナクションの草刈愛美が担当。TikTokの音源とは一味違ったブリブリした草刈ベースが印象的だ。
この正式リリースで初めて同曲のフル尺が解禁になったが、ラストの展開は衝撃的なものに仕上がっているし、このゴチャゴチャと問答を続ける脳内の悪魔のような声と、ダークだけど遊び心溢れるサウンドは、個人的にはこれからのハロウィンシーズンのBGMにもピッタリだと思う。同曲のMVも公開され、すでに再生回数は230万回を突破(10月7日時点)。コメント欄には日本のみならず世界各国からのコメントが押し寄せ、どうやら世界中で話題になっているようだ。
すでにmeiyoは、“なにやっても~”路線を発展させたかのような“モンスター”や、ギターロックに回帰した“バイタルエモーション”、まるでバズった自分自身を歌っているような“クエスチョン”に、やっぱり擬音が気持ちいい“チャイニーズブルー”といった新曲の断片をYouTubeやTikTokに続々投下中。それらの楽曲からは、一度は決定づけられそうだった自身の音楽性を、自分でまたさらに拡大させていってるようにも感じられる。
また、meiyoの作る超キャッチーなサビは確かにTikTok向きだと言えるが、一方で歌詞のストーリー性や曲の展開の仕方なども彼の楽曲の魅力であり、それらは断片ではなく曲全体を聴いてこそ本当の意味で楽しむことができると言えるだろう。こうなってくると、2018年のアルバム『羊の皮をかぶった山羊』や2019年のシングル『madeal』に続く、まとまった作品でのリリースにも期待したいところだが、はたして……?
