2021年よりバンド体制になったcolormal(カラーマル)のボーカル/ギター担当イエナガと、TikTokでブレイクし先日メジャーデビューを果たしたmeiyoの中の人・ワタナベタカシの二人による連載〈今月のイエナベ!〉。友人同士でもある二人が、前月に聴いて良かった音楽を3曲ずつ、〈イエでナベでも食べながら報告しあう〉ように紹介する連載です(たまに編集の酒井が茶々を入れます)。それではお二人、張り切ってどうぞ~!

★colormalイエナガとmeiyoワタナベタカシの〈今月のイエナベ!〉記事一覧

 


Vaundy踊り子

イエナガ「“東京フラッシュ”から体感1年強でフジロック出演などを経て、すっかり国民的アーティストになったVaundy。この曲をラジオで初めて聴いて、節操がないとまで言えそうな振り幅にひっくり返りました。メジャー/インディー問わず〈The Police歌謡〉(“Every Breath You Take”的なアプローチ)はやり尽くされてきたと思っているんですが、それらの成功例だけを吸い込んでいるような執念と努力を感じるというか。

個人的にですが、Vaundyの楽曲を色々聴いても、曲自体に彼の手癖を感じることがほぼないんです。それ程カメレオンな作風の中で何がVaundyたらしめているかというと、圧倒的なボーカルでしかないなと。三浦大知が“球体”(2018年)を出したときに抱いた感想と同じでした。一方で、今のシーン、楽曲に手癖をふんだんに盛り込む藤井風がいたりと、もう入り込む隙間がないんじゃないかって思っちゃいますよね……」

ワタナベ「ひたすらシンプルに、ひたすら繰り返して、最後の最後で猛烈にクリティカルな一言を残す。一聴すると地味だけど、これまで生きてきた、そしてこれから生きていくみんなの大多数はそんなに派手なわけじゃないですからね、きっと。いつまでも残る愛の歌ですね」

 

MAISONdesラリー、ラリー feat. Pii, meiyo

ワタナベ「近頃ありがたいことに色んな曲を作らせていただくような機会が増えまして、またしても自分の作った曲の紹介となってしまうことをお許しくださいませ。現在と未来で同じアパートの同じ部屋に住んでる二人が、〈PING PONG〉という概念で他愛もない会話をする、的なシチュエーションをイメージして作った歌です。歌ってくれたPiiさんと初めて会った時、〈過去の人が作った作品に出てくる未来の女の子〉っぽいなと思って。そこからの着想です」

イエナガ「まず第一に思ったのが、サビのシンセフレーズが“KonichiwaTempraSushiNatto”を思い出させるなってことで(なげータイトルだな!)。

先程Vaundyは曲に手癖が出ないと書いたんですが、meiyoはジャンルごとに手癖を持っていて、それはそれで面白いなと感じる次第です。個人的な聴きどころは、なんといってもqurosawa君の奇天烈なギターソロでしょうと。長らくワタナベくんの楽曲に合わせて弾いてきたからだと思うんですが、これだけゲートのかかった異物感満載の音だけど、レトロフューチャーな楽曲のイメージにこれ以上なくハマっています」

酒井「MAISONdesのことはすでにいろんな方から話を聞いてるんですが、どれも曲のクオリティーが高いし、コンセプトが面白いし、あとアートワークがめっちゃいいよね。自分はこの曲を最初に聴いた時、hideの“POSE”という曲を思い出しました。ピンポン大好き。そして(Twitterで知ってはいたけど)イエナガ氏に言われて改めてクロちゃんのギターソロ、やっぱり不思議だなと思いました。あの方、こういうソロでも絶対いい顔で弾くよね」

 

PEDRO魔法

イエナガ「BiSHのメンバー、アユニ・Dによるバンドプロジェクト。今年いっぱいでの無期限活動休止を前に、全曲を本人が作詞作曲したサードアルバム(『後日改めて伺います』)から。

プロジェクト始動以降、サポートギターに田渕ひさ子(toddle、NUMBER GIRL)を迎えているんですが、サポートプレイヤーの枠を越えて最早バンドとして編曲に食い込んでいるようで。本曲ではドロップDチューニングを掻き鳴らすストーナーやエモに近いギターアプローチで、彼女の所属バンドなどでは知り得なかった魅力に溢れていて嬉しいですよね。

これまでのPEDROの音源は、WACK系列らしいパツパツのマスタリングも特徴の一つだったんですが、今作は少し頼りない外連味の効いた音像になっています。ドラムのシンバルが過剰なほどパン振りがされていたり、相変わらず特徴的な面もあるんですが、それも今作の〈同人音楽的〉な良さに一役買っています。アルバムタイトルからも、いずれやってくる活動再開のタイミングを期待せずにはいられない、名盤だと思います」

ワタナベ「めちゃくちゃ良い歌詞なのねぇ。〈あくびをしているあなたの開いた口に 入れる人差し指 噛まないでね〉。これ凄いでしょ。あなたと私の関係性を的確に描写していて……なんて言葉にするのも野暮に思えてきちゃう。この一節があるかないかで、サウンドの深みまで全く変わってくるもんなぁ、多分」

NiziUChopstick

ワタナベ「今更自分が紹介しなくてもほとんどの人はTVとか街中で聴いたことあると思うけど、もう一生頭から離れないので紹介させてください。

ピアノ練習の定番曲をサンプリングしたトラックが最高。サンプリング元である“Chopsticks”はど頭でファとソ(全音)を同時に鳴らす響きが印象的で、楽しげなんだけどちょっと含みがあるような。初めて聴いた小学生の頃の自分にとっては、ちょっぴり特別な曲だった。

Niziuに通底する明るさと浮遊感とスパイス程度の怪しさのバランス感覚は、その当時の感覚を思い出させてくれるのです。もしかして自分のために作ってくれた?とか思っちゃう奇跡の組み合わせ(なんかめちゃくちゃ自分語りだな)」

イエナガ「こういうシンプルなループピアノが中毒性となって襲いかかってくる構図、TVアニメ『らき☆すた』で、当時ニコニコ動画あたりで大流行りした“らららコッペパン”を思い出しませんか?

Niziuの楽曲で言うと、“Make you happy”のサビで〈うーはぴはぴ〉のコーラスがブラックミュージックの雰囲気を感じさせたり、“Step and a step”ではのっけから浮遊感のある音運びがあったりと、浮遊感のある和音のアプローチが多くてクセになりますよね」

 

MO MOMA Turkey In

イエナガ「LILI LIMITの元メンバーを中心に結成された男女4人組バンド。ギターの土器大洋さん、少し前に紹介したyonigeの音源にも参加していて。その時に挙げた“催眠療法”の中でもサンプラーを駆使した編曲を土器さんが行ったそうで。本曲でもふんだんにボーカルのチョップが盛り込まれていて、センスが凄まじい。多弦ベースの地を這うような低音と、終始クールなミュート・ギターフレーズに七面鳥をじりじり焼いていくような焦燥感があって、めちゃくちゃかっこよくないですか? 個人的に『Prog-Roid』(2011年)をリリースした頃のSchool Food Punishmentを思い出したりもしました」

ワタナベ「スマホのスピーカーでは全然鳴りきらないベースがキモになっているのでイヤホンかヘッドフォンで聴いてほしい一曲。頭グチャグチャがスッキリします。サウナのBGMで聴きたいですね。藁の中の七面鳥のように、ジリジリと(いやなんだこの感想)。

しかしイエナガは本当に色んな音楽を聴くよね。自分は、作る音楽になるべくたくさんの要素を取り入れたいと思って色々聴くようにしているけど、好きで繰り返し聴く音楽の幅は極端に狹いので、どんな脳してるんだろうっていつも思ってるよ」

酒井「『Prog-Roid』大好物だし二人の七面鳥のたとえが気になって興味出ました。すごいなこの曲。そしてローCの音。めっちゃデカいスピーカーで聴きたいです」

 

メレンゲムーンライト

ワタナベ「6/8のリズムがそもそも好きすぎるっていうのはあるんですけど。いやしかし、なんて素晴らしい曲なんでしょう。もう説明いらなくないですか?……という訳にもいかないので、音楽的な側面から語っていこうかなと思うんですけど、いやでもこれ、ひたすらメロディーと歌声と歌詞が極上であるとしか言えないんですよね。

バンドサウンドをストリングスやピアノが彩る、いわゆるオーソドックスなJ-Popの作りなんですが、なんだかとても愛しい魔法がかかっているかのよう」

イエナガ「ワタナベくんがこう、2010年前後の邦ロックの名曲を紹介してくると〈あー〉と安堵してしまう私です。メレンゲって、バンドだけどJ-Popとして良いものを作る、と言う考えをメンバー全員が共有しているところが僕も大好きです。ワタナベくんの声にも共通していると思うんだけど、クボケンジさんの高音で喉がきゅっと締まるような発声に感情移入しちゃいますよね。

6/8拍子って、僕の中ではロードムービーっぽさが出ると思っていて。Salyuの“Tower”(2006年)とか、きのこ帝国の“海と花束”(2013年)あたりが頭にパッと浮かんでくるなあ……。

本筋から逸れちゃいますが、このアルバムの翌年に出ている『ミュージックシーン』に入っている“フィナーレ”って曲が大好きで僕もイエナべに持ち込もうと思ってました!」

 

次回は2022年1月頭に公開予定です! お楽しみに!

 


LIVE INFORMATION

【colormal】自主企画“C”特別編 colormal単独公演“CALL”
2022年2月19日(土)東京・渋谷TOKIOTOKYO
開場/開演:18:30/19:00
予約/当日:3,500円/4,000円(+1ドリンク400円)
★詳細はコチラ