指揮者の曽我大介は独自性に富んだプログラミングのコンサートで高い評価を受ける一方、執筆活動にも熱心。本書は朝日カルチャーセンターの講座をもとにしたもので9つの交響曲を中心にベートーヴェンの生涯や創作の秘密に迫った内容。スコアに隠された工夫から聴き手の音楽認知のポイントまで踏み込んだ解題はきめ細かく、ベートーヴェンを窓口にしてクラシック音楽の本質の一端が浮かび上がる。脳科学者の酒井邦嘉のコラムも興味深い。クラシックファン、ベートーヴェンファンはもちろんだが、アマチュアオーケストラなどで演奏機会のある方には特におすすめの1冊。