――つい先日も、ラランドのサーヤさんが川谷さんや休日課長と結成したバンド、礼賛と対バンしてましたよね。休日課長は以前、アカツカくんも好きなUSインディーのバンド、アヴァ・ルナを聴いているとツイートしていましたけど、普段はそういう音楽の話もしたりするんですか?

「課長は音楽が好きな人なので、この間もブラック・ミディの新譜が出たときにライブ映像をツイートしたりしていたし、最新の、しかもトリッキーなものも好きなんだろうなとは思います。イエスのベーシストのクリス・スクワイアがすごく好きらしくて。一度ウイスキーを飲みながら良い環境でレコードが聴ける、ちょっとオシャレなバーに連れて行っていただいたんですよ。そのときにプログレとか、渋めの音楽の話をしたことがありますね。でも基本的に俺、飲みの場でも音楽の話とかしないんですよね。正直、川谷さんともあんまり音楽の話しないんで、あの方たちがどういう音楽を聴いてらっしゃるのかとか、詳しく知らないんですけど」

――(笑)。川谷さんには飲みに連れて行ってもらうだけじゃなくて、服も沢山もらってるらしいですね。

「今日、コートもスウェットも全部川谷さんにもらったやつしか着てないですから。この取材の前に撮影があったんですけど、六本木で撮影だったら一張羅で来るしかないと思って、川谷さんにもらった服のタグを全部検索して、いちばん高いやつを着て来ました(笑)」

――この記事ではお見せできないのが残念ですね(笑)。新作は録音/ミックス/プロデュースの岡田拓郎くんも含めて、メンバーは前作の『Y』からほとんど変わってないし、タイトルも同じアルファベット一文字の『R』だし、続編的な位置づけだったりするんですか?

「曲名は全部小文字にしてるんですよ。それは最初からずっとやってるんで、アルバムのタイトルは、アルファベットを大文字でドン!っていうのを、シリーズ化させていこうという気持ちはありますね。ジャケットのイラストもずっと同じ人ですし。今回に関しては曲も何もない状態で頼んだら赤いジャケットが返ってきたから、僕も〈アカツカ〉だし、〈Red〉で『R』っていう」

 

Dos Monosはトップクラスに好きな同世代

――Dos Monosが参加した“gadja”では トーキング・ヘッズの“Born Under Punches (The Heat Goes On)”(80年)を引用していますが、これはコンセプトが先にあったんですか?

「そうですね。これはもともと、トーキング・ヘッズの“I Zimbra”(79年)のカバーを一緒にやろうってところから始まってるんで、モロにトーキング・ヘッズですね」

『R』収録曲“gadja feat. Dos Monos”
 

――冒頭のピアノのリフが印象的ですが、これはアカツカくんのアイデア?

「このリフに関しては、特に意識的な引用元とかは無かったですね。でもリトル・クリーチャーズの“house of piano”(2001年)って曲にああいう雰囲気があって、結構近いかもしれないですね」

――South Penguinの歌詞には90年代のJ-Popネタがよく出てきますよね。

「そうですね。懐メロがすごく好きなんですよ、俺。自分の世代で言うと90年代、2000年代のJ-Pop。前作に収録した“air”(2019年)に出てきたCHEMISTRYは、たぶん荘子itが出してきたネタですね。荘子itもめちゃくちゃリファレンスが多いんで。詩的な部分と俗っぽい部分を両方持ち合わせているので、彼のそういうおもしろさがリリックにも出ていて。でもDos Monosのリリックに関しては俺、何も注文してないし……」

――以前、荘子itのパートの歌詞は読んでさえないって言ってましたもんね(笑)。

「歌詞、見てないんで(笑)。何を言ってるかはわかってないんですよね。音としてカッコよければいいだろうってことで(笑)。でも、Dos Monosの没くんと僕は、ここに至るまでの境遇も似ているんですよ。お互い新卒で就職して2、3年働いて、もうちょっと音楽をやりたいと言って仕事を辞めて。同い歳で、家もアクセスしやすい場所にあるんで」

――“gadja”の歌詞に出てくる恩賜公園っていうのは、上野の?

「そうです。これも上野の公園で飲みながら、没くんがグデングデンに酔っぱらって、アメ横で屍のようになりながら這いつくばってた想い出とかを、彼がリリックにしたみたいで。彼はすごい酔っぱらって路上で叫びながら寝転がったりとか、ダメなところがあるんですけど(笑)、そういう人と飲んでると、自分がしっかりしなくちゃいけないという気持ちになるんで、俺の酔いはセーブされるんですよね。そういう相性が良かったのかなと。だからと言って、飲みながら迷惑をかける人が好きなわけではないですけど(笑)。

同世代の音楽をやってる人では、Dos Monosはトップクラスに好きですね。好きなものが似ている部分もあるし、トーキング・ヘッズとかニューウェイブは彼らも好きだと思うんで。大所帯のバンドと、DTMが中心のユニットというアウトプットの方法は違えど、共通する部分はあるし、相性はいいかなと思いますね。単純に荘子itの作るトラックは好きですし」

――彼らの参加している曲と、アカツカくんがひとりで作った曲って、結構モードが違いますよね。

「そうですね。前回はわりとゆったりしたメロウな曲で荘子itにラップしてもらったんですけど、Dos Monosのトラックにはもうちょっと攻撃的だったり、ゴリッとした印象があるので、今回はそっちに寄せて行くというか、よりお互いが活きる形になったのかなと思いますね」