KONCOSラッキーオールドサンSouth Penguinニカホヨシオを迎え、東京・恵比寿baticaで11月21日(月)に開催するMikiki主催のショウケース企画〈Mikiki Pit〉。いよいよ来週に迫った同イヴェントに合わせて、今回はMikiki編集部の凸凹インディー・コンビこと田中亮太&小熊俊哉が〈Mikiki Pit〉のコンセプトや、いまこの4組のライヴを絶対に観てほしい理由を熱く語り合いました!

 


そもそも〈Mikiki Pit〉ってどんなイヴェント?

田中「いよいよ〈Mikiki Pit〉の開催が迫ってきたね」

小熊「たぶん、読者の皆さんは〈Mikiki Pit〉というイヴェント名が気になっていると思うんだ。これは田中くんのアイデアだったよね?」

田中「うん。そもそもイヴェントのコンセプトが、Mikikiがプッシュしている新進気鋭のミュージシャンをショウケース的に紹介するということだったじゃない? 〈pit〉というのは穴やくぼみを意味する単語なんだけど、〈この穴に落ちると新しい音楽に出会えるよ〉みたいなイメージで提案したんだ。それに、〈pit〉という単語の軽くてチャーミングな響きから、小規模なイヴェントだけど実りは大きい、みたいな雰囲気が伝わりやすいかと思って」

小熊「好きな音楽と出会える、カジュアルな居場所ということだよね。良質なインディーの現場にも通じる、そういう雰囲気が伝わったら嬉しいな。そして、このイヴェント・ロゴも〈人がくぼみに落っこちている=新しい音楽を発見する〉というコンセプトをそのまま表現していると。もちろん、〈M〉はMikikiのMで」

田中「そうそう。あと個人的には、いまのインディー・シーンだとパンクを中心としたギター・バンドが特におもしろいと思っていて。だから、この(ロゴの)人がダイヴしているように見えるところも気に入ってるよ」

小熊「なるほどー、モッシュ・ピットの〈pit〉でもあるわけか。僕はてっきり、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの『Fresh』をパロったのかと勘違いしていたよ。音楽好きなら、一度は真似したくなるポーズだしさ」

田中「バカ言ってんじゃないよ(笑)。それにMikikiは、以前からSaToAD.A.N.といった新進バンドをいち早く取り上げたり、レーベルで言えばKiliKiliVillaSECOND ROYALなどインディー・シーンの興味深い動きを熱心に追いかけてきたわけだけど、〈Mikiki Pit〉はそういったサイトの編集方針に即したイヴェントだとも言えると思う」

小熊「記事を通じてミュージシャンたちに興味を抱いてもらったら、次はライヴを観てほしい――この流れがやっぱり理想的だよね。じゃあ、〈フレッシュなアーティストを紹介する〉というイヴェントの基本理念を踏まえたうえで、今回出演するKONCOS、ラッキーオールドサン、South Penguin、ニカホヨシオというラインナップは、田中くんのなかでどのように位置付けられそう?」

田中「KONCOSは前身であるRiddim Saunterの頃から数えると10年以上のキャリアを誇るバンドだし、ラッキーオールドサンも2014年に結成してから何枚もCDを発表している。ただ、どちらも今年リリースした作品が素晴らしくて、ライヴにもその勢いが反映されているからこそ、〈いま観てほしい〉バンドなんだと言っておきたい。その一方で、South Penguinとニカホヨシオは今年初めてのEPをリリースしたばかりで、正真正銘のニューカマーであるわけだけど」

小熊「そのEPとMikikiでのインタヴューを通じて、いまどき珍しいアクの強さ、アウトサイダーの気配を音楽性と人間性の両方で感じたので(笑)。これはもう、チャレンジ枠で出てもらうしかないと。それに、どちらもまだ数える程度しかライヴをやってないんだよね。だからこそ、このタイミングで実力を確かめてみてほしい」

★South Penguinのインタヴューはこちら
★ニカホヨシオのインタヴューはこちら

田中「〈Mikiki Pit〉では、これから話題になるであろうバンドをショウケース的に楽しむことも、実力派のライヴを心ゆくまで堪能することもできそうだよね。それに、4組のどれか1組に引っ掛かったリスナーなら、きっと他の3組にも感じるものがあるはず。そういう意味でも、今回のラインナップは絶妙だと思うんだ」

小熊「そうそう、手前味噌ながらね。じゃあここからは、ライヴの観どころをそれぞれ語っていこうか」

 

KONCOS

田中「KONCOSは本当にライヴがすごいので、まずはこの動画を観てほしい。最新作『Colors & Scale』のリリース・ツアーで今年9月に行われたものなんだけど」

小熊「メチャクチャ熱いね(笑)、フロアも相当盛り上がっているし。というか、『Colors & Scale』って世界中を見渡しても今年屈指のポップ・アルバムだと思ったな。ポップにポップを上塗りしたような、キャッチーな曲が連発されるから驚いちゃったよ」

田中「初期のKONCOSはチェンバー・ポップ的な作品性を追求していたんだけど、ライヴを重ねていくなかで、拭い去ることのできない自分たちの衝動を再認識していったんだよね。それで、ドラマーの(紺野)清志くんが加入して3人編成になってからは、パンク・バンドと見紛うばかりのライヴをするようになったんだ」

小熊ポスト・クラシカルの影響を汲んでいるのかと思えば、インタヴューを読むとこのドラマーの人はパンクやハードコア畑の出身だったりもするんだよね。そういった自由なバランス感覚が、『Colors & Scale』という傑作を生み出したのかなと」

田中「あと、KONCOSはライヴ巧者でもあるんだよね。アウェーに映る対バン企画や、お客さんがまばらな会場でも、彼らのパーティー・ムードにフロアも次第に温度が上昇していき、気が付いたら物凄く盛り上がっている――そういう光景をこれまで何度も観てきたよ」

小熊「47都道府県を回るツアー(〈旅するコンコス~みんなのまちとぼくらのおんがく~〉)や、全国100か所以上でライヴするツアー(〈旅するコンコス~まちといろ 100のいろ~〉)をやっているだけあって、踏んでる場数も段違いだろうし」

田中「それに、若いミュージシャンからも熱狂的な支持を集めていて、KONCOSが大好きという話はよく聞くよ。NOT WONKTHE FULL TEENZといったパンク・バンドに、HomecomingsHelsinki Lambda Clubのようなバンドもそう」

小熊「単にBPMが速いだけではなく、メロディーの強さと確固たるソングライティングの技術、プレイヤーとしての能力が光るから、そうやってリスペクトを集めているんだろうね。それにしても、このライヴはもう……観るっきゃないでしょう(笑)」

 

ラッキーオールドサン

小熊「今回は2人だけでパフォーマンスを披露してくれるんだよね。愛らしい男女デュオというイメージがあるけど、彼らの魅力はどんなところにあると思う?」

田中ナナさんと篠原(良彰)さんは、日常的な言葉を使いながら、良いメロディーと真っ直ぐな演奏で、老若男女が思いを託すことができる日本語ポップスの王道をめざしていて。そこはデビュー当初から一貫しているね」

小熊「バンド名の由来となった“That Lucky Old Sun”も、市井の生活に根差したナンバーだもんね」

田中「そうそう、黒人労働者の日々の喜びや苦しみを歌っていて」

小熊「だから、僕はラッキーオールドサンの音楽を聴くと〈正しいインディーの在り方〉みたいなものを改めて考えるんだよね。Kレーベルにも通じるような佇まいというか。パンクの必要条件とは、音楽的にパンキッシュであることではない。日々の生活を大切に過ごして、それを歌にすることもパンクなんだ……みたいなさ」

田中「すごくよくわかるな。でも実際、彼らがポップスを作る理由というのも、いまの世の中に自分たちがしっくりくるポップスが存在しないから、2人でそれを作ろうと思い至ったからなんだよね。そういうアティテュードは反抗的だし、パンクと言い換えることもできると思う。ちなみに彼らのライヴは、バンド編成だとロック色が強まるんだけど、2人だけでステージに立つと素の魅力がジーンと伝わってきて、これがまた最高なんだ」

小熊「2人の歌心、やさしく素朴なハーモニーが一層際立つというかね。このラッキーオールドサンとKONCOSが一緒に観ることができるのは、リスナー目線に立っても嬉しいね。盛り上がるライヴもあれば、じっくり聴き入るライヴもある。それって、とても贅沢なことだと思うんだ」

  

South Penguin

小熊「(所属レーベルの)Rallyeには、LUCKY TAPESYeYeさんのように、オシャレで洗練されたイメージを抱いているんだけど、その一方でみんな反骨精神があるというのも共通している気がするんだよね。このSouth Penguinも、音を最初に聴いたときはとても爽やかで耳馴染みの良いネオアコギター・ポップだったから、いかにもRallyeらしいなと思ったんだよね。それで資料に〈プロデュース:岡田拓郎〉と書いてあったから、ニヤリとしちゃったんだ(笑)。そしてフロントマンのアカツカくんに(取材で)会ってみて、〈なるほどね〉と思ったわけさ」

田中「ヤバそうだという予感がズバリ当たったってことだよね」

小熊「まあ、嬉しいサプライズなんだけど。あんな音なのに、まさか取材当日にノイバウテンのシャツを着てくるとは思っていなかったから(笑)」

田中「彼らの“Alaska”を聴いて僕が想起したのは、ドゥルッティ・コラムサイケデリック・ファーズといった儚さと浮遊感を持ったUKポスト・パンクのバンドなんだけど、そのインタヴューを読んで、いちばん伝わったのはアカツカさんが藤岡みなみを大好きだと言うことだったな」

小熊「ネオアコという音楽は模倣しやすいサウンドであるがゆえに、単に耳当たりが良いだけだったり、〈趣味の良さ自慢〉をしているだけのフォロワーも多いと思う。そういうなかでSouth Penguinの音楽にフックを感じるのは、アカツカくんの特異な趣味とパーソナリティーに拠るところが大きいんだろうなって。〈フジロック〉で会ったときもスロッビング・グリッスルのTシャツを着ていて、〈いやー、バトルス最高でした!〉とか言ってたし(笑)」

田中「〈ROOKIE A GO-GO〉でのライヴはSouth Penguinにとって2回目のステージだったんだよね。どうだったの?」

小熊「やっぱり曲が良いからメロディアスで良かったよ。深夜の出演だったし、夜風に当たりながら心地良く聴ける感じだったね。そして、〈フジロック〉以降も順調にライヴを重ねているみたいだし、〈Mikiki Pit〉ではさらに進化したパフォーマンスを観ることができると思う」

田中「メンバーはまだ20代前半だよね。その年代のバンドは、ちょっと目を離している間に爆発的な成長を遂げていることがあるから」

小熊「彼らと親交のあるTaiko Super KicksYogee New Wavesといったバンドのリスナーが観てもおもしろいバンドだと思う。あとは当日、アカツカくんが何のシャツを着てくるのかも注目しよう!」

 

ニカホヨシオ

小熊「ニカホヨシオさんのEP『SUR LA TERRE SANS LA LUNE(月のない地上)』はサイケデリックなんだけどドロっとしていなくて、ミツメの)nakayaanさんとの対談でも言われていたように、モンド・ミュージックを思わせるSci-Fiな感覚があるというか」

田中「そこに昨今のR&Bに通じる、粘っこいグルーヴが敷かれているのがとてもユニークだよね。そしてSouth Penginに続いて、このEPも岡田拓郎がミキシング・エンジニアを担当していて」

小熊「だからなのか、おそろしくギターの音が良くて、ヴォーカルのレンジが深い。でも、録音物として完成度が高いからこそ、ライヴで再現するのが難しいんだと思ってたんだけど……」

田中「この間、ニカホさんのライヴに小熊くんと一緒に行ったんだよね」

小熊「そのライヴがまた良くってさ。ビックリしたよね?」

田中「若手の実力派ミュージシャンを揃えたメンバーで、各プレイヤーの個性がすごく際立った演奏だった」

小熊「ドラマーの大井一彌さんはyayhelでも叩いている人で、そちらのライヴを観たときは〈すごい刻み方だなー、まるでマーク・ジュリアナみたい〉と思って衝撃を受けたんだけど、ニカホさんのライヴではまた違ったドラミングをしていて」

田中「チューニング高めのスパーンと抜けの良いドラムがすごく印象的だったよ。90年代にソウルクエリアンズの一員として活動していた頃のクエストラヴの鳴りを思い出したな」

小熊「うんうん、なんでもできる人なんだなって。ベースの齊藤涼太さんにもビックリしたね。まずはあの存在感たっぷりのモミアゲにさ」

田中「ホントに。リンカーン大統領かと思ったよ」

小熊「いやいや、あれはザ・フージョン・エントウィッスルでしょ。ベース・プレイもとにかくうねりまくっていて、そこもザ・フーを彷彿とさせたし」

田中「ニカホさんと同時期にYogee New Wavesをサポートするようになった吉田巧さん(現在は離脱)のジミー・ペイジ的なギター・リフも格好良かったし、ルルルルズ奧野大樹さんのサイケなキーボードも冴えまくっていて、アンサンブルの世界観は確立されていたよね。ほかに類を見ないサイケ・ソウルだなと」

小熊坂本慎太郎D.A.N.が引き合いに出されることも多いけど、良い意味で少し違うんだよね。きっとこの先リリースされるのであろうフル・アルバムは凄いものになるんじゃないかな。ライヴでやっていたEP未収録の新曲も良かったし」

田中「ニカホさんの佇まいはまだダンディーというよりはキュートなんだけど、それも含めて、このタイミングにしか現れないであろうチャームがあるよね」

小熊「この間のライヴでも、ニカホさんは自分の出番が終わったあとに、共演相手の落日飛車(台湾のサイケ・バンド)のライヴをお酒片手にガンガン首を振りながら観ていて(笑)。そういうピュアな音楽好きらしいところも、一昔前のインテリっぽいルックスも全部込みで異端のルーキーというか。本当に最高だなー」

 

ライヴ会場も快適! DJにも注目

小熊「〈Mikiki Pit〉の会場となるbaticaは恵比寿駅から徒歩3分と、渋谷・新宿界隈のライヴハウスのなかでは群を抜いたアクセスの良さも魅力の1つだよね。1Fはバーで2Fはライヴ・スペースと分かれているのも良い」

田中「バーには備え付きのモニターがあるから、お酒を呑んでくつろぎながらライヴも堪能できるし、ずっとフロアに缶詰していなくても良いから、自分のペースでイヴェントを楽しんでもらえるんじゃないかしら」

小熊「あとは音の良さもアピールしておきたい! クラブとしても営業しているからか、すごく柔らかくて深みのある鳴りなんだよね。今回の4組にも合っていると思うよ」

田中「ライヴの転換中はDJが曲をかけるんだよね。僕ら2人のほかに、人気DJイヴェント〈FREE THROW〉のタイラダイスケくんの参加も決定している。タイラくんは新宿MARZの前店長であり、インディー・シーンで多くのバンドやリスナーから信頼を得ている存在。DJとしても50年代のロックンロールから昨今のインディー・パンクまで幅広い引き出しがあるので、当日はどんな音楽をスピンしてくれるか楽しみだね。僕たち2人もナイスな選曲で良い空気を作りたいね!」

小熊「baticaは良い意味で手頃なキャパなので、お客さん同士の交流の場になったら嬉しいな。もちろん、僕らMikiki編集部のスタッフに話しかけてもらうのもウェルカムだし、出演者のみなさんもライヴのあとに感想など伝えてもらえたら嬉しいだろうしね」

田中「ライヴが終わった出演者も、1Fのバーで呑んでいることが多いと思うよ。そういう距離の近さも含めて、インディーならではの良い空気感を伝えていけるイヴェントに発展していけたら良いな」

 

Mikiki Pit
日時/会場:2016年11月21日(月) 東京・恵比寿batica
出演:KONCOS/ラッキーオールドサン/South Penguin/ニカホヨシオ
ラウンジDJ:タイラダイスケ/Mikiki DJs(田中亮太&小熊俊哉)ほか
開場/開演:19:00/19:30 
料金:前売り/1,500円、当日/2,000円(+2 drinks代別)
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